( Never see you again )


ハーマイオニーと数年ぶりに言葉を交わしてから数日後、ドラコは風がゆるりと吹くロンドンのカフェテラスにいた。魔法界にいるより、こちらの方が自分を知る人もなく何かと立ち回りやすいからであった。

「(彼女に会えたんだ、またしばらく頑張れるな)」

そう思った彼は口元がふっ、と無意識に緩み、コーヒーに手を伸ばすと目の前の道から子供の声が聞こえてきた。
ここの辺りが、綺麗な景観を観光の要としているからだろうか。この街に滞在し始めてから彼は、しばしば観光に来た小さな子供たちや学生たちを見かけている。

今聞こえている声の主もそんな所だろうと、目を向けると道の反対側に軒を連ねる店を物色している子供たちの姿が見え、その中につい先日存在を知った子供を見つけたのだった。

「...あ、あの子供は、」

ドラコがじっとみつめていたからなのか、その男の子と目が合い、あろうことか少年はドラコに近付いて来た。

「こんにちは!あの、この街の方ですか?街の事について教えて頂きたいのですが、何処かおすすめのスポットはありますか?」

「....え、あぁ」

「写真を撮らせて貰ってもいいですか?」

歩いて来たかと思うと、息子はドラコに矢継ぎ早に質問をしてきた。
母親と同じ、蜂蜜色の瞳に栗色の癖のある髪。そこには少し父親のプラチナも混じっていて改めて自分の子なのだと思い知らされたドラコは涙が滲みそうだった。
一通り質問に答えると、離れた所から友人が息子を呼ぶ声が聞こえてきた。自分の息子と話すのは、おそらくこれきりだろうと思ったドラコは彼を少し呼び止め、瞼の裏にしかと姿を焼き付ける。

「君は、今13歳と言ったね。しっかりした子供に育って母上もさぞ嬉しいだろう。だがね、あまりにしっかりし過ぎていると親としては、少し寂しいものだ。たまには甘えてあげなさい。でも普段は、君の母上を守れるように強くあらねばならないよ。いいね、だれよりも逞しくなるんだ」

ドラコをみつめ、蜂蜜色の瞳の息子は「はい」と頷く。
そして彼の頭に手を置き、ポンポンと撫でる。父として最初で最後の行為だった。


To be continued...









[back]
next