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「いけいけどんどーん!」

「忍びが勢いだけで任務をこなせる訳がないだろう。」


「うーん、どっちにしよう。こっちも良いし、あっちも良いし…。」

「何時も迷ってばかりじゃ、いられませんから。」


「戦輪を使わせれば忍術学園NO.1!教科の成績も実技の成績も学年一!」

「忍が目立ってどうするんですか。地味にいくのが1番でしょう。」





「何をそんなに怖がっているんですか?」

あの夜、尾浜くんに突き付けられた言葉。落ち着いて考えてみれば、恐らく私は、知らないこの世界が怖かったんだとう思う。今までそれなりに大切な人たちに出会って、それなりに関係を築いて、それなりに生きてきた。だけど突如として慣れ親しんだその場所から、全く別の世界へと落とされて。でも全く知らない場所じゃない。幼い頃から共に成長してきた大好きなアニメの世界。全く知らない訳じゃないその場所に、少しだけ安堵していたのだ。一方的にだけど知っている彼ら、全くの他人じゃない彼らがいるこの世界に。でも突き付けられた現実に、私はもう二度とこの場所を知っている世界だとは言えなくなってしまった。全く知らない場所に落とされて、情に熱く心根では優しいと思っていた彼らの心の底を見せられて、私はこれからのことに不安を抱いたのだ。もしかしたら私は殺されてしまうんじゃないか。このまま捨てられてしまうんじゃないか。アニメの彼らだったら考えられない結末だけど、この世界の彼らだったら容易に想像できる私の終わり

全くおかしな話だ

案外、彼らが全てを演じていたなどという事実は、どうでも良い事だったのかもしれない。結局のところ、自分がどうなってしまうのか分からないこの世界。ただそれが怖かっただけなんだ

「…死にたくないなぁ…。」

そんな至極当たり前な言葉が口から零れ落ちた。死にたくない。怖い思いもしたくない。痛いのも嫌だ。忍術学園の方達に聞かれてしまえば、随分と我儘だと笑われてしまいそうなそれは今、私が抱えている本音だ。きっとこの学園を出ることが、1番の解決策なんだと思う。だけど、この世界の常識を何も知らない私が外に飛び出したところで、全うな生活どころかきっと、生きていくことさえもままならないだろう。そもそも、彼らが私を此処から出してくれるとは考え難いのだけど…

「伊織さん、入りますよ?」

その時、廊下とこの部屋を隔てる薄い襖の先から、声が聞こえた。…どうぞ。そう返せば、失礼します。とゆっくり襖が引かれた。その襖の先では久々知兵助が、にこりとその顔に笑みを浮かべ、立っていたのだ

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