よいよい研究01

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「よいよーい・・・か。」

確かに、俺は男の友達とばっか遊んでるし
みんな中学から仲のいいやつばかり、
ヘタすりゃ生まれた病室が一緒みたいなヤツもいる。

実家に帰りゃ、ルフィとジジイしかいねえし
女友達は少ない・・・

笑ってる女って、笑顔ってあんなにカワイイもんなのかと
アンを見ながらそう思った。

今まで、「好き」とか「付き合って」とか女に言われても
俺はそいつのことよくわかんねえし
特別、そいつに必要とされてるとも感じねえし
大体、俺って何か誰かのために出来る事なんてねえし・・・


でもさ、よいよーいって言うだけで
自分に何の取り柄もなくても、だれかを笑顔にできるんなら
俺もやってみてえなって・・・ちょっと思った。


バイトは休みだけど、おれは毎日モビーには顔を出す。
安時給で働いてんだから、まかないは毎日食べなきゃ損だ!


「サッチ!メシー!!腹減った〜。」
「おまえはホントに毎日毎日・・・少しは遠慮ってモンを・・・」
「いいからいいから!」

毎度小言を言いながらも、サッチは俺用のサイズの皿でメシを出してくれる。


「ぷはぁ!うまかったーごちそうさまでした。」
「おう、皿洗っとけよ。ったく・・。」

店が忙しくなることもほとんどない。
バイト中もだいたいは裏の店のイゾウやサッチとだらだら話をして過ごす。
まあ、こんなんだから安時給も納得だけどな。

「エース、おまえの弟はいつこっちに来るんだ?」
「わかんねえな、高校リタイアしたからコッチ来るとは
言ってたけど・・・まだジジイが説得してるんだと思う。
いきなりくるんだろうけど、来月には来るかな?」
「そっか、ならウチで働かせてもいいぞ?」
「こんなヒマな店にバイトはおれとあの人で十分だろ。」
「ああ、あの人ねえ。」


モビーの入り口に仁王立ちのあの人。
スゲー暗くて、無駄口は一言も聞かない
そんな人がモビーには一人いる。

俺かあの人が店の手伝いをしてれば十分であって
別に口も聞かなくったって問題はねえわけで・・・

「あのさ・・・」

サッチは珍しく俺の耳を引っ張ってコソコソと話はじめた。

「あの子、来月やめちゃうんだ。」
「・・・へえ、なんで?」
「ハッ、知らねえよ。やめるしか言わねえし、聞いても教えてくれねェんだ。」
「変わってんなあー。」

客のいない店内に背を向け、仁王立ちでその人は街行く人々
を睨みつけている。

「っらしゃいませぇ・・・。」

呻きのようなその声で、そう呟き続ける。
これは呪文ではなく、客を呼び込んでいるのだ。

女にしちゃあ背は割と高いし、スタイルも悪くない。
だが、厚縁の厚レンズ眼鏡にあからさまに整えられていない髪
それに笑顔一つ見せない顔に加えて暗い声・・・
それじゃあ客が入ってくるはずもなく・・・

「モカちゃん、もう呼び込みしなくていいから・・・ちょっと休みなよ!」

サッチの声に振り返ると、モカはのそのそと店内に戻って来た。

「はい!コーヒー、ミルクのみ砂糖なし。」
「ありがとうございます。」
「エースのおごりだ、」
「えっ!ちょっ・・・金取るのかよ!ってかなんで俺がこいつにおごらなきゃいけねえんだ!」
「・・・ごちそうさまです。」

俺の顔もサッチの顔も見ることなく、モカはコーヒーちまちまと
飲み続ける。

・・・こないだのアンとは大違いだ。

・・・。



「よいよーい。」
「・・・。」
「よいよい、うまいかよい。」
「え?私ですか?」
「・・・よいよーい。」
「・・・。」


笑わねえな・・・やっぱ、よいよーいなんて効かねえじゃねえか。

「ンで!なんでやめんだ?就職見つかったとか?」
「え?あ・・・いえ、そんなんじゃ…ないんですけど。」
「じゃあ、なんだよ。この店イヤになったとか?サッチに何かされたとか!
それとも・・・」
「・・・ふふっ。」

あ、笑った。

「・・・気になさらないで下さい、エース君。」

そういうと、モカは空になったカップを持って
洗い場へと姿を消した。

よいよーい・・・効いたのか?


その日からというもの、俺はモカと顔を合わせるたびに
よいよいと言ってみた。
まあ、相変わらず笑わねえんだけど・・・でもちょっとずつ会話するようになった。

「よいよーい。」
「・・・。」
「明日さ、シフト変わってくんねえ?レポート終わってねえんだよ・・・。」
「いいですよ。」
「わりいな、つかお前がレポートやってくれればいいんだけどな。」
「・・・学部は?」
「経済!」
「・・・では、専門外です。」
「あっそ・・・そんな眼鏡かけてるから、てっきりガリ勉かと思ったのによ。」
「ごめんなさい、お力になれなくて・・・。」

「ああいや、いいんだよ!気持ちだけで、ありがとな!」
「・・・ふふっ。」

また笑った・・・すげえな、よいよい効果。


やっぱ、笑うとカワイイな・・・女って。


俺はよいよい効果を確信した。

だんだん、よいよーい使いも慣れて来たかな
もっと笑わせてやりてえなあ


でもモカは暗い。
だけどそれ以外のことが分かって来た

歳は25
好きな食べ物はわかめごはん
ベジタリアンで
小さい頃は空手を習ってて
英語とドイツ語ができる

っていう断片的なこと

ちょっとずつ口を開いてくれるようになって
ちょっとずつ心を開いてくれてんだなって



そう思った頃には、あっという間に1ヶ月は過ぎてた





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