すっかり骨もくっつき、縫った傷もそれほど目立たず全快。平穏な学校生活に戻ってきた。
次の授業は調理実習なので早めに移動しておこうと調理室に向かうと、おにぎりを両手に抱えた女生徒がわんさか出てくる。その中には京子ちゃんもいて誰に渡そうかと盛り上がっているようだ。前の時間は2-Aだったらしい。そわそわしているであろうツナを想像すると、思わず笑みがこぼれた。

そしてもちろん私達も例外ではなく、それぞれで作ってラッピングを施したクッキーを手に乗せて口から出る話題はこの包みの行き先だ。彼氏にあげる子や先生にゴマを擂る子、様々である。私はもちろん、愛する弟にだ。

授業後は昼休み。屋上の扉を開け、食べ終わったら2-Aに行くつもりでクッキーの包みを傍らにお弁当を広げる。すると、例の一件以来雲雀くんに懐いている小鳥がパタパタと飛んできた。あぁ、上で寝てるのか。と見上げると、小鳥は軽快に羽を動かし私の膝の上に乗って校歌を披露してくれた。


「相変わらず可愛いね。おひとつどうぞ」


クッキーを一枚取り出して差し出すと、器用にそれを足で掴んで彼の元へと帰っていってしまった。君にあげたのに……と思いながらクッキーの行く末を心配していると、小鳥に気付いた雲雀くんがむくりと起き上がる。すると驚いたことに、予想に反して小鳥からクッキーを受け取り口に入れたではないか。私が目を丸くしていると、体勢をそのままに視線だけ寄越したと思えば立ち上がってこちらに近付いてくる。
もしかして文句でも言われる?と身構えていたら、彼は何も言わず私の傍らからもう一枚を手に取って屋上からすたすた去っていった。


「……ぷふっ」


まさか追加徴収されるとは!彼の行動に思わず吹き出す。
膝に広げていたお弁当を乱雑に置いて屋上の扉をくぐり、勢いのままに階段を下りている彼に叫んだ。


『黙って持っていくのは良くないと思うよ、恭弥!』

「全然そういう顔には見えないけどね。それとその呼び方、馴れ馴れしいよ。」


こちらを見上げながらそれだけ返し、恭弥の姿は遠くなっていった。
……面白い。恭弥は今まで見てきた人達の中でも特別に強くて分からなくて面白い。まぁ何はともあれ、どうやらクッキーが口に合ったようで何よりだ。


「さ!減っちゃったけどツナに渡しにいこっと!」






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