「被害もそこまで無いし、現世の人間も負傷者は出ても死者までは出てないから……きゃあ!?」 「…耳元で叫ばないでくれる」 「だったらいきなり抱きかかえないで下さい!」 虚退治後の処理をどうしようかと一人でブツブツ言っていたら、黒髪の人の抱きかかえられてしまった。 肩に担ぐとかおんぶならまだしも、今どきお姫様抱っこするなんて、これが叫ばずにいられますか!てゆーか恥ずかしさでいっぱいだよ!! 「ヒバリさん、彼女をどうする気ですか?」 「事情聴取」 「えっ、何で事情聴取!?」 「確かにする必要はあるな。獄寺、お前は先に戻ってみんなを集めろ」 「わっ、分かりました!」 銀髪の人は帽子を被った男の子……いや、それとも人かな?に返事をした後に、茶髪の人に向かって「10代目、失礼しますッ!」と耳が痛くなるほど大きな声を出した後、大きな屋敷の方へ走っていった。 「あの、とにかく降ろしてください!」 「ヒバリさん、降ろす必要はありませんよ」 「君に言われなくても分かってるよ」 「人の話を聞いて!せめて理由を教えてください!」 「…君がオレたちの、大切な人に似てるからだよ」 茶髪の人はとても哀しそうな顔をして言うと、アタシを抱きかかえている黒髪の人の腕の力が強くなった。 反射的に黒髪と帽子を被った人を見ると、二人とも茶髪の人よりかは普通の顔をしていたけど、何処か哀しみを帯びていた。 「大切な、人…?」 命より大切な存在 (もう絶対に手放しはしない) (愛しい歌姫) |