恐る恐る目を開けると、さっきの茶髪の人にアタシは抱きしめられていた。
茶髪の人の肩越しから黒髪の人が、銀色の棒のようなもので虚の攻撃を防いでいるのが見えた。

「沢田綱吉、光理に怪我なんかさせてないよね」
「オレを誰だと思ってるんですか?光理、怪我とかしてない?」
「…平気、です……」

途切れ途切れにそういえば、茶髪の人は優しそうに微笑んだ。
その笑んだ顔に見覚えがあると思ったけど、すぐに激しい頭痛に襲われた。
茶髪の人は表情が一遍して心配そうな顔になり、アタシの頭を優しく撫でてくれた。
こんなこと、前にあったと思うのに、何時何処であったのか思い出せない。
何か思い出そうとする度に、激しい頭痛に襲われるから、途中でストップさせてしまう。

「これは、匣兵器かい?」
「邪魔スンジャネエッ!!」

黒髪の人と虚の会話に頭を上げると、虚は防がれていない反対の爪で、黒髪の人を攻撃しようとした。
アタシを抱きしめたままの茶髪の人の腕から離れて、虚に向かって鬼道を放った。

「縛道の六十一 六杖光牢!」
「「な…っ!?」」
「何ダコレハ!」
「威力が、弱い…!?」

大きな屋敷に落ちる前に放った鬼道も威力が弱かったけど、すぐに茶髪と黒髪の人たちに会って、気にする暇なんてなかった。
頭の片隅でただ単にアタシが加減したんだとばかり思ってたけど、今放った鬼道は一切の加減なんかしなかった。
詠唱破棄なんかしたら威力が落ちるのは当たり前だけど、アタシが詠唱破棄した鬼道がここまで威力が落ちるなんてまずない。
だけど実際に今放った鬼道の威力なら、この虚は数十分もしないうちに鬼道を壊して抜け出すだろう。
…色々と考えたってしょーがない!今は目の前にいる虚が倒すのが先決!

「 君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ 」

詠唱破棄して威力が弱いなら、少し面倒だけど詠唱破棄しないで鬼道を虚に放てば問題はない!
少しよろめきながらもその場に立ち上がって、鬼道で動きを封じられている虚の前に近付いた。

「破道の七十三 蒼蓮双火墜!」
「ギャアアァァアア!」

真っ正面から鬼道を食らった虚は昇華された。
残りの虚は全部で数十体弱。このくらいなら斬魄刀を抜く必要もないかな。
アタシは斬魄刀の代わりに元二番隊の時に使っていた苦無や暗剣を取り出して、次々と残りの虚たちを昇華させていった。
三十分も経たないうちに、アタシは掠り傷一つもなく、虚を退治することが出来た。


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