「じゃあ次は星奏の部長さんだね〜」
顔を真っ赤にして、ゆでダコ状態になった響也が力尽きて戻ってきたあと、新は笑顔でそう言った。
今回の賭け、負けたのは星奏メンバーのハルを除いた3人だったのだ。
「あぁ、そうだな。それで、俺は何をすればいい?」
響也とは打って変わって、律は抵抗も躊躇いも見せずにそう聞いてきた。
だから律のその言葉に、逆にその場にいた全員がフリーズした。

「…あー、律?お前もうちょっとなんか、その、状況をわかった方がいい気がだな…」
さすがに聞き捨てならなかったのか、ぐったりしていた響也も身体を起こしてもごもごと意見を言う。
けれども返ってきた言葉は律らしいというかなんというか、この場にいる全員の心情を汲まないもので。
「?何を言っているんだ響也、事の重大さはわかっているつもりだが」
この時ばかりはさすがのハルも、部長は小日向先輩がこの12人全員から好かれているんだと気付いているのかどうかと疑った。
全員が律を凝視したまま固まっているわけにもいかないので、慌てて声をあげる。
「まぁ、それはさすが如月ってコトで今は置いておくとしてだな、」
「如月くんやけど、くじの結果は……嗚呼、キス、やね」
比較的復活の早かった神南の二人が話を進めたものの、蓬生の読みあげた結果に再び全員が固まる羽目になった。
ちょっと、誰やねんそんなキスなんて書いたん!
瞳でそう問いただす視線をぐるり全員に向けたものの、皆一様に硬直していて分かるわけもなく。
「キス、か…?響也の結果とはずいぶんな違いだな…」
考えるように、噛みしめて呟かれた言葉。
ふむ、と呟いて考え込んでいた律が顔をあげる。
「小日向にキスすればいいんだろう?場所はもちろん問わないだろうな?」
律の質問を受けて大地がぎこちない笑みを浮かべながら、必死でうなずいて。
わかったと頷き返した律は、足取りも軽やかその場を去って行った。
「……響也先輩」
衝撃から立ち直ったハルがおもむろに響也を呼んで。
「あの、如月部長がお兄さんって…今まで結構苦労してこられたんですね…」
ハルの労いの言葉に、周りの全員が賛同して首を縦に振っていた。


好きだという気持ちには、一応自覚はある。
けれどその好きという気持ちが、幼少期から抱いていたそれとどう異なるのか、まだ律にはいまいち理解できていない。
それは、律のかなでが好きだという気持ちの根底が、当時から変わっていないからで。
守ってやりたい、共に高みを目指したい、と大半はその気持ちなのだった。



「すまないな、小日向。急に呼び出したりして…」
けれど確実に、以前にはなかったことが起きていて。
小日向に近づくと、鼓動の音が煩わしいくらい大きくなる。胸の奥が暖かくなるんだ。
その理由は、"好き"の意味合いが変わったからなのだろうか?
「…その、大会途中からお前に任せっきりで。そのお礼をまだ、していなかったから」
ふわり微笑んで、ちゅっとかわいらしいリップ音を立てて、額に口付けひとつ。
どきんと大きく高鳴った胸に、鈍感な彼が気が付くのは…一体いつになるのやら。




(今更ですが一応12股ED後なイメージ。
律ならこのくらい照れもせずやってくれそうなイメージです。イメージ…)






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