露伴とスケッチ


カリカリともの凄い早さで進むペン先を、かれこれ何時間追い続けただろうか。景色とキャンパス、交互に見ながら必死にスケッチをする彼の隣で、冷たい風に身体を震わせた。

『寒くなってきたね。』
「……もう日が落ちるから当然だ」
『…どう?描けた?』

こちらに顔を向けてすらくれない。
判ってる、岸辺露伴は漫画家で、今もの凄く集中している事は百も承知だ。それでも少しくらい自分に構って欲しくて、隣に座る彼にグッと近付いてみる。彼の左肩と私の右肩が触れ合った瞬間、機械のように動いていたペンが止まってしまった。

「な、なんだよ突然」
『わぁ、さすがだね!写真みたい…』
「おいなまえ…あまりくっつくなよ、描きづらいじゃあないか…」

そう言う彼にニコッと笑ってやると、ため息を付きながら再びペンを走らせ始めた。のろのろと遅い。
ふと彼の左手を見てみると、驚くほどに血色が悪かった。寒い中ジッとキャンパスに添えていただけの手だ。冷えたのだろう。

『露伴、手大丈夫?』
「…っ!?」

そっと手に触れて両手で包み込んでみると、それは氷のようだった。またペンが動くのをやめ、今度は露伴まで表情を固める。私の突然のこの行為に驚いたらしい。

「…、な、」
『冷た!今度外でスケッチする時は手袋必要だねー…』

大事な手なのに、愛しい手なのに。
少しでも暖まるようにと彼の手をさすっていたら、左手がうねうねと動き始めて、私の右手を絡めとる。いつの間にか恋人繋ぎに形を変えていた。

『露伴?』
「…あと少しで描き終わる。それまでこうやってれば冷たくならないだろ?」
『あ、え?』

そっぽを向きながらそう言って、私の手も一緒に導かれたのは彼のコートのポケット。二つの手が入るのには少し小さいけれど、その分暖かさが増すようだ。
彼の方からこんな事してくるなんて珍しい。どんな顔をしてるのかと思い覗きこんでみると、そこには顔を真っ赤にしてすましている愛しい彼の横顔があった。

「…なんだよ。」
『なんでもないよ。幸せだなって思っただけ。』
「…確かに、否定は出来ないな。」




20121119

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