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▼ グレゴリアス三世再びで土方と山崎と妙

(バイト仲間な3人)







「グレゴリアス三世でーす!新作ジュースいかがですかー」

赤いキャップ姿の山崎が通りを歩く人たちに向けて声を張る。寒さが厳しくなってからの呼び込みは身体に堪える。

「身体ポカポカ、ホッとするホットドリンクいかがですかー!」

秋から売り出しているホットドリンクは売れ行き微妙だ。確かに客はフルーツジュース屋に温かな果物感を求めてはいないだろう。
なのにだ、と山崎は全くさばけないクーポン券を一瞥し溜め息を一つ。普段は調理場担当の土方が、たまーに表に出てくる時がある。すると女性客は頬を染め、土方の勧めるままに商品を購入していくのだ。面白いように売れていくのを見ていると、世の中やっぱ顔だなと逆に晴れ晴れとした気持ちになった。
だが、自分も売らなければならない。

「新作ホットオレンジのお試しクーポンをプレゼント中でーす!いかがですかー!!」
「すみません、ホットオレンジを一つ下さい」
「はいっありがとうございます!・・・あっ」
「うふふ、お疲れ様です」
「志村さん!あれ、今日はどうしたの?」

山崎の前で立ち止まったのは、バイト仲間の志村妙だった。平日も放課後からバイトに入っている山崎とは違い、妙は土日祝日のみ出勤だ。そして今日は平日。

「こっちに用事があって。でももう帰るところよ」
「へえ」

自然と顔がにやけてしまう。可愛い女の子に話しかけられて嬉しく思うのは男して当たり前だろう。それに、今日は特別。

「志村さんの制服姿、貴重だなあ」

話には聞いていたが、実際に妙が通う女子高の制服姿を見るのは初めてだった。

「私服もカワイイけど、制服姿もいいねー。新鮮って感じ」
「・・・山崎くんって口が上手いよね」
「え?」
「女の子にならみんなに言ってるんじゃない?」
「え、ちょっと、そんな俺がタラシみたいに言わないでよ!」

慌てて否定すると、妙がアハハと笑った。わざと言ったのだろう。山崎は参ったなと苦笑いを浮かべる。

「───あ、土方くん。おつかれさま」

妙が山崎の向こう側に声をかけた。誰かが店から出てくる気配。誰かと言ってもお客さんはいなかったから、一人しかいないのだが。

「土方さーん。ホットオレンジ一つ」
「聞こえてたからもう作ってる」

ほら、と妙にカップを手渡す男も山崎と揃いの赤いキャップ姿。山崎と同じ高校でありバイト先まで同じな土方だ。

「ありがとう。土方くんも今日入ってたの?」
「ああ。志村は今日じゃねえだろ」
「うん、近くまで来たから寄ったの。あ、ホットオレンジっていくらだっけ」

妙が財布を取り出そうとすると、山崎が笑顔でチラシを差し出す。

「只今無料お試しクーポンをプレゼント中でーす」
「ほんと?嬉しいな」

にこっと笑った妙は、ふうっとホットオレンジに息を吹きかけて口をつける。随分と可愛らしい動作に山崎の頬が緩んだ。

「あーやっぱ制服っていいなあ」
「顔がだらしねえぞ」
「でも土方さんもそう思ってるでしょ。志村さんの制服姿っていいなって」
「山崎くん。土方くんが困ってるよ」
「いや、別に困ってはねえけど、珍しいなとは思った」
「制服が?」
「ああ・・・そんな感じ」

違うな、と山崎は思う。土方をよく知っているからこそ分かるのだ。

「短いスカートが珍しかったんですよね。オレもそう思ったし」
「山崎」

ぎろりと睨まれたが、妙の前ではあまり怖くないので関係ない。

「意外。土方くんって短めのスカートが好きなの?」
「それ限定だと俺がヘンタイみてえだろうが」
「そっか」

くすくすと妙が笑う。

「でも不思議だね」
「なにが」
「土方くんがミニスカート好きでも、あんまりいやらしい感じしないから」
「あれ、俺は?」
「山崎くんは軽い」
「ひどいな!」

はっきりいってムッツリ度では圧倒的に土方が上なのに、と言いたいがグッとこらえた。さすがにこれを言ったらまずい。

「あ、邪魔してごめんね。私、帰るから」
「うん。あ、カップ捨てとくよ」
「ありがとう。じゃあ、二人共頑張ってね」
「ああ」
「またねー」

二人に手を振って別れを告げた妙は雑踏の中に紛れていった。

「志村さん、やっぱかわいいなー」

山崎の素直な感想だ。初めて見た制服姿もナイスだった。

「ぼんやりしてねえで仕事しろ」
「あ、土方さん。戻るならこれ捨てといてもらえます。こっちゴミ箱なかったもんで」

うっかりしていた。今日はチラシ配りだけだからゴミ箱を持って出てなかったのだ。
土方はカップを一瞥し、受け取る。そんな土方に、山崎が思いついたように言った。

「土方さん。それに間接キスとかしたらすっげえヘンタイくさいですよ」
「しねえよ!!」
「あ、お客さんだ。いらっしゃいませー!グレゴリアス三世へようこそー!ホットオレンジ、今ならお試しクーポン券プレゼント中でーす!!」


アポロチョコ
2015/01/23


去年書いたグレゴリアス三世再びでーす!またまた来ましたよグレゴリアス三世。また行きたいです!というコメントにキュンときたので(笑)
この三人はバイト仲間ですが、基本的に妙ちゃんは土日祝日のみです。山崎と土方くんは平日も出てます。時間帯も妙ちゃんが朝から夕方で、二人は昼(夕方)からラストまで、という無駄に細かい設定もあります(笑)
とにかくこの三人を並べるとアポロチョコみたいというのがピッタリすぎて、もうそのままアポロチョコのような子供っぽい甘いやり取りをイメージしました。
可愛い三人ですよね。
私もまた会いたいです。

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