斎藤 長編 | ナノ


「なにか面白いこと、起きないかな」


そうぽつりと呟いた総司の言葉
思わず眉がつりあがる

総司がこう呟いた日にはなにか起こる
例えば、土方先生曰く大切な書類が盗まれたや、土方先生が不貞行為を働き隠し子が何人もいるという噂が流れるなど・・・・大半は総司の仕業であるのだが
一番の被害者である土方先生のストレスは溜まるばかりだと思い思わず、土方先生に同情の念を向けながら
あと数分で始まる部活に向けて気持ちを引き締めた

「あれ?きょう、やけに静かだと思ったら
なまえちゃん休み?」

「・・・また休みか?」

また、と言うのは
夏休みに入ってから二週間が経つが、遅刻や欠席が異常に目立つ。
今まで遅刻も欠席もほぼない状態だった故に最初は何かあったのだろうか?と不安になったが、なまえの様子を見る限り特になにもないように見える。

「なまえちゃんもいないなんて尚更つまらないよね。僕かえっていい?」

「良いわけがないだろう、総司」

帰りそうになる総司を引き留めながら俺は深くため息をつくのであった





部活が始まればつまらない等と言っていた総司も真剣な目付きになっていく
ひとまず、安心といったところだが
今日は気を緩めると危険な気がしてならない

「おー、お前らお疲れさん」

思考回路をいったんとめ、部活に集中しようとしたところ現れたのは原田先生
原田先生の姿を見たとたん俺は一瞬硬直してしまう

「・・・先生、お疲れ様です」
「特にかわりはねぇか?」
「はい・・・・ですが、先生。その抱いている子供は・・・?」

俺が凝視したその目線の先には、原田先生とその腕に抱き上げられている二人の子供男女

見た目からして、保育園や幼稚園にかよっている年代だろうか
女の方は俺を原田先生のうでの中から遠慮がちに見ているが
男の方は遠慮などなく思い切り睨んでいる

「さの、だれこいつ」

「ん?斎藤っつーんだよ」

睨む男の頭をぽんぽんと撫でながら苦笑を浮かべる原田先生

「あれ、原田先生。隠し子ですか?」

休憩時間にはいったのか、総司が暇つぶしでも見つけたかというような笑みを浮かべやってくる

「いや、校内で迷子になってたとこ見つけたんだがよ、誰の子供かわかんなくてな・・・・・」

よしよし、と原田先生が男の方の頭を撫でてやると犬が威嚇するような目で睨みつけてくる


「こどもあつかいすんな!さの!」

どうやら、子供扱いをされるのを嫌がる性格らしい

「何この子、十分子供じゃない」
けらけらと笑いながらもつめたい視線な総司にさすがの子供もびくっと、体を震わせていた

「総司、相手は子供故、やめておけ」
「あははっ、ひどいなはじめくん。僕は何もする気はないよ?」

あんたがいじめる気がなくとも、そんな雰囲気を醸し出しているのだ

そう言いたい気持ちを抑え女子の方を見ると
ずっとこちらを見ていたのか目があう

「・・・・」
「・・・・」

どうやら片割れとは違い大人しい性格のようだ


「あははっ、なんだかこの子とはじめくん似てるね」

「・・・そうか?」

「それより、迷子なんでしょ?どうするの?」

女子の方の頭を撫でながら楽しそうにしている総司の言葉に俺と原田先生は思わす顔を見合わせた。

「あんたたちは誰と一緒に此処に来たんだ?」

そう投げかけた問いに誰も答える気配はなく
暫くの沈黙が続く

「・・・質問変えようか?君らの名前は?」

「・・・きむら、」
「木村?」

「木村という名前の来客者の子供か・・・」

ふむ、と原田先生が考え込むと思いついたように顔を上げる

「ああ。」
「思いついたんですか?」

「いや、お前らが入学する前に勤めてた国語の女教師に木村って名前の奴がいてよ・・確かそいつ、妊娠したかなんかで学校辞めてたな・・・」

「その、子供がこの子達?」
「・・・有り得なくもない、が木村という苗字は珍しくない故分からぬな。」

「・・そういや、木村、土方さんと付き合ってるみたいな噂流れてたな」

ぽつり、と呟いた原田先生の言葉

「へぇ、それならこの子たち土方さんの隠し子?」

面白いものを見つけたかのように総司の目が猫のように細くなったのを見て

俺は心の中で土方先生にひそかに同情した。


隠し子?

(面白いことみーつけた)
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