美人さんとおチビくん


「…え?」

梓と翼と別れたウチと宇海は琥太ちゃんセンセという人に会うために学園の保健室に向かった。
ガラッと保健室の扉を開けて中に入ってみて、ウチは目を丸くした。
先生の机と思しき所は、本や書類やらの置き場所になっていた。ちなみにすごい山だった。
保健室はしーんとしていて、どうやら琥太ちゃんセンセという人は留守のようだ。

「もう体育館に行ったのかな?」
「……」

宇海に問いかけるけど返事が返ってこなくて、不思議に思って後ろを振り返った。
すると保健室の奥の方の閉め切られとるカーテンをじーっと見てる宇海がいた。
ウチが声を掛ける前に宇海はスタスタとベッドがある場所に歩いていった。
カーテンを両手で開け放つと、そこには女の人が気持ち良さそうにベッドで眠っていた。

「あ、人がいたんd」
「センセ! 入学式始まるよー!」
「ちょっ、ちょっと宇海!?」

宇海は女の人の耳元で大声を出した。
女の人はうっすらと目を開けたけど、宇海を見たら目を閉じてしまった。
宇海はベッドに身を乗り出すと、ゆさゆさと女の人の体を揺らし始めた。

「…本日の営業、は終了…」
「保健室は二十四時間年中無休でしよー?」
「…何言ってるんだ。それじゃ俺の体が保たない」
「職務怠慢の人が何言っちゃってるの! それよりセンセに紹介したい人がいるの!」
「紹介したい人?」

噛み殺すことなく欠伸をしながらベッドから体を起こした女の人。
寝起きなのにお色気MAXのお姉さんは、宇海より少し後ろにいるウチを見て目を丸くした。

「汐崎、いつから分身出来るようになったんだ」
「センセってば寝ぼけてるのー? ウチの双子のお姉ちゃん!」
「は、初めまして。姉の汐崎天海です」
「保健医の星月琥太郎だ」

ウチはおどおどしながらも、星月先生に自己紹介をした。
女の人なのにコタロウなんて、男の人みたいな名前だなぁ。だけど今時の名前なんてそんなもんだよね?
…あれ? そういえば宇海は保健室の先生は男の人って言ってたよね? 確か琥太ちゃんセンセって呼んでたし。
星月先生の下の名前はコタロウ…琥太郎…琥太ちゃん…

「お、男の人おおお!?」
「…これでも生物学上は男だが?」
「あちゃー、やっぱし勘違いしちゃってたか」

癖のないサラサラの髪。綺麗な翡翠色の瞳。肌は美白で美肌。座っていても分かるスラッとした手足。
こんなに綺麗で美人でお色MAXな人が男って言われても信じらないよ!

「…本当に、男なんですか?」
「残念ながら、男だ」
「…っ」
「お、おい!」
「天海ちゃん!」

女の人だと思ってた人が、ウチの嫌いな男の人だと分かった途端に、目の前が霞んでいった。
ウチを呼ぶ宇海や星月先生の声が聞こえたけど、その前にウチは意識を手放した。





人さんとおビくん
「琥太郎センセっ! もう式が始まるぞー…って汐崎が倒れてるうううう!?」
「直ちゃんそれウチとちゃう!」
「えっ……汐崎が二人!? ドッペルゲンガーだあああああ!」
「…頼むから寝させてくれ」




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