俺は今絶賛反省中だ。
何故って?

それはまたトムさんに八つ当たりしてしまったからだ。



今日はたまたま、本当にたまたまだ。
今朝シズちゃんとトムさんが仲良く笑い合いながら歩いているのを見た。
仲睦まじく歩く二人が羨ましかった。
あのシズちゃんのいる場所にもし俺が行けたのなら……無意味な理想を思い浮かべても虚しいだけだ。
そしてその後夕方頃帰ろうとしている所で一人切りのシズちゃんに見つかって擦りむいた程度だったけど怪我もして、散々追いかけ回されてヘトヘトだし膝は転んだ為に血塗れだし。
そうしたら今度はトムさんに会って手当てをしてくれるって部屋に上げてくれた。
のに、全く非のない彼にシズちゃんの事とかで嫌味を言ったり我が儘を言った。

俺はトムさんが好き。
今日みたいに怪我をした俺を手当てして優しくしてくれた彼が。
こんな風にちょくちょく俺を家に上げてくれるのが嬉しくなってわざわざ怪我する度新羅じゃなくて彼に会いに行ってしまう俺はかなり馬鹿だ。
だけどわざわざ彼に会いに来て勝手に哀しくなって八つ当たりしてしまう俺はもっと馬鹿だ。
俺は綺麗な人間じゃない。
彼は取り立て屋なんてやってるけど一般人には間違いなくて。
だから近付けない。
それでも彼と少しでも繋がりを持ちたくて怪我して弱った人間に成り済まして彼の善意に付け込む。
本当に嫌な奴だ。
だから彼の前でだけはそれを隠したいのに、素直になりたいのに結局俺って可愛くない。
イライラして彼に当たるなんて格好悪い。
お礼だって言ってないし。

「折原君?」

トムさんが俺を呼んだ。
けど返事が出来なくてただ俺は顔を上げて彼を窺うことしか出来ない。
それでも彼はちょっと困った顔をしながら笑って頭をポンポンなんて子供にするみたいに叩いてくる。

「機嫌悪いのは治ったかい?」

「…ごめんなさい」

「いーよ、そんな日もあるべ?」

怒ってないよ、なんて…トムさん、お人好し過ぎる。
こんな面倒で嫌な奴、怒ったって嫌いになったって良いんだよ。

うーん、やっぱり嫌って欲しくはないけども。

「トムさん、ありがとうね」

「別に良いよ。そんな事より静雄と喧嘩すんの止めろよな」

それこそ無理な相談だ。
それに……怪我しなくなったらトムさんトコ来る口実も作れない。

「ヤダ、だってシズちゃんムカツクんだもん」

「おいおい」

はぁ、と呆れ顔のトムさん。
だって、だってさ。
少しでも会いたいんだ。
それにほとんど毎日シズちゃんと一緒にいるじゃんトムさんは。
羨ましいんだよ、本当に。
こうでもしなきゃ貴方に近付けない、俺を見てくれないでしょ?トムさん。
今日だけじゃない、ずっと我がままばっかり言ってるのは自分が一番よく知ってる。

だからトムさん。

「ごめんなさい、嫌いになんないで」




(この時間だけは、俺を見て?)




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