雨オレ | ナノ
- にっき! -





2019 0811

銀八と妙「綺麗な髪を」

先生が寝てる、と妙は瞬きをする。
担任が放課後の教室で、机に突っ伏していた。
窓際の後ろから二番目。

「先生?」

一応声をかけてみたが、起きる気配はない。
カーテンが揺れる。窓が開いているのだ。
戸締まりの途中だったのだろうか。
妙はなるべく静かに歩き、窓に寄った。からからと閉めていく音で目を覚ますかと思ったが、担任が起きる気配はない。

「銀八先生。起きてますか」

妙の声が一瞬響いて、すうっと消えた。
少し待って、妙はその机に向かう。
いつもは少し上にある頭が見える。変わった髪の色は染めたものではないらしい。

「先生の髪、綺麗ですね」

夕日色も良いが、普段の色も綺麗だと思っていた。触ってみたいとも。単純な興味。好奇心。それ以上の意味はない。

「今も、すごく綺麗。・・・触ってみたいです」

気安く触れられる関係ではないし、実行に移そうと思ったこともない。立場が違うのだ。その事実は覆らない。
しかしやはり、綺麗だと思ってしまうのは仕方がない。動かない担任を眺めていたが、起きる気配はない。
ちらりと銀八を見やり、妙は少し笑った。
起こした方がいいのだろうが、この静かな空間にその気持ちが萎んでいく。

「もう少しだけ、寝させてあげますね」

銀八の隣の席に腰かけ、同じように突っ伏す。
視界を塞いでも、あの柔らかそうな髪がちらついて離れない。
もしも本当に寝てしまっても、担任が起こしてくれるだろう。
(あ、先生が寝てるの、私の席だ)
そう思ったのが最後だった。
静寂。
空気すら動かない。

「────あの状況で寝るか普通」

むくりと起き上がる白。

「なんかちょっと焦った俺がバカみてーだわ」

思わずこぼれた言葉が静かな教室に吸い込まれていく。
ひとつため息をつき、銀八は教え子の頭に手を伸ばした。

********

寝てると思ってたら寝てなくてイチャイチャ、みたいなのを書くつもりがなんだろこれ(笑)

銀八じゃないけど、あの状況で寝る!?チューしたり告ったり触ったりすんじゃないの?寝るの!?
でも書いてたら志村さん寝ちゃったんですよー。仕方ないっす。





2019 0603

ホストの金さんと妙「嘘」

「恋人ができました」
「は? うっそマジで?」

その瞬間は、いつも眠そうな目が僅かに見開かれた。
しかしそれも長くは続かない。

「あーマジか。やられたわー」

と言いつつも、表情は普段のものに戻っている。
派手なシャツを着たホストは、いつだって妙に本心を見せないのだから。

「つーか相手誰? 同じガッコのやつだろ」
「どうしてそう思うんですか」
「そこしかねーじゃん」
「だからどうして」
「お妙ちゃんそこしか出会いねーし。バイトも女ばっかだし。まあ、だから油断してたっつーか」
「私のこと、色々ご存知ですね」
「知ってたら邪魔してるっつーの。あーあ。マジかよ。夢じゃねえの、これ」

慣れた手つきでペットボトルをあおる姿は完全に酒飲みだ。
中身は甘いイチゴミルクだとは思えない。
本当にショックを受けているとも、妙は思えない。

「あまり変わらないですね」
「泣きわめいたら別れてくれんの? ならやろうかね」
「泣くんですか」
「泣く泣く」

本当か嘘か。表情からは分からない。
経験豊富なホストがなにを考えているかなんて、女子高生に分かるわけがない。
でもなんとなく。あの一瞬見開かれた目は、嘘じゃないと思えた。

「恋人はできてないです」
「はあ?」
「すみません。嘘吐きました。反省してます。お詫びにジュース奢ります」

一息に言って、妙はベンチから立ち上がる。

「嘘吐いたってあれ嘘かよ」
「ごめんなさい、嘘です。あ、バイトがあるのでもう行きますね」
「つーか普通この状況で帰るか? 色々放り出しすぎじゃね。あ、ジュース奢るとか言ってたよな」
「ジュースはまた逢ったときに。じゃあ、さようなら」
「あ、マジで帰んの? なあまた逢うっつーならさ、もうそれデートじゃね」
「眠気覚ましのカフェイン強めを奢りますね」


********

ホストの金さんはチャラい金髪のイメージなんです。ずっと。
でも本編のホスト話を読み返したら、ギンさんなんですよね。銀髪の。
で、私のこの金髪ホストの金さんイメージはなんだろうと思ってたら、ちゃんとありました。なんかオマケ?であったみたいで。
良かった…勝手に自分でつくってしまってるのかと思った…!




2019 0526

山崎と妙「怒る理由」

「もう少し、自分の身を護る努力をしたらどーですか」

山崎の呆れた声が妙を責める。いや、責めていないのかもしれないがそう思ってしまうのだ。

「あの、私知らなくて」
「それがダメでしょ」

嘘ではない。本当に妙は知らなかったから。知っていたらこんな場所など来なかった。

「頼まれたんです。帰り道だからついでに渡してくれって言われて」
「常連客ですか」
「いえ・・・初めて来られた方です」
「はあ。そんなヤツ信用するかな」

静かな室内に舌打ちが鳴る。山崎は苛立ちを隠さない。普段とは違う姿。潜入捜査中だから当たり前だが、態度も妙に向ける眼差しも違う。

「俺は怒ってます。なんで怒っているか、姐さんが分かっていないことに怒ってます」

妙の震える肩に手を置いた。こんなにも頼りないのに、頼ろうとしてくれない華奢な肩。

「俺の任務が失敗しそうだったから怒ってると思ってるでしょ」
「・・・迷惑をかけてしまって本当にすみません」
「だからさー、違うって」

はあ、と大きく息を吐く。
その拍子に縮こまった肩をぽんと叩いた。

「頼ってほしかった。助けてって言ってほしかった。俺が気付いて動くまえに、俺を呼んでほしかった」

あの場所で妙の姿を見つけたとき、心臓が止まるかと思った。

「それに姐さんを助けないでそのまま任務遂行してたら、俺が局長たちに斬られてますよ」

確かに任務を全うすることは組織の一員として当然かもしれない。しかし妙を犠牲にしなければ任務を成せないのなら失敗も同然だと、あの上司たちなら言うはずだ。

「姐さん」

妙の肩をゆっくり撫でる。

「間に合って良かった。無事でほんとに良かった」
「ごめんなさい・・・」
「うん。反省してね」
「はい。助けてくれてありがとうございます」
「どういたしまして。じゃ、帰ろっか」


******

姉上が騙されて連れ込まれた場所に潜入捜査中の山崎がいたら、という話。
姉上はお店のお客さんだとわりと信用しそうだなと。

山崎に怒られてる姉上が書きたかっただけの話なので設定穴だらけなのはスルーでお願いします(笑)




2019 0428

沖田と妙「笑った顔ならわりと好き」

「姐さん。顔、どうしやした」

見回り途中に通りかかった志村家。表に出て掃き掃除をしてた妙と軽く挨拶を交わして通りすぎようとしたとき、その頬が少し腫れているように見えた。

「それ、叩かれた痕だろ」
「わかります?」
「まあ、見慣れてるしねィ」
「やっぱり目立つのかしら」

目立つから指摘したのだが、当の本人はやけにのんびりしている。

「弟の反抗期ですかィ」
「まさか」
「そりゃねぇか。じゃあ痴話喧嘩のもつれとか」
「それのとばっちりかしら。子どもみたいな逆恨みでぺちんとね。でもそんなに強く叩かれてないですよ」

知り合いの色恋沙汰に巻き込まれたか。それとも誰かに誤解されたか。とにかく深刻な事態ではなさそうだ。

「あんた顔だけはいいのに。もっと大事にしなせィよ」
「あらあら、元祖顔だけ男の言葉は重みがあるわね〜」
「それだけ減らず口叩けてりゃ心配ねえな」
「ふふ。心配してくれてありがとうございます」

少し腫れた頬を除けばいつもの通りの笑顔。よくもまあ毎日飽きもせずに笑えるな、と沖田は思う。表情筋がほぼ死んでいる沖田には出来ないことだ。
だから別に好みじゃないのだが、笑った顔は良いなと思うときがあった。今まさに思ったところだ。

「で、どれくらいやり返しやした?」
「やり返したりしてませんよ」
「へえ。珍しい」
「色々あってね。あんまり関わりたくないから適当に逃げちゃった」
「なんだ。じゃあ俺がやってきやしょうか」

なんでもないように沖田が言う。本当になんでもないから。

「俺がやるってなにを?」
「姐さんの仕返し」
「あら過激ね。でも相手は女性よ?」
「俺は土方さんと違って女いけやすぜ」
「いけちゃダメでしょ」
「あんたの頬を叩くのもダメだろ。相手が女だからとか強く叩かれてねえとか関係ありやせんぜ」

その言葉が少し意外だった。妙は思わず沖田を見つめてしまう。

「うそでしょ・・・沖田さんが常識人みたいなこと言ってる」
「俺はおまわりさんですぜ? そこらのチンピラとは違うんで」
「・・・そうよね。そうだわ。私ったら何を考えてたのかしら。沖田さんなら女性相手でも平気で脅しそうだなんて。沖田さんに失礼よね」
「そうそう。だから早く言いなせィ。その女に頬を叩かれた方がマシだと思うくらい死ぬほど後悔させてやりやすから」
「そこらのチンピラ以上ね」
「合法的でさァ」
「はいはい、この話はこの辺で。見回りご苦労様でーす」
「いやいや俺は姐さんのために働くんで、ちょっと煎餅でも出してもらいやしょうか。おじゃましまーす」
「帰れ」


********

これ書いてるとき、前に姉上が女のひとにビンタされる話を書いたのを思い出しました。なんとなく続きとしてもいいかも(笑)

沖田さんが沖田さんの基準で姉上を特別に思ってたらいいなあと妄想しつつ書いていたのですが、全く違う方向に話が進んでた。

姉上の笑った顔はわりと好き(恋でもタイプでもないけど)と思ってたらいいなって。

ちなみに姉上が女のひとにビンタされた話は、日記の記念のカテゴリにありましたー。やっぱり書いてたな(笑)





2019 0222

新八と妙「紹介します?」

それを聞いたとき、新八は心臓をぎゅっと掴まれたようだった。

「新ちゃんに会わせたいひとがいるの」

ついにきた、と新八は思う。
家族に紹介的なあれがついにきてしまった。

「……あ、あああわせたいひと?」

動揺が口にでてしまう。冷静になれ!と自分に言い聞かせるが、新八の手は震えたままだ。

「その、どんな方ですか? いやほらやっぱ気になるし? あ、新しくお店に入ったひとかな」

そうだ。まだ、例の紹介的な相手とは決まったわけじゃない。ただの友人パターンもありえるのだ。そう思えば新八の動揺も若干落ち着く。
しかし。

「そうねえ。私のことが好きな方かしら」

はい、終わった。決定打を叩き込まれた。目の前が真っ暗通り越して無になる。何も見えないし聞きたくない。

「悪いひとじゃないわよ。お店でお金も使ってくれるし、話も面白いし。なにより二枚目なのよ。モテるのも分かるわー」

弟の心情など露知らず、妙はのんびりとお茶を飲んでいる。

「もうすっごいの。ほら、この間バレンタインデーがあったじゃない? その時たまたま外で見かけたんだけど、両手にチョコがいっぱい入った袋を持ってたの。もう、いっぱいよ? ほんとにすごかったんだから」
「そりゃ良かったですね………」
「でね、新ちゃん。そのひとと会ってほしいの。恋人の役で」

時計の音がやけに大きく聞こえる。
半分屍になっていた新八は、妙の言葉をゆっくりと咀嚼した。

「────恋人?」
「うん。恋人」
「そのモテモテ野郎は姉上の恋人じゃないんですか?」
「違うわよ?」

お互いにきょとんとした顔で見つめあう。
つまり、ということは。

「あああ!良かったああああ!!!」
「え、急にどうしたの」
「いえいえ! なんでもありません! いやあ、良かったなあ!」

訝しげな妙に満面の笑みをむける。急に視界が晴れやかになった。
どうやら新八の早とちりだったらしい。急に会わせたいひとがいるなどと言うから、てっきり恋人を紹介されるのかと思ってしまったのだ。
しかし妙ははっきりと否定した。妙を好きなモテモテ野郎は恋人ではないと。なんせ妙の恋人役は新八なのだ、だから自分は恋人としてその男に会いに、会いに……。

「はあああああああ!???」
「もう、さっきからうるさいわよ」
「え! て、え? え?」

妙はなんと言っただろうか。恋人?誰が?

「姉上、恋人役って」
「うん、お願いね新ちゃん。あのひとにどーんと言ってちょうだい。俺の女に手を出すなー!て」
「いや無理! むりむり!」
「大丈夫よ。髪型とかちょっと変えたら大人っぽくなるって」
「いやいやいや、顔そっくりじゃん! 眼鏡とったら僕と姉上そっくりじゃん!」
「自分の顔がタイプなんですって言うから大丈夫。私、話してる間ずっと手鏡持って自分の顔見るようにするわ」
「大丈夫じゃないから! 急にキャラ付けしてもバレますって。話の流れで急遽作った設定は上手くいかないって相場は決まってるんですから」

まさかの提案。今度は違う意味で新八は動揺している。というか、なぜ銀時やら近藤やらに頼まないのか。適任な相手ならわりといるのだからそっちに頼めばいい。新八がそう言えば、妙はふう、と溜め息をついた。

「私だってそれは考えたわよ。でもね、できないの」
「それはどうして……」

新八が妙を見つめたとき、玄関を軽く叩く音と妙を呼ぶ声が聞こえてきた。このタイミングで訪れた妙を呼ぶ客。まさか。

「はーい。今行きまーす。……ね? もう来ちゃったの。今からここで会うことになってるから」
「はあ?」
「さ、出迎えましょ」
「まさか」
「そのまさかよ」
「うわあああやっぱり」
「今日のこの時間に家で恋人に会わせるって約束してたのをうっかり忘れてたの。今からじゃ他のひとに頼めないもの」
「そんな大事なこと忘れるなよ!!」
「ほら、呼んでるわ。行きましょ新ちゃん」
「あーもーいやだー」

どことなく楽しげな妙に引きずられるように歩いて行く。とりあえず、姉上と呼ばないように気を付けようと新八は渋々覚悟を決めた。


********

実はバレバレってのも面白いしバレないのも面白い。新八が頑張るのを横でニコニコ見ている姉上が目に浮かびます。


姉上と新ちゃんはそっくりだと思っているのですが、2年後や3年後の新ちゃんが公式で男前なのも激しく萌えます。あの成長最高。絶対に男前になると思ってた。ちょっと目が細くなるのは父上似なのかなーとか思うとニヤニヤします。絶対にモテてると思う。




2019 0220

銀時と妙「ちゅう」

ちゅう、とキスされた。
ばか女に。

「おい」

畳の上に転がっているのは志村妙。上着は羽織ったまま、安らかな寝息をたてている。

「寝てるし。寝てんじゃねーよ酔っ払い」

先ほどまで起きていたのに、今は揺らしても起きそうにない。

「あーマジか」

仕事帰り美味しい酒があると新八に誘われ、志村家に寄って酒を飲んでいた。
いい感じに酔いがまわった頃、いつもより早く妙が仕事を終えて帰ってきた。
妙も珍しく酔っていて、「あら、銀さん」と陽気に笑う。
それだけだ。
ただいつもと違っていたのは、妙が銀時以上に酔っていて、銀時の軽口にのってきたことだ。

『おかえりのチューでもしてやろうか』

こんなしょうもない言葉など、いつもなら一蹴されるだけ。ただの言葉遊びで、妙の反応を見るのが面白かったから言ってみただけだ。酔っていたから深く考えてなどいなかった。

「あー、マジか」

なにが腹立つって、銀時はその衝撃で酔いも眠気も覚めたというのに、元凶はすやすやと気持ちよく床に転がって寝ているのだ。

「………はあ」

ため息を吐き、横を見やる。
心なしか微笑んでいるようにも見える寝顔は幸せそうだ。

『ただいまのちゅーです』

あのとき妙は銀時にキスをしたあと、ふはぁと気の抜けたように笑い、そのままころりと転がって寝てしまった。
なに言ってんだと止めるでもなく重なった唇。色気のかけらもない、子どもみたいな口づけ。

「はあ」

もう溜め息しかでない。
そもそもなんでキスしやがった。酔っていたから夢心地だったから。
それとも自分だったから?
起きたとき、はたしてこのばか女は覚えているのかいないのか。
酔いの抜けた頭で、そんなことを考えていた。


********

でもまあ、姉上覚えてなさそうな気がするので銀さんドンマイ笑)

銀さんが姉上に「ばか」って言うの、すごく愛を感じるのでついつい多用してしまいます。いいよね。常に愛を感じる。なんなら愛してるより愛を感じる。
ここでの愛に恋愛感情の有無は考えておりません。恋愛感情あってもなくても、どっちでもいいよ!

ノープランで最初の一行を書いてから話をつくりました。
ちゅう、て書きたくて(笑)




2019 0219

沖田と妙「毛布」

「沖田さん、キスしたことある?」
「姐さんは?」
「秘密」
「なんかウゼェな」
「まあひどい」

口ではひどいと言いつつも、妙の柔らかな口調は変わらない。

「沖田さんは恋愛経験ありそうね」
「根拠は」
「女の子を言いなりにするじゃない。調教というのかしら」
「昼間からする話題かね」
「あなたは気にするひとじゃないでしょ」

なにが可笑しいのか、妙はくすくす笑う。
ふわふわと続く中身のない会話。アイマスクをして寝転がる沖田にはちょうど良い。
柔らかな声が降ってくる。
毛布みたいだと思った。

「そういうのって自然と出来るようになるものかしら」
「天性の素質を持ってますんで」
「相手を探す方法なんてあるの?」
「黙っていても寄ってきやすぜ」
「まあ。顔が良いと特ね」
「ですねィ」

妙は沖田の顔を、多分なんの考えもなく、自然に褒める時がある。
言われる言葉は寄ってくる女から聞き慣れたもので、そういう女に言われるたびうんざりしているし、なんの感慨もない。
しかし妙の声がそこに乗ると本当に不思議なのだが、素直に聞くことができた。
柔らかいのだ。言葉が、声が、空気が、そのひとが。

「あら。雨が降りそうね」
「ここなら濡れねえでしょ」
「そうね。でも冷えるんじゃない?」
「あったかいですぜ」
「それなら良かった」
「それより何か話しやせんか。さっきのウザい話でもいいですぜ」
「ふふ。そうね、じゃあ秘密の話でもしましょうか」

アイマスクに遮られた視界には何も映らない。沖田に触れるのは柔らかな気配だけ。


********

ほどほどに仲の良い二人が好きなんです。恋愛感情そっちのけで、親密とまではいかないけど、ふわふわと世間話をする二人っていいなーと。

神楽ちゃんだと意識しすぎてしまうし、沖田さんにとって姉上って程々でいいんじゃないかって勝手に思ってる(о´∀`о)




2019 0218

銀時と妙「お手伝い」

※銀妙夫婦シリーズ
※下ネタ注意!



夫婦になったからといって、お妙と二人きりになることは案外少ない。昼も夜も誰かしらいるのが常だ。それはそれで別にいい。しかし溜まるもんは溜まる。
今夜は誰もいなかった。久々に一人の夜だ。そんな夜にすることなど決まってる。
視線の先には萎えたちんこ。
ふとんの上で胡座をかいて、右手は俺の息子に、オカズはもちろん俺の嫁さん。
最高にエロい姿を脳裏に思い浮かべ、慣れた手つきで擦り上げる。久々の刺激は最高で、この手がお妙だったらもっと良かったなと思うが仕方ない。そこは妄想でカバーする。
息が荒くなり始めた頃。実際にやってもらったことはないが、恥ずかしそうに俺のをしゃぶる姿(妄想)で終わりを迎えようとしたとき、襖が開いた。

「銀さん、もう寝た………あ」

時間も手も言葉も、なんなら呼吸さえも止まった。凍りつくような静寂が部屋を包んでいる。
しかし、ちんこは萎えない。
さすが俺の息子だなんて誉めたくなるかバカヤロー。空気読んで即萎えろバカ息子が。

「銀さん、あの、ごめんなさい、突然。あ、お菓子があるんです。後でお持ちしますね、後で……」

正直引かれるか叫ばれるかすると思ったが、お妙は意外と冷静だ。まあ、見てわかるほど動揺はしているが。
そんなお妙を見ていたら俺の方が冷静になっていた。勃起したちんこ握りしめたままで冷静もナニもねえが、それは置いといて。

「お妙、こっち」

そう言って、自分のアレを指差す。

「これ、出さないと無理っぽいんだけど。お妙手伝って」

と、なんでもないふうに言ってみた。
断られるのは規定路線。ちょっとエロい雰囲気だして照れるお妙が見たいだけ。ご無沙汰だしな。
しかし現実は俺の予想を越える。

「あの、お手伝いします」
「………は?」

きゅっ、と唇を結んで妙はそう言った。言うだけじゃない。迷いのない動作で俺に寄ると、綺麗な所作で正座をする。

「やり方を教えてください」
「マジで?」
「だって……夫婦ですから」

ぽうっと頬を染めて。妙はほんのりと微笑む。
俺のオナニーは嫁さんから受け入れられ、なおかつ手助けもあるらしい。なんだこれ。最高じゃん。俺の嫁さん最高じゃん。嫁さん最高。オナニー最高。いややっぱ夫婦最高。結婚最高。
でも、それならと俺は思う。

「それなら今から抱いていい?」
「え」
「抜いてもらえるのもいいけどよ、それならお妙を抱きたいんですけど」
「あ、そう、そうですか」
「風呂入る?」
「は、はい。入ります……」
「じゃあ俺も入るわ」
「え、え?」



********

オカズは嫁さん。でも抱きたいが勝つ旦那でした〜。イチャイチャ〜。

銀妙夫婦ものって多分もっと書けるテーマは色々あると思います。二人の子どもとかね。過去と向き合うとか。
でも雨オレの銀妙夫婦は旦那が嫁を抱きたがるのでそんな話ばっかです。嫁さん妄想ふぇらが現実になったらいいですね!(о´∀`о




2019 0217

土方と妙「逃げてやるのに」

この女、死にそうだな。

「おい」

土方は女の肩を掴んだ。細い。

「あんた、なにがあった」

振り返った顔はいつもどおり。素知らぬ笑みを浮かべて土方を眺める。
まるで物でも見るように。

「なにが、と言われましても」

こんな顔で笑う女ではなかった。胡散臭い笑みの方がまだ、よく知る志村妙の顔だった。

「意外と強引な方なのね」
「無理に掴んだのは悪かった」
「逢い引きのお誘いかしら」
「話を逸らすな」

顔色が悪いのか、血が通っていないのか。この女がこの世のものではないと言われても、今なら信じるかもしれない。

「あんた、今にも死にそうな顔だ」

すっと笑みが消えた。途端に作り物めいてくる顔が土方を見据えていた。

「それがどうかしましたか」

その一言で、土方の予感は妄想ではないと知る。

「なにがあった」
「なんのことやら」
「死ぬつもりか?」
「まさか」
「護るためか」
「そうかもしれませんね」

背負い込んだ重圧に潰されようとしているのか。なにかと心中でもしようとしているのか。なにを抱えていこうとしているのか。
なにもわからない。わからないから、土方は躊躇なく止めることができた。

「そんなもの捨てればいい」
「捨てられるものですか」
「じゃあ逃げればいい」
「逃げる? 私が?」

妙は鼻で笑ったが、土方は笑わなかった。

「一緒に逃げてやるよ。どこかに行ってもいいし行かなくてもいい。捨てられねえなら抱えたままでいい」

愛とか恋ではないから言えた台詞。妙を知らないからこそ出来ること。妙の一番ではないからできる、土方にしかできない護り方。

「俺が一緒に逃げてやるから」

整った綺麗な仮面が、くしゃりと歪んだ。


********

距離感ね。この近すぎない感じが良い。恋愛感情はないんですよ。お互いに。ないから言える。お互いに大切なものは別だから言える。
近藤さんや銀さんだったら、解決策を探そうとするし助けてあげようとするんだと思います。


この話、姉上が「一緒に逃げてくれる?」と言ったらどういう反応するかなあ、という私の妄想が元ネタです。
銀さんや近藤さんは助けようとしてくれるし、大体の人は「解決」しようとしてくれるんだろうなあと。
でも土方さんに(妄想で)言ったとき、「そうか。わかった」って(妄想で)答えたので私がびっくりしたというね。それが元ネタっす。ネタすら自給自足する根性があるので銀魂が終わっても大丈夫でっす!!




2019 0104

銀時と妙「クリスマスイブ」

聖夜? クリスマス? ここはかぶき町だこのやろー、と憤ることすら面倒で昼寝をしていた銀時の元に客が来た。

「銀さん、今夜はクリスマスイブですよ」

訪ねて来たのは妙だった。新八や神楽がいないときに来るのは珍しい。つまり、それを狙って来たということだ。嫌な予感がする。

「イブといえば銀さん、わかりますよね?」

やはり面倒ごとだった。この女が訪ねて来た時点でわかってはいたが。

「あー、イブねぇ、イブ」
「どんな日かご存知でしょ?」
「確か一年で一番ラブホが賑わう日だっけ」
「違います。ぜんっぜん違います」
「違わねーだろ」
「私の言いたいこととは違います」
「お妙ちゃんもイブにラブホでラブってくんの?」
「お妙ちゃんはイブにラブホでラブりません」
「へー。せっかくだからベッドが回るとこで回ってくれば?」
「銀さん、いい加減怒りますよ?」

どうやら誤魔化せなかったらしい。

「へいへい。で、なに。クリスマスイブとか今さら俺らで話題にすることでもねえだろ」

妙の笑顔と握り締められた拳を交互眺めながら、渋々受け答えてみる。あの拳を受けるよりマシだ。

「今夜はイブですから、神楽ちゃんと定春くんを連れて家に来てくださいな。お祝いしましょうよ」
「なんの祝いだよ。まあいいけど」
「贈り物の準備もしましょう」
「飯食って人生ゲームでもやってりゃいいだろ。特別に銀行役やらしてやっから」
「イブですよ? あの子たちに贈り物もしないと」
「俺にもあんの?」
「ありますよ」
「あんのかよ」
「イブにラブホでラブってる、でしたっけ。それやりましょうよ」
「はあ?」
「回るベッドで一緒に回りましょ。銀さんの方が多めに回っていいですよ」
「おまえなに言ってんの?」
「ふふ、冗談ですよ」

銀さんがふざけてばかりいるから、と妙は口の端を吊り上げて笑う。その笑い顔がいつもと違い少し意地悪そうに見えて、普段見せない顔に一瞬目を奪われた。
銀時は思わず自分の目元を押さえる。

「やばい」
「はい?」
「まじやばいって、今ちょっと女に見えた。おっぱいまな板のメスゴリラが女に見えた。ヤバい。一瞬マジになったわ。シャレにならねーやつだろこれ。正直多めに回されたいとか思ったマジでか俺。メスゴリラに回されたいとか頭イかれてるだろやばいやばい」
「銀さん、今から本当に本気で怒りますね」


********


クリスマスネタを書きたくて出来上がったのがこれという。
そして今は三が日も過ぎて、あけましておめでとうございます!元気です!


姉上は銀さんを男として見ていないと私は思ってますが、銀さんも姉上を女として見ていないとは思ってません。見ないようにしてると思ってます。


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