月曜日

朝、昨日の喧嘩の後が残ったままの部屋を後にする。
もう片付けるのも面倒だ
ほんの些細なことが発端なのにとても大きな喧嘩になった
あの人が部屋を出たのは数時間前で
そこから寝れるわけもなかったから
今、酷い顔をしているのだろう
鞄の中に入っているスマホは一向に鳴る気配すらない
家の前にある桜の木は蕾が膨らんでいた

会社に着くとあの人はいつものように沖田くんを怒鳴っていた


火曜日

仕事でミスを多発させて上司に迷惑をかけた
同僚の斎藤くんにも迷惑をかけた
先輩である原田さんにまで心配をかけてしまった
あんたらしくないな、ミスを多発させるなど
と言われた斎藤くんの言葉が胸に重くのしかかった

同じ室内でこちらを見ようともしないあの人は少しだけ煙草の本数と眉間の数が増えていたように見える
きっとこっちを見なくても私のミスに怒っているのだろう

同じ室内の人がミスをすると一番大変なのはあの人だから

帰りに見た桜は少し花びらが開いていた



水曜日

契約先の風間社長に半ば連行されて
二人で食事
風間社長に連れ去られるときに二日ぶりにあの人と目が合った
いつものように止めてくれることを期待したけど
あの人の目は直ぐに逸らされた
風間社長は面白くないと言わんばかりに
ふん、と鼻を鳴らした

食事中風間社長はあんな奴より俺にしておけと言ってくれたけれど丁重にお断りした


スマホには一通あの人から仕事の内容のメールが来てただけ。

スマホを見たあとの帰り道
綺麗に咲き始めた桜が少しぼやけて見えた

もうそろそろ満開なのだろう


木曜日

風邪をひいたらしい
頭が痛くてぼーっとする
仕事も上手く出来なくて原田さんに早退を勧められた

早退を申し出た時あの人は顔を背けたままそうか、分かった。の2言だけ。

もう、関係も終わりなのだろうな
そう思うとあの人の目の前で目頭が熱くなった

席に戻って帰る準備を始めると原田さんが優しく頭を撫でてくれた


その日の桜は覚えてない

スマホの電源を切ってひたすら眠った



金曜日

気が付くと夜の8時だった

会社に連絡を入れていないことに気がついて
慌てるけど力が入らない
スマホの電源を付ける気力にもならない

どうせ明日、明後日は休みだ
月曜日に考えよう
そう思ってまた瞼を閉じた

外からは夜桜を見に来た人の幸せそうな声がした

暗い部屋の中で目から滴が止まらなくなる

大好きな人の名前を呟くと一人の部屋に静かに反響した


土曜日

朝早くにインターホンの音がした
ドアを開けると斎藤くんと沖田くん

無断欠席なんてやるね、と沖田くんに笑われた
無断欠席のことを思い出して少し気が沈んだが二人とも体調を気遣ってくれたのに少し救われた

二人とも気を遣ってくれたのかあの人の話題は一回も出さなかった

ここ一週間で久々に笑った

開けた窓から桜の花びらが舞ってきた

そういえばあの人と春になったら桜見に行く約束、してたっけ。

もう守られない約束なんだろうな

そんなことをぼんやりと考えた


日曜日


深夜に目が覚めた
大分、体が軽くなった

水を飲もうと身体を起こすとベッドの淵でうとうとしているあの人がいた

スーツのままで仕事帰りにここに来たことは容易にわかる

驚いて声が出ないでいるとねむそうにしていた彼がこちらに気付いた


伸ばされる手がわたしのおでこに触れて思わずびくっとすると少し悲しそうな表情を浮かべながら
もう大丈夫か?と心配してくれた

こくこくと頷くと少し安心したように頬が緩んだのを見て思わず涙腺がゆるくなった

ごめんなさい、と謝るとぎゅっと抱きしめてくれた腕が暖かくて涙が止まらなくなる

目が覚めたら桜を見に行こう

そう言って二人で眠りに落ちた

桜舞う頃。


( 不器用な二人の1週間 )




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