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▼ 沖田と妙と黒色

はい、と羽織らされた黒い服に妙は驚いた。

「沖田さん、これ」
「それ着てたらどうですかィ。ほとんど濡れてねえから冷たくはねえでしょ」

少しだけ湿った髪を掻き上げながら何でもないように沖田は言う。
雨宿りに向かった場所が偶然同じだった二人。すぐにここで雨を避けた沖田はあまり濡れなかったが、離れた場所から駆け込んできた妙はしっかりと雨で濡れていた。

「姐さんに風邪でも引かせたら近藤さんが煩いんでねィ。俺のために着てもらえるとありがてえんですが、無理強いはしやせんぜ」

白いシャツに黒いベスト。いつもとは違う服装に妙は目を瞬かせた。

「それだと沖田さんじゃないみたい」
「それ?」
「黒い隊服以外はあまり見たことはありませんから」

そう言って、妙は肩にかけられた沖田の黒い上着に手を寄せる。

「でも、どちらも似合いますね」
「そりゃあ顔がいいですからねィ。どんなもんも似合っちまいまさァ」
「ふふっ、そうですね」

軽い笑い声に沖田は気を惹かれた。いつも笑顔の印象はあるが、こんなふうに明るく声を上げて笑う姿は見たことはない。あったとしても自分に向けられたことはなかったから、意外だったのかもしれない。

「そうやって笑うと年相応に見えやすね」

確か十八だったはずだ。自分と同じ。

「・・・私って、普段はフケてます?」
「へ?」

拗ねたような台詞に驚いた。そして笑ってしまう。

「ちがうちがう、可愛らしいってことですぜ」
「・・・今度は子ども扱いですね。同い年なのに」

軽く責めるような口調だが、その表情は柔らかい。

「沖田さんだって、そうやって笑ってると年相応に見えるわ」
「俺はいつでも十八くらいに見えるでしょ」
「神楽ちゃんと同級生くらいに見えるかな」
「ひでえな」

降りしきる雨の音と、時折弾む笑い声。少し重い隊服は、妙の身体を優しく包んでいた。


2014/11/21

あんまり親しくない二人って良い。そんな二人が同年代っぽく話してるとキュンとする。

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