散々痛めつけられたあと、私達は瓦礫が散乱してる他に何もない部屋に放置された。彼はすぐに起き上がりただただ静かに座りこんでいる。大きな屈辱を受けたことで張りつめている空気の中、私は少しでも回復しようと思い袖を破って止血し、寝転んだまま脱出の機を伺った。
まるで時計の針が止まったかの様に動かなかった私達だったが、しばらくしてそれを崩したのは意外にも雲雀くんの方だった。


「君、いるのかいないのか時々分からなくなる。」

『……?』

「学校でもそうだ。まぁ最近は沢田綱吉と群れてるただの草食動物みたいだけど。」


彼が横目でこちらを見た。何となく言いたい事が分かったので軽く苦笑して応える。私は上半身を起こして少し近寄り、砂埃にまみれてる彼の足元を指でなぞった。しっかり目を合わせて口角を上げる。


『(悪くないよ)』


そう記すと雲雀くんは足元を確認してまたこちらを見るも、すぐに興味なさげな顔でふいっと外方を向いた。そして再び目を閉じて静かに俯いてしまったので、私も先程までと同じように少し離れて寝転ぶ。
そこはかとなくひんやりしてきた部屋。外はきっと、夜更けだ。






「緑……並盛の……がいい……」


いつの間にか眠ってしまったようで、私は聞き慣れたメロディーを耳にしながら徐々に目を覚ます。完全に意識が覚醒し目を開けると、そこには黄色い小鳥が元気よく羽ばたいている。もしかして雲雀くん、私が寝ている間に小鳥に校歌を教えていた?という考えに至ると思わず少しニヤけてしまった。可愛いところもあるもんだ。
ふと耳を澄ませてみると周りがどうやら騒がしい。地響きや爆発音が聞こえてくる。爆発と言ったら銀髪の彼を想像するが、あの子達が来ているのだろうか……。多少まともに動くようになった身体を起こして座り込むと、段々近づいてくる爆発音にピリピリとした空気が漂った。


「ヤラレタ!ヤラレタ!」


大きな物音で小鳥が通気口へと飛んでいき、喋り出したと思えば雲雀くんが教えたであろう校歌を歌い出した。その瞬間、部屋の壁が爆破されて一気に視界が開ける。そこに現れたのは獣の男とメガネの男、そして……


「へへっ……うちのダッセー校歌に愛着もってんのはおめーくらいだぜ……」

「んあ?こいつ……」

「並盛中風紀委員長、雲雀恭弥……。それと神谷葵も一緒だ」

『獄、寺くん……!』

「……元気そうじゃねーか」


まだひどく掠れているものの声も出るようになっていた。満身創痍の獄寺くんが助けてくれたことで、雲雀くんは足元をよろつかせながら立ち上がる。あの怪我でもやる気満々といった目だ。


「自分で出れたけど、まぁいいや。
そこの2匹は僕にくれるの?」

「へへっ……好きにしやがれ」






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