昨夜は晶術の練習に励みすぎて、ふと気付いたら陽が昇り始めていた。急いで街へ戻り家へ向かうと、早起きして花の手入れをしているマリアンに見つかり有難いお小言を頂いた。これはバレてたな。
街の隅にある小さな我が家に帰り、少しだけ仮眠を取った。




「マリアン、朝振り。これいつものお花!カランコエだよ」

「いつも有難うファーストネーム。エミリオの部屋は質素だから助かるわ」


実は、いつもリオンの部屋に飾る花を私が選んでいるのだ。しかしこの事をリオンは知らず、マリアンが飾っている事にしておいて貰っている。理由は簡単な事だ、ただの友人が花を毎回贈っているなんて知ったら気持ち悪いだろう。


「でも本当に言わなくていいの?エミリオ、最近よく花を見るようになったのよ。」

「言っちゃ駄目だよ。言ったらもうマリアンと口きかない」


ふふっ冗談だけどね、と一言告げると、彼女は真剣な顔をしていた。もしや怒らせてしまったのだろうか。少し不安を抱きながら彼女の言葉を待つ。


「ファーストネーム……私は貴女が好きよ。エミリオの事も好き。私はいつでも二人の味方だって事を覚えておいてね。」

「マリ、アン……」


まるで私の気持ちを知っているかのような言葉だった。でもそれじゃあ駄目なんだよマリアン。私が一番に願うのはそれじゃないの。


「凄く嬉しい。本当に。でも何の事か分からないな」

「貴女は隠すのが得意なのか苦手なのか、分からないわね」


そう言って眉を下げて微笑むマリアンを見てごめんね、と呟いた。そろそろ昼食の配膳をする頃だろう。そのまま彼女とお別れをして、警備の任務が始まるまでの時間をいつもの森で晶術の修行をして過ごす事にした。



……私はそんなに態度に出ているだろうか。いやそんな事はないはず、マリアンが鋭すぎるだけだと思いたい。というか花か、花でバレたか。花が好きな私だから違和感はないと思ったのが間違いだった?というか雑念!今は修行中だ、集中しなきゃ。考えるのを止めよう。止めなきゃ。


「……。」


リオンはマリアンの事を大切に想っている。一目瞭然。私はリオンが幸せになってくれればそれで良い。綺麗事に聞こえるかもしれないけどそれが私の一番の願い。邪魔したくないし、私もマリアンの事好きだもの。
だから私はあの二人に迷惑掛けないように隠して隠して、墓まで持っていくの。でもごめんね。完全に胸の奥に隠しきれるまで、夢を見る事は許して下さい。






「(好きだよ、エミリオ)」



貴方は私が守る。






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