▼ 去年も書いた冷静執着弟と姉上再び
(新八と妙)
※少し未来の二人
※冷静執着弟と姉上
剣の稽古は好きだ。好きになったと言った方がいいかもしれない。昔はあまり好きではなかったから。
「おつかれさま」
「姉上」
差し出された手拭いを受け取る。
「今日の稽古はもう終わり?」
「そうですね」
「新ちゃん、太刀筋が一段と綺麗になったわね」
「見ていてくれたんですか」
「ええ。邪魔にならないようにあそこから」
にこりと笑った妙が庭を指し示した。あんなところに姉上がいたのに全く気付かなかった。
「それだけ集中してたってことね」
「いえ、どんな時でも周りが見えてないと駄目です」
やはり自分はまだまだだと苦笑いを浮かべる。こんなことでは妙を護れない。
「貸して。拭いてあげる」
首の裏の汗を拭いたくて手を後ろに回していたら、妙がその手に触れた。指先が少しカサついている。掃除をしていたのだろうか。
「・・・大きくなったわね」
懐かしむような声が肌に触れる。
「僕もいつまでも子どもじゃありませんしね」
「そうね。私よりも大きくなっちゃって」
「アハハ。姉上より大きくなれて良かったです」
「次はお嫁さんを見つけないとね」
妙が何気なく口にした台詞に、新八は笑みを消した。
「それ、本気で言ってるんですか?」
汗を拭ってくれている手を掴んで止める。妙が新八を見上げた。
「僕が結婚してもいいって思ってる?」
戯れのつもりだろうか。だとしても酷い冗談だ。
「姉上は僕が誰かと結婚しても平気なんですか」
「大人になるってそういうことじゃないの?」
「違います」
掴む手に力がこもる。そんなこと誰が決めたのだろうか。そんなことをする為に新八は大人になりたかったのではない。
「僕は姉上を護るために大人になりたかった。子どものままじゃ姉上を護れませんから。結婚するためなんかじゃない」
そう言って、新八は妙の手を自分の口元にそっと寄せる。
「僕が護るから、姉上も結婚なんかしなくていいんです」
自分の世界はとても狭いと思う。
だが、それの何が悪い?
生きていくなかで過ごすのは姉だけではないけれど、最期は姉と一緒がいい。
その願いを叶えるために努力するのは悪いことなのだろうか。
「姉上、僕を置いてどこにも行かないで」
口づけた場所が全て鎖になればいいのに。指先から髪の毛まで、鎖で縛り付けられたなら少しは安心できるのかもしれない。
ネバーランド
2015/01/13
→執着弟きたー。個人的に気に入ってる冷静執着弟シリーズ。去年も書きましたが、今年ももちろん推していきますよ!!
新八のイメージは暖かいものが多いのですが、二人をイメージすると「二人きりの世界」と浮かぶんですよね。暖かさとは程遠い(笑)
実際二人は銀さんに出会うまでは二人きりの世界で生きていたと思うんです。
そこに居続けるのと世界を壊すのは、果たしてどちらが幸福なのだろうか。それは多分、二人にしか分からないです。
どちらにしろ志村姉弟が大好きです(*´∀`*)
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