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※姉弟以上です。






「姉上」

夢現の中で聞こえたのは弟の声だった。

「・・・新ちゃん」
「はい」
「新ちゃん?」
「そうですよ」

寝ぼけてるんですか、と柔らかく笑う顔が妙をそっと覗き込んだ。

「どんな夢を見ていたんですか」

目元に触れた指先が濡れている。

「新ちゃん、指が濡れてるわ」
「濡れてるのは姉上ですよ」
「どうして」
「泣いているから」

皮膚を撫でていた指先が、うっすらと開いた妙の唇へと。

「確かめます?」

微かに頷いた妙に目を細め、新八の指がゆっくりと動いていく。
柔らかな唇からそっと割り入る指先。爪先が歯に触れ、優しくその奥へと侵入する。

「ほら、しょっぱいでしょ」

新八の言葉に促されるように、熱い舌がそろりと皮膚にあてられた。撫でるように這う舌先。その舌に新八は爪をたてた。痛くないように、でもどうか、痕になればいいのにと。

「姉上。どうして泣いていたんですか」

視線が交わった。赤くなったは眦は誤魔化しようもなく綺麗で。そこなら口付けていいのかもしれないと、叶わぬ願望を内に沈める。

「夢を見ただけよ」
「どんなって、訊いてもいい?」
「・・・平凡な夢。そんなことありえない、っていう夢」

そう言って、妙はささやかに笑う。
幼い頃、妙が微笑むと新八も嬉しくなった。
でも今はそれだけではない。
人は、幸せな時にだけ笑うのではないと知ったから。
どうにもならない現実を微笑みで隠し、飲み込んでしまう。

「ただの夢よ」

夢見たままでいられたら良かった。
妙の手が新八に触れ、そっと撫でられる。優しい手。これは新八のものだ。今までも、これからも。

「じゃあ忘れて下さい。このままずっと」

このままずっと。
二人を脅かすものなど忘れて。
ずっと二人で。

「おやすみなさい、姉上」

妙が目を閉じた。
そこにまた涙が生まれた。
涙を隠すように閉じられた瞼を、新八は手のひらで覆う。
その手の甲に、決して重なることのない口づけを落とした。


せかいでたった2人きりになれたら

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2015/06/24
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