::【ワンピース】シャチ
*偽設定あり

「…み、見たか…?」
「うん、見た。」

揺れるミントグリーンの瞳を見つめながら頷けば、シャチは自称気味に笑った後、前髪で自身の目を隠す様にくしゃりと撫でた

「気持ち悪いだろ、こんな色。親は2人共、茶なのに俺だけこんな色でさ。よく母親が父親に、他の男の子供なんじゃないかって罵られてばかりで。遂には俺もさ、母親にも嫌われて異端だって言われたんだ。」

私を目を合わさない様に、俯くシャチがいつもの彼らしくなくて、私はそっと彼の前髪をかき分け、その目を覗き込んだ

「そうかな?今までの人がどうだったかは知らないけど、私は綺麗だと思うよ。」

その左頬に掌を優しく添えれば、ようやく視線を上げたシャチの瞳とぶつかった

「シャチの目の色は力強い草木の色だね。それに豊かな大地の色。爽やかな夏風の色。この目は…そんな雄大な自然の色だと思うよ。それなのにこんなに優しい色、気持ち悪いなんて思えないよ。」

「私、シャチのこの目が大好きだよ。」

だから嫌いにならないで。私は残りの右の掌も彼の頬に沿えて、まっすぐとその瞳を見て笑いかけた。途端にシャチの目には涙の膜が張り、その瞳は光に反射してキラキラと輝いて見えた。ほら、やっぱりこんなに綺麗じゃないか。私は少し乱暴に袖口でシャチの涙をぐしゃぐしゃと拭ってやり、ぐっと頬を両手で押さえて顔を上へと無理やり向けた

「シャチ!自信持て!」

ポロリと音が鳴る様に零れたその雫は、私の親指の腹を伝って流れおちていった

シャチは、おう。としっかり頷いていつものにっかりとした笑みで答えてくれた

(やっぱりシャチには笑顔が1番だ!)


21:09 28 Oct (0)


::【鬼灯の冷徹】鬼灯
「38.2℃。今日は大人しく寝ていることです。」

「すみません、鬼灯様。まだ仕事が残っているのに…風邪なんて…。」

「そう思っているのなら、ゆっくり休み早く治すことです。」

「はい…。」

そう言って体温計を救急箱の中にしまった鬼灯様はほら、と袖口から小さな袋を取りだした

「風邪薬です、とりあえずこれを飲んで眠りなさい。」

「…鬼灯様、その薬は…。」

「薬?極楽満月の物ですが?」

「いや、そうではなくて…その、粉薬ですか?」

コイツは何を言っているんだ?という風に眉間に皺を寄せ、そうですが。と鬼灯様は私の疑問に頷いた。その答えを聞き、内心ぎょっとした私は悟られぬ様に無理やり顔に笑顔を張り付け、NO!と言う様に右の掌を鬼灯様に向けて突き出した

「鬼灯様。私、昔から薬とはあまり相性が良くなく、蕁麻疹が出てしまうのでこのまま寝ますおやすみなさい。」

しゅば!と頭まで布団をかぶり、私はこのまま寝ますと強制的に言葉を紡いだ

「……………。」

「……………。」

「貴方まさか、薬が嫌いなんて、子供くさいこと言うんじゃないでしょうね?」

「そ、そんなこと言う筈がないじゃありませんか!本当、ちょっと薬とは相性が良くなくてですね、体質的に無理なんです。」

「安心なさい。これはあの白豚が貴方の体に合わせ調合した物なので、相性は抜群です。」

白澤様か!アイツ、余計なことを!内心で私はぐっと、歯噛みしながらどうしようと思考を巡らした。しかし、熱に浮かされた頭でうんうんと考えていれば、頭がぼんやりして眩暈がしてくる。そうだった私、熱が出ていたんだ

「私だって暇ではないのですよ、駄々こねてないで早く飲みなさい。」

「い、嫌です!そんな苦いの飲むなんて、このまま熱に殺された方がましです!」

「貴方もう死んでるでしょうが!」

ピシャリ!なんてもっともなツッコミをされて、私はでも、だって、と布団の中で口をもごもごと動かした。そんな私に、でももだってもありません!と叱咤した鬼灯様は、こうなれば強硬手段です。と私に被さった布団をガバリと剥ぎ取ってしまった。その突然の行為と不穏な空気を読み取り、私がダッと布団から逃げ出そうとすれば、そうするよりも早く鬼灯様に身体を抱きとめられ捕まえられてしまう。ぎゃ!と驚く私を余所に、不機嫌そうな鬼灯様はぎゅむっとわざと爪をたてて私の鼻を摘まんだ

「ぎゃむ!」

あまりの鼻の痛さに悲痛の声をあげようとすれば、本気の目をした鬼灯様が、手にしていた薬袋を口の中に突っ込む勢いで近づけてきた。鬼灯様がしようとしていることを察した私は、瞬時に両手で自らの口を塞いで、抵抗の意志を表した

「早く口を開けないとこのまま窒息しますよ。」

いや、もう死んでるだろって貴方が言ったんじゃないか!そう思いながらも口に出来ない私は、じとりと恨みがましい目で鬼灯様を睨みあげた。だけどそんなことで臆する鬼灯様なわけもなく、素知らぬ顔でただただ私を見下ろしている。勿論、その手を離してくれることなく、次第に私は酸素を欲して、うーうーと苦し紛れに声をあげた。それを愉快そうに見下ろす鬼灯様を映した私の視界が、じわりと涙で滲んでいる気がした

「ほら、もう降参してはどうですか?口をあければ楽になれますよ?」

「うー、」

次第に酸素が0になって、苦しくなってきた。熱を持ってぐらぐらしていた頭が圧迫されて更に酷い揺れを引き起こす。あ、これもうだめだ。そう思って一瞬、気が抜けてしまった瞬間だった。何も考えられずに身体が勝手に酸素を求めて、プハっと大きく開いた口から酸素を肺の中へと吸い込んでしまった。働かない頭で、あ。と気づいてしまった時には既に遅く、また手で口を塞ごうとしたその時には、鬼灯様の手によって口の中に薬を捻じ込まれてしまった後だった。舌に絡みつくあまりの苦さに、おえ。となりそうになれば、吐き出さない様にと今度は鬼灯様の掌によって、私の口は塞がれてしまった

「吐き出したら今度は胃の奥にねじ込みますよ。」

キッと更に鋭く光る眼光に、私は遂にはポロポロと涙を零しながら、べっとりと舌に絡みつく苦い粉を、一生懸命唾液に絡めてごくりと飲み込んでいく。苦い、不味い、白澤さんのばかー!なんて内心で暴言をつらつらと吐き出しながら、私は何とか全部を胃の中に収めることができた。そうすれば、最初からそうすれば良いんですよと鬼灯様は、今になってやっとコップに入った水を手渡してくれた

「……鬼灯様、あんまりです…。病人相手に容赦なさすぎます…。」

コップの水を全て飲み干して一息つけば、鬼灯様は恍けた様に首を傾げ

「おや、口移しの方が良かったですか?」

なんて聞いてくるのだから、本当に達が悪い。きっと更に熱は上がってしまっていることだろう。私は今度こそ、鬼灯様におやすみなさいを告げて布団の中へと潜りこんだ


9:43 04 Aug (0)


::【鬼灯の冷徹】鬼灯
白髪赤目という見た目で女の子は、町の人からも両親からも魔女の子だと気味悪がられていた。女の子は殆どの時間を森で過ごしていたから、他人と殆ど接したことがなくて、根本的な人付き合いってものに疎かったりする。それから病気で死んでしまって地獄にやってくる。他人と接してこなかったから勿論、恋愛とかもよく理解してなくて鬼灯さんの分かりやすすぎるアプローチにも全く気付いてなくて…



「…全く、貴方は鈍すぎます…。」

「…鬼灯さん?」

私の首筋に顔を埋め、溜息を吐く鬼灯さんに一体どうしたのかと私はその肩を軽く揺すった

「鬼灯さん、どうした?もしかしてお腹?…お腹、痛いのか!?ど、どうしよう、だったら病院行かなきゃ!あ、でもその前にお医者さんを、薬が先かな!?どうしよう!?」

「…落ち着きなさい。」

鬼灯さんはご飯をたくさん食べるからな。もしかしたらお昼ご飯を食べすぎてしまって、お腹を壊してしまったのかもしれない。だったら一大事だ!とりあえず、急いで救急箱を取りに行こう、と走り出そうとすれば、そのまま鬼灯さんに抱きしめられてしまって、何故かトントンと慌てる私の背中を優しく、あやす様に叩き始めてしまった

「随分、らしくない姿を見せてしまいましたね…。すみません。」

「う、ううん。びっくりしたけど、お腹が痛いんじゃなくて良かった。」

いつも怒ってばかりの鬼灯さんが、こんなに優しいのは随分と気味が悪い。そんなことを言ってしまえば、また拳骨を貰ってしまうから言いはしないけど。こんなに元気のない鬼灯さんは初めてで、心配になってしまう。やっぱり、何処か調子が悪いのかな。元気がない時、人はどうやって元気をあげるんだろう。今まで、こうやって深く人と接したことはないから私には全くわからない。分からないけど、トントンと鬼灯さんが私の背を叩く振動が、酷く心地よいから、こうすれば鬼灯さんも同じ気持ちになってくれるのかな。そんな思いつきで、私も腕を鬼灯さんの大きな背中に回して、トントン、と不快に思われない様にゆっくりと、優しく叩いた。途端、びくりと身体を震わせた鬼灯さんに、私はぎゃ!と変な声を出して、そのままの体制で固まってしまった

「ご、ごめん!鬼灯さん、痛かった?嫌だった?えっと、鬼灯さんが元気がなくて、どうしたら良いか分からなくて…私も鬼灯さんに背中を叩かれて、凄く安心できたから、そうすれば鬼灯さんも安心できると思って、その、私はまた何か間違えたかな…?」

私の首筋に顔を埋めているお蔭で、鬼灯さんが今、どんな顔してるのかは分からないけど、私はまた何か変なことをして鬼灯さんを怒らせてしまったのだろうか。少しでも怒りを和らげてはくれないだろうかと、必死に弁解してみるも鬼灯さんはピタリとも動いてくれなくて、私はいよいよ不安になって、小さく彼の名前を口にした

「…鬼灯、さん?」

ご機嫌をうかがう様に、絞りだしたその音に、鬼灯さんは漸く動きだして、離してくれるのかな。そう思うも、何故か更にギュッと強く抱きしめられてしまった。本当に今日の鬼灯さんは、どうしたんだろう。ぎゅうぎゅう抱きしめられるその腕に、私は一体どうしたら良いのか分からなくて、手持ち無沙汰となってしまった手を、鬼灯さんの腰辺りの着物を掴むことで落ち着いた

「…地獄はどうですか?もう慣れましたか?」

「え?あ、…うん。時たま自分が死んだって忘れてしまうこともあるけど、此処の皆は優しくて、温かいし。凄く楽しいんだ。」

気温が、とかそういうことじゃなくて此処には心が温かい人が多い。私なんかに優しくしてくれる人が一杯いる。擦れ違えば石や水なんかじゃなくて、優しい言葉をかけてくれる。困っていれば笑ったりしないで、どうしたの?って心配してくれる。私のことを怖がったりせずにいつも隣にいて、気にかけてくれる人がいる

「…その、でも正直、こんなに優しくされるのって、初めてで慣れてなくて、未だに戸惑っちゃうんだ。それに…私は、ちゃんと返せているか心配になるから。」

こんなに一杯の優しさを貰って、私はそれだけの優しさを彼らに返せているのかな。そう尋ねただけなのに

「いいんですよ、そんなもの返さなくて。」

「そ、そんなものって、酷いこと言うな…。」

キッパリと一刀両断された返事に、私はたじろいでしまった。あれ?でも貰ったものは返さないといけないって聞いたことがあるけど違うのかな。何度も世間知らずと鬼灯さんに言われてしまった頭では、本当にそれが正しいのか判断つかなくなってきてしまった

「いいんですよ、それは返さなくて。別に皆も、見返りが欲しくて優しくしている訳じゃないんですよ。貴方だから、優しくしているんです。」

「私だから?」

「そうです。貴方だからですよ。皆、貴方が好きだから、優しくしたいし、構ってあげたくなるし、傍にいて支えてあげたい、そう思うんです。」

「…私のことが、好きだから?」

好きだから。何故かその言葉だけが頭の中で反響している。好きだから。その言葉だけで心がぽかぽかして、どうしようもないくらいに胸がぎゅうぎゅうして、じわりと涙が浮かんだ

「わ、私、そんなこと言われたの初めてで、その、嬉しくて、そっか…そっか皆……。」

今まで好きだなんて言われたことなんてなかった。そんな暖かい感情なんて向けられたことなかったから。ぽかぽかする心が心地よくて、私はぎゅっと鬼灯さんの背中へと腕を回した

「…その、鬼灯さんも私のこと…好き、なのか?」

「ええ、好きですよ。」

そう言ってぎゅっと答える様に力を込められた腕に、いよいよ私の瞳からは涙が零れ落ちてしまった

「貴方はどうなんですか?皆のことはどう思ってるんですか?」

「勿論、私も皆のこと好きだ!」

嫌いなんてある訳ないじゃないか!慌てる様に言い返せば、鬼灯さんは「だったら、」と言葉を紡いだ

「私のことは?どれくらい好きなんです?」

漸く顔をあげた鬼灯さんは、その長い指で私の涙を掬いながら真っ直ぐに私の瞳を見つめた。勿論、そんなの決まってる。地獄で迷子になってる私を見つけてくれた鬼灯さん。私に居場所をくれたのも鬼灯さん。光を見せてくれたのも鬼灯さん。誰よりも傍にいて支えて、優しくしてくれたのも鬼灯さん。そんな彼のことは、もっとずっと

「大好きだ!」

自然と笑顔になって、考えるまでもなくその言葉が口から飛び出した。一瞬、目を瞬いた鬼灯さんだけど、次の瞬間にはいつもの表情になって

「私も大好きですよ。」

そう言って、見間違いかもしれないけど、本当に小さく、小さく鬼灯さんが笑った様な、そんな気がした。だけどそれを確かめる暇もないまま、鬼灯さんは私の顔を自分の胸に押し付けて、ちょっと黙ってなさい。そう言って暫くの間、ずっと鬼灯さんにぎゅうぎゅう抱きしめられる謎の時間が続いた


(…こんなに赤い顔、見せる訳にはいきませんからね)
(ひいいい、やっぱり鬼灯さんを怒らせてしまったのかな!?ど、どどどどうしよう!)


■□■□■□■□

鬼灯さんは恋愛ごとにも強引だっていうイメージだけど、そうじゃなくて自分の思い通りにいかない、そんな前途多難な鬼灯さんの恋とか凄い見物 ←


9:38 04 Aug (0)


::鬼灯の冷徹×忍たまA
あれからハチに三郎、勘ちゃんに雷蔵、兵助までもが地獄へ来ては裁判にかけられた。それぞれがそれぞれの地獄へ送られる中、彼らは皆、口をそろえて私への謝罪を口にした。悪かった。後悔してるんだ。許してくれ、と。それこそ懺悔の言葉は聞き飽きる程に亡者の口から聞かされてきた。その度に軽くあしらっては、突き離してきたのに。それなのにどうしてか、彼らの懺悔の言葉だけは、するりと私の心へと入り込んでしまったのだ。そんな言葉では、許される筈もないのに。過去のあの出来事は、何をしようとも許せるものではないのに

私はいつの間に止まってしまっていた手に気が付いて、はたと書類の上から顔を上げた。閻魔殿の中からじゃ、外の様子は分からないけど、辺りは静かで恐らく0時は過ぎた頃だろう。一体、私は仕事もせずに何を考えているのか。小さく溜息を吐く私とは反対に、鬼灯様は書類に書きこみをし判を押していた。鬼灯様ばかりに仕事をまかせる訳にもいかない。私は軽く頭を振って、ペンを握りなおした。頑張ろう、しっかりと仕事をしないと。そう思い書類に向かうもどうしてか、どうしようもなくも私の頭を占めるのは彼らのことばかりだった

「集中できていない様ですね。」

また、ぐるぐると同じことを考えそうになった時。聞こえた声に驚いて顔を上げれば、閻魔大王の机を挟んだ向かいで鬼灯様が私へと視線を向けていた

「も、申し訳ありません!少し考え事をしてしまって、」

私はやってしまった!とサっと顔を青くした。仕事は山程あるのに、これでは鬼灯様にお叱りを受けてしまう。しかし、いくら身構えてみても鬼灯様からの叱咤の言葉も張り手も降ってはこず、不思議に思い鬼灯様の顔を見れば彼は、眉間に皺を寄せたまま小さく息を吐いていた

「貴方は自分一人で背負いこんで、考えすぎなんですよ。たまには誰かを頼ってみるのも手ですよ。」

鬼灯様は愛用している金魚草のボールペンを机上へ置き、しっかりと私を見据えていた

私は馬鹿だから。良いようにその言葉を受け取ってしまいますよ。鬼灯様のそのお言葉、それは、もしかしなくとも鬼灯様を頼っても良いと、そういうことなんでしょうか。そう聞いてみたくとも、どうしても聞けなくて、うずうずと心の奥底がむず痒い気持になってしまった。そしてふと、思い出した。鬼灯様に頭を撫でていただいた時に感じたあの安心感を。柔らかく暖かくて、酷く落ち着くあの感覚。だから私は、無理を承知で、鬼灯様に願いごとをした

「…頭を、……撫でてくれますか、…?」

言って置いて、急に羞恥心と後悔の念がどっと押し寄せてきた。いくら、鬼灯様が良いと言ってくれたとしても、流石にこれは強請りすぎたのではないかと。図々しい願いだと、過ぎた願いだと言うのに

「そんなもので良いのですか?貴方はもっと欲張りになるべきです。」

席を立ち上がった鬼灯様は、そのまま真っ直ぐに私の元へと来ては、そっとその大きな手を私の頭の上へと置いた。時折り、髪を梳くように指に髪を絡めながら優しくそっと滑る鬼灯様のその手がとても暖かくて、安心できて、

気づけば涙が私の頬を伝っていた

「……鬼灯様…、私、どうしたら良いのか分からないんです…。今でもあの時の苦しみは覚えています。…絶対に許さないって、痛いくらいにこの心に刻み込んだんです…。でも、それなのに、私…おかしいんです…。頭では分かってるのに、許しちゃダメだって…。それでも、でも、刻み込んだはずの心が……、どうしてか、許したいって…思ってるんです…。」

「っもう、どうしたら良いのか、分からないんです…っ、」

音も無く頬を伝い零れる涙が、ポタポタと私の膝へと落ち、その着物の上にシミを増やしていく。今まで溜め込んでいた何かが、どうしてか鬼灯様の前ではその荷を下ろすことが出来たのだ。涙も言葉も感情も、全てがダムの様に決壊しては私の中から溢れ出してくる。そんな私のぐちゃぐちゃな思いも言葉も、鬼灯様は全部分かってくれている様に受け止め、大丈夫だと言う様にただ優しく頭を撫でてくれた。それが嬉しくて、苦しくて、

「もしかすると貴方は、そこまで彼らのことを憎んではいないのかもしれませんね…。」

後頭部を軽く押され、私は鬼灯様のお腹へと顔を埋める形となった。そのせいで私の着物が濡れることはなくなったが、代わりに鬼灯様の着物にじわじわと私の涙が染み込んでいく

「貴方、今でも彼らのことを愛称で呼んでいるでしょ?本当に憎い相手の名前なんて存外、呼びたくもないものですよ。」

そこで私は初めて気が付いた。未だに彼らのことを、生前笑いあっていた頃に呼んでいた呼び名を、今でも口にしていたということに

あぁ、そうなのかもしれない。私は心の底から彼らを憎んでいたと思っていたけど、本当は大好きな彼らを嫌いなること自体、無理なことだったのだ。それに気づかされると、ストン。と、心の奥に張り付いていた大きなシコリが剥がれ落ちた様な、酷くスッキリした様な気がした

「素直になりなさい。鬼にも心はありますよ。」

優しく頭ごと抱きしめてくれた鬼灯様の腕の中で、私は初めて声をあげて泣いた


■□■□■□■□

私は鬼灯さんに夢を見すぎていると自覚しています


9:36 04 Aug (0)


::鬼灯の冷徹×忍たま@
忍術学園五年生のくのいち女の子
天女襲撃後に、天女にはめられて仲間に殺される
それから鬼となった後、かくかくしかじかで閻魔殿にて第二補佐官につく


「竹谷八左ヱ門さん。生前は貴方、随分と動物を大切にされていた方の様ですねぇ。であれば本来、天国逝きとなるのですが。」

「しかし鬼灯様、資料によると彼は齢14の頃に1人の女性の為に大量の生き物を虐殺しております。」

「なるほど、確かにそうですね。ではその点も踏まえまして閻魔大王、判決をお願いします。」

「うむ、であれば竹谷八左ヱ門!わしが貴殿に下す決断は、不喜処地獄!」

カンカンと、閻魔大王は手にした木槌を叩き、法廷内にその音を響かせた。鬼に取り押さえられ、絶望といった表情を浮かべたかつての友人、竹谷八左衛門は縋る様な目で私を捕らえた

「…○○っ、本当に俺が悪かった!俺、あの後、後悔したんだ!お前が、っ殺されて、何であの時、お前を突き離したりしたんだって…っ、本当に、悪かった!俺っ、

「今となっては既にどうでも良いことです。貴方は罪人、その事実が覆ることは一切ございません。その身を持って、生前のご自身の罪を償ってきてください。はい、では次の亡者を此処に。」

「…○○っ!聞いてくれ、俺はっ!

尚も謝罪の言葉を口にする八は、両脇を鬼に引きずられ不喜処地獄へと連れて行かれた

「○○さん、良かったのですか?」

「良いんです。私はあの出来事を謝罪して欲しいなどと思ったことは一欠けらすらもありません。それにあれも当の昔の事。彼らは私の中で既に過去の人物です。今更、どう思われ謝罪されようとも、興味もございませんので。」

「…そうですか。では、裁判を再開しましょう。」

「はい、鬼灯様。」

そう答え次の亡者の資料を手にしようとすれば、不意にするりと頭を撫で、去っていった感触に、私は少し驚き顔をあげた。当の鬼灯様は既に私に背を向け、次の亡者について閻魔大王に説明をしているところで。そんな彼をぽかんと見つめながら、私は鬼灯様に撫でられた自分の頭にそっと手をやった。

どうやら、鬼灯様には私の心の中なんて全てお見通しの様だ。私は八が連れ去られて行った扉に視線をやった。八が死ぬことは前もって知っていたし、此処で裁判にかけられ地獄逝きになるだろうことも想定済みだった。覚悟はしていたつもりなんだけどな…。だけどどうしてか、かつての友人を目にした時、私の心は酷くかき乱されてしまったのだった


■□■□■□■□

過去とは一切決別したと思っていたのに、死んで地獄に来る仲間たちに心を乱されてしまうヒロインちゃん
それからやっぱり裏切られても、友人たちのことが大好きで、嫌いになんてなれないんだと気づき悩むヒロインちゃんを、鬼灯様が隣で支え背中を押してくれる、そんなお話ください


9:35 04 Aug (0)


::マギ×まどマギ
「ダメだよ○○お姉さん!気を確かに持って!」

目も開けられない程の突風が渦巻く中、それでも尚、彼女に近づこうとアラジンは一歩一歩とその足を進める。そんな悲痛な面持ちの彼を一瞥し、彼女は笑みを浮かべ吐き捨てた

「もうダメなんだよ。だって疲れちゃったんだもん、こんな運命さ。私はもういらないよ。」

「そんなっ、そんなこと言わないでおくれよっ!」

光も何も映していない○○の瞳は、彼女の握るソウルジェムと同じように真っ黒く濁りきっている。いつか聞いた。ソウルジェムは彼女の魂。それが黒く濁りきってしまえば、彼女は墜天……、魔女化してしまうと…

「そんな、嘘だろ…っ、こんなのって、あんまりじゃねぇか!」

「嫌です、○○さん!」

アリババくんとモルジアナが必死になって彼女の暴走を止めようと声を張り上げた。彼らだけじゃない。彼女の周りには必死になって止めようとする仲間たちがいる。だけどそんな声すらも彼女には届いていないのか、空を見つめたまま○○はふふっと小さく口から息を漏らした

「煩いなぁ、そもそもこの世界が悪いんだよ。こんな世界に来なかったら、私はまだ信じていられたのにさ。」

楽しげに弾む声。場違いなその声が、くすくすと笑い声をあげる。一体、彼女は誰なんだ。彼女はこんな笑い方をする子ではなかったはずだ。明るく優しい、それでいて怒りっぽくて、喧嘩してしまえば結局最後には泣いてしまうような。そんな何処にでもいる普通の女の子だった。それなのに、

「そうだ。だったらこんな世界もキミたちも、みぃーんな、みんな、壊しちゃおっか。」

にたり、そう笑んだ彼女に、私たちは一体どこで間違えてしまったのだろう。自然に双蛇を握る手に、ぐっと力が入った。私たちは彼女と戦えるのだろうか。優しく笑っていた彼女を、傷つけることが出来るのだろうか。私は………










「……助けて、」


聞こえる筈のない彼女の声が、聞こえた様な

そんな気がした


■□■□■□■□

っていうジャーファルさんジャーファルさんしてるお話が書きたいです。ギブミーマギ×まどマギ


9:35 04 Aug (0)


::五年(死ネタ→ハピエン?)
私たちは卒業と共に約束をした

『ひとつ』

『敵同士で再会したとしても、躊躇しないこと』

『ふたつ』

『この内の誰が死んでも泣かないこと』

『みっつ』

『死んだ者の後を追わないこと』

『よっつ』

『笑って生きること』


深緑の装束を脱ぎ捨て、黒の装束に袖を通して3年。勘ちゃんと兵助が戦場で、敵同士という最悪の形で再開した後、命を落としたと耳にした。兵助は勘ちゃんを切り伏せ、彼を看取った後に敵の忍びに背後から切りつけられたと聞いた。きっと兵助は死ぬつもりだったんだろう。もしかしたら彼は勘ちゃんと再会したその直後に、決意していたのかもしれない。忍びとして生きるなら、避けて通れない道を。ならば友と共に逝こうと。…あぁ、兵助の馬鹿野郎。あんなに固く誓い合った約束だと言うのに、真っ先に破ってくれた。馬鹿だ本当に…大馬鹿物だ

それから半年、雪の降り積もる冬のことだ。ハチが敵城への侵入に失敗したと耳にした。偶然、利害の一致という形で行動を共にしていた雷蔵は、ハチを助けに城へと潜入し、ハチと共に爆発に巻き込まれ命を落としたらしい。その悲報を持ってきた三郎は、私の家の戸口にボロボロの姿で立ったまま、淡々と言葉を放った。卒業してから双忍として常に雷蔵と行動を共にしてきた三郎は勿論、城へと潜入し、その惨劇を目にしていたのだ。置いて行かれる苦しみよりも、助けることの出来なかった悔しさを、彼は一身に受けたのだ。それでも、血に塗れボロボロな姿で戻ってきてくれたのは主の命を遂行し、私に彼らの最後を伝える為なんだろう。私は今すぐに大声をあげて泣き叫びたかったけど、彼らとの約束がそれを押し留めてくれた。とにかく、三郎の手当をしなくちゃ。そう思って彼の手を優しく引けば、やんわりと片方の手でそれを遮られてしまう。どうしたのかと彼の顔を伺えば、私の手はそのまま彼の酷く冷たい手にぎゅっと握りこまれてしまった

「…三郎。」

ぎゅっと握り締められた手と、彼の瞳の奥を覗けば、どうしてか彼の言わんとすることが分かってしまって、私は目に涙を溜めながら嫌だと首を横に振った。ダメだよ、約束したじゃない。絶対にダメだ。嫌だ嫌だと首を振れば、彼は私の手を更にぎゅっと強く握って

「不破雷蔵あるところ、鉢屋三郎あり…だろ?」

いつも学園で見せていたあのしたり顔で、彼はにやりと笑った。あぁ、もうきっと彼は決めてしまったんだろう。いくら私が泣き叫び嫌だと乞うても、彼は私よりも一足先に、彼らの元へいってしまうんだ。あぁ、良いよ。だったら私も一緒に連れていってよ。そう言おうと思えば、彼は私の頭を優しく撫でつけ言った

「…お前は、約束を破ってくれるなよ。」
「三郎…っ!」

嫌だ。嫌だ。そんなの、あんまりじゃないか。自分はあっさりと約束を破っておきながら、人には守れと言う。そんなのって、酷い。残酷すぎるじゃないか。置いていかれることの辛さを、三郎だって苦しいくらいに知っているはずなのに。…私だけを置いて行かないでよ…

伸ばした手は彼の腕をするりとすり抜け、降り積もる雪が三郎の残した足跡と血だまりを、…消していった


その年、私は忍びを辞めた。別に命が惜しくなった訳じゃない、怖気づいた訳でもない。ただ、彼らのいなくなった今、私だけしか彼らとの思い出を持っていなかったから。どうしても無くしたくはなかったのだ。あんなに素敵だった日々を、誰も知らない世界だなんて嫌だったから。だから、私だけは皆の約束を守るよ。泣かないし、後を追おうとも考えないし、目一杯笑って幸せな人生を生きてやるんだ。その彼らとの約束だけを胸に生き、私は8年後、病に伏せこの世を去った

享年、26歳。この時代にしては長く生きた方ではないだろうか。結婚もしたし、子供も生まれた。家族に看取られ死んでいった私は、まさに幸せだった、そう思えた人生。本当に、素敵な人生だった……


「おほー!やーっと来たか!」
「全く、○○が最後なのだ。」
「まぁ、キミたちの分まで人生謳歌してましたからね。」
「知ってるよ。俺たちずっと見てたからね。」
「わ、プライバシーの欠片もない!」
「まぁ、別に見たい訳じゃないが視界に入ってくるんだから仕方ないだろ。」
「とか言いながら、三郎が1番心配しながら見てたよね。」
「ら、雷蔵!」

家族に看取られ目を閉じ、次に開いた時には彼らが笑顔で出迎えてくれた。その瞬間、感じたんだ。あぁ、きっと新しい人生も、素敵なものになるんだろうなって

「さ、○○も来たことだし、そろそろ神様にお願いしに行こうか。」
「そうだね!あぁ、新しい世界はどんなとこなのかな?」
「まぁ、皆と一緒なら何処でだって楽しいんだろうけどね!」
「お、○○良いこと言うじゃねーか。」
「まぁ、その通りなのだ。」
「おっし。じゃぁ、行こう。」

ほら、そうやってまたあの得意気な顔で左手を差し出した三郎。あぁ、今度はちゃんと私も一緒に連れて行ってくれるんだね。私はその差し出された手を強く握り返し、その反対の手で私は雷蔵の手をぎゅっと握った。笑いながらもハチも兵助も勘ちゃんも皆で手をつないで、私たちは横一列に並び共に、新たな一歩を踏み出した

それから生まれ落ちた新しい平成の、この時代。私たちはたったひとつだけ約束をしたんだ

『これからは、ずっと一緒だ!』

ってね


9:34 04 Aug (0)


::子ジャーファル
「ほら、ジャーファルくん。シンドバッドさんから貰ったお菓子だよー。一緒に食べようねー。」

「黙れ。俺にかまうな。」

「…そんなこと言っちゃって本当は食べたいんでしょ?内心では凄く食べたいんだよねぇ?ねぇ?」

「そんなもの食べたくもない。俺の前から消え失せろ。」

「…ほ、ほほほ…まーたまたそんな強がっちゃってさぁ。あはは、ほら、お姉さんが全部食べちゃうよ?いいの?本当に食べちゃうよ?」

「何度も言わせるな。殺すぞ。」

「……あ は は 食べたいって言えよ、ほら。」

ぐりぐりぐりぐりぐり

「…俺の頬に押し付けてるその菓子を早くどけろ。」

「お前が全部食ったらな。」

ぐりぐりぐりぐりぐり

「………………。」

「………………。」

ジャキッ チャキッ

「あれれ?ジャーファルくん、双蛇なんて構えちゃってどうしたの?物騒だから早く仕舞っちゃいなよ。」

「そういうお前こそ刀を構えてるだろ。びびってるのか?」

「………………。」

「………………。」


どっかーんばったーん(始まる死闘)



「はっはっは。あの2人は本当に仲が良いなぁ。な、そう思うだろ?マスルール。」

「………違うと思うっす…。」


■□■□■□■□

ジャーファルさんより2つ上のお姉さん
新しく仲間になったジャーファルさんと早く打ち解けようとかまうけど、誰おまうぜえ状態の子ジャーファルさん。心の壁は分厚いです
そんなお姉さんと、子ジャーファルさんが丸くなった後でのシンドリア話をください


9:33 04 Aug (0)


::【黒バス】青峰大輝
私は青峰のディフェンスを軽やかにかわして、振り向き様に3ポイントシュートを放った。リングに吸い込まれるようにして落ちたボールは、ダンと床へと叩きつけられそのままコロコロと体育館の隅へと転がっていく。それにも関わらず、誰1人そのボールを取りに行く様なことはせず、もう既に意識はボールからコート内へと移ってしまっている様だった。私は途端にざわっ、とどよめく観衆の声を気にもすることなく、驚いた表情のままコートに突っ立っている青峰へと近づいた

「分かった?青峰よりも強い人間なんてこの世界には山と言う程いるんだよ。自分の限界を自分で決めるな。本当に1番になりたきゃ、自惚れてないで練習しなよ。」

本当は見下ろしてやりたいところだけど、私よりも圧倒的に身長の高い青峰を見下ろすなんてことは出来る筈もなく、私は少しでも威圧的に見える様に、下から挑発的な視線を青峰にぶつけた。そうすれば驚きに固まったままだった青峰は、小さな声で。私だけに聞こえるその低い声で呟いたのだ

「ぜってー、負かす。」

にやり、そう右の口角を不適に釣り上げた青峰に私は一瞬、きょとんと目を瞬かせる。今まで、つまらなさそうにバスケをしていた青峰の瞳が、うずうずと揺れていたからだ。そんな青峰に対して私はにししと笑いながらも、握り締めた拳を青峰の肩へと軽くぶつけたのだった

「上等だ。」


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みたいな夢を今日みました
(だいぶ曖昧なところがあるけども)
しかし私の黒バス知識は10巻そこらで止まったままだ


9:31 04 Aug (0)


::【名探偵コナン】怪盗キッド
「今宵の夜空に瞬く幾億の星たちも、貴女の美しさの前ではただの光でしかありません。」

「………。」

「プリンセス。どうやら私は、貴女のその美しさという名の輝きに、導かれた様です。」

「……キッド、気持ち悪い。」

「…おかしなことを言う人だ。ですが、そんな貴女もとても魅力的ですよ。」

「…鳥肌たった。」

「……しかし今宵はとても冷えますね。この様な薄着でベランダに出ていては風邪をひかれてしまいますよ。」

「貴方の言葉のブリザードに直撃してる真っ最中だからね。」

「…………。」

「どうしたの?」

「………いえ、何でもありません…。」

「あっそ。じゃあ私もう寝るから早いとこ帰ってね。」

「………はい…。」


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オチはない!
何が言いたいかってキッドにくっさい台詞で口説かれ隊!
【設定】:快斗のクラスメイトで、快斗→女の子


9:30 04 Aug (0)



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