▼ 沖妙3zで、沖田くんが告白される→沖妙イチャイチャ(いつものパターン)
いつから彼女が特別だったかといえば、もしかしたらそれは最初からだったのかもしれない。
沖田にとって恋愛はただただ面倒なものだった。
男臭さのない爽やかで整った容姿のおかげか、沖田に憧れる女子は多い。
愛想のない態度で接していても、沖田に好意を抱く女子は一定以上存在するのだ。
それもまた沖田が恋愛を面倒に思う要因の一つであった。
いや恋愛ではなく、女が面倒だったのかもしれない。
沖田の本質を見ようともせず、都合の良い妄想に裏付けられた好意を寄せてくる女が。
「あのっ、沖田先輩!」
放課後の静かな廊下。担任から呼び出されていた沖田が、職員室から下駄箱へ向かっていると見知らぬ女生徒から呼び止められた。
「・・・なに」
沖田の冷めた視線がぼんやりと動く。
「あの、話があるんですけど・・・」
上目遣いで様子を伺う女生徒に見覚えがあった。同じ委員会の後輩の横に居た女に似ている気がする。あのとき、ほんの少しだけ妙に似ていると思ったのだ。だから記憶に残っていた。
「沖田先輩、あの、ちょっと話せる所に行きませんか」
「ここでいい」
「あ・・・でも」
「告白?なら無理」
相手が息を飲んだのが分かった。違っていたならただの自意識過剰男だが、どうやら正解らしい。
「分かってます・・・彼女さんがいるんですよね」
一瞬、睫毛を伏せていた女生徒が沖田を見つめる。
「無理だって分かってるので、お付き合いしてもらえなくてもいいんです」
潤んだ瞳が計算くさくて面白い。自分に自信があるのだろう。どうやれば男がなびくか分かっているし、実際そうやって男を虜にしてきたのかもしれない。
「沖田先輩さえ良かったら・・・彼女さんと別れないまま私とも仲良くしてもらえたらなって・・・」
思わず笑ってしまった。
そんなことが出来る男だと思われているなんて予想外だ。
そして、腹が立った。
「それって俺に浮気しろってこと?」
「いえっ、そんな意味じゃないですけど、ただ沖田先輩と仲良くしたいなって思って・・・」
「へえ、仲良くねえ。それで、俺とどこまで仲良くしてくれんのかね」
「それは、先輩次第かなって」
沖田が笑っていることに気を大きくしたのかもしれない。女生徒は慣れ慣れしく沖田の腕に触れる。
しかし、その手はすぐに空を掴んだ。
「くだらねえ女」
見下すような視線が女生徒に注がれる。
腹が立ったのだ。浮気するような男だと思われたことにじゃない。そう思われたということは、相手にそんな意図はなかったにしても、沖田の恋人である志村妙は簡単に彼氏を奪われてしまう程度の女だと、そう軽んじているように感じられたのだ。
「話ってそれだけ?」
「あ・・・」
「じゃあもういいな」
呆然と突っ立っている女生徒を置き去りし玄関へと向かう。これでもう二度と沖田に何かしようとは思わないだろう。
沖田は苛立たしげに髪を掻き上げる。
やはり女は面倒だった。
人気のない静かな下駄箱。夕陽がガラス戸越しに差して、そこに立つ少女の横顔を橙色に染めている。その光景に沖田が一旦足を止めると、少し俯き加減の顔がこちらを向いた。
「沖田くん」
「ごめん志村さん、待ちやしたか」
「そんなに待ってないよ」
微笑む妙の元へと歩み寄る。オレンジ色に染まった笑顔。あの笑顔を初めて見たのは入学式で。飛び抜けて綺麗だった。でも綺麗なだけなら気にならなかった。暖かな空気の中、騒めく雑踏の中、晴れた春の空を見上げていた女の子。遠くを見る横顔から目を逸らせなかった。遠くではなく、自分を見て欲しいと。なぜかそんなことを思ってしまった。
「志村さん。俺のこと好き?」
するりと頬に触れ、すぐに離れる。
「急にどうしたの」
指の腹に残る感触。目を丸くした妙に満足する。その瞳の中に自分が映っているから。
「あんたに好かれなかったら、俺ずっと一人かも」
女なんて面倒なだけだと思ってた。恋愛なんてするつもりもなかったし、恋に落ちるだなんて自分にはありえないと思ってた。なのに。
夕日色の頬が赤く染まった気がした。うっすら開い妙の唇に、そっと顔を近づける。
「志村さんしか好きになれねえみてえだから、責任とってくだせえよ」
結局沖田とて自分のことしか考えてないのだ。先程の女生徒に怒りを向けるなど滑稽に過ぎない。相手の気持ちを自分に向けるために手段を選ばないのは沖田も同じだから。
だが、沖田はきちんと自覚していた。自分はワガママでマイペースで、そして妙に関してだけは面倒な男なのだと。
放課後
2015/04/07
放課後の誰もいない下駄箱ってドキドキしますよねーキャー!!!
沖田くんと志村さんの二人は公認の仲だったりしますが、それでもモテるんじゃないかと。もちろんどちらとも。
沖田くんは志村さんに甘いですが、基本的に恋愛は面倒とか思うタイプかなとか妄想。だから少し辛辣にフッてしまいましたが、モブ子ちゃんがちょっと可哀想だなと書きながら思いました。ごめん、モブ子ちゃん。
実はモブ子ちゃんの設定として、すこーしだけどことなく志村さんに似てるんです。だから沖田くんは存在を覚えていて、告白をされる前も多少は相手をしてたんです。すぐに忘れちゃいますが。しかしそれでモブ子ちゃんは少し勘違いをしてしまった、という設定です。ごめん、モブ子ちゃん。
放課後の下駄箱って青春って感じがして、沖田くんと志村さんにピッタリだなと思いましたへへっ!
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