※来神
 恋人同士(甘くなれない
 キレない静雄とツンデレしゅんな臨也
 静雄視点















あぁ、また始まった。
そう内心溜め息を吐く。

「馬鹿じゃないかな、シズちゃんは全然分かってない」

昼休みの屋上、隣り合わせに座った可愛い恋人はそっぽ向いたまま俺に対し文句を言い続けている。




数ヶ月前、俺こと平和島静雄と、折原臨也は恋人同士になった。
あんな危ない関係だった筈の俺らが何故こうなったのか、それは一年余りの殺し合いを経て俺が何かを勘違いしたか臨也に惚れてしまったからだ。
自覚してしまえばどんなにムカつくノミ虫でも暴力を振るうなんて出来る訳が無く。
結局色々と足りない頭で考えた結果駄目で元々と諦めつつも俺から告白した所予想外にも了承の返事が返ってきてそういう関係になった。
実際、付き合い出してからすぐ新羅から聞いた話によれば入学時から俺に一目惚れしていたのは臨也の方らしい。
あの執拗までな嫌がらせは気が引きたかったり照れ隠しが原因だったという事実にその時は溜め息しか出なかったが、まさか今それに悩まされるなんて…。



そして冒頭へ戻る。

今日は珍しく臨也が放課後何処か寄らないかと提案してきた。
何故か凄い剣幕だった臨也には驚いたものの正直いって二人で出掛けたのも数回程度しかない。
行きたくないのかと聞かれればそんな事はない、行きたいに決まっている。
しかし行きたいのは山々だったが運悪く今日は用事があった為一回断って……。
明らかにしょげている臨也に対し俺は逆に日曜日に一日ゆっくり池袋巡りでもどうかと誘った。
そして返ってきたのがあの台詞だ。
それでも別段腹が立つ事も無いのはそれに俺が慣れてきているからだ。

はぁ、と今度こそ本当に溜め息を吐き出してやれば臨也の肩がピクリと跳ねる。
そしてあれだけ俺は今日誘ったのに、とか日曜なんて何処も混んでるし、とかグチグチ聞こえていた声も段々と小さくなっていき最後には完全に沈黙した。
やっと落ち着いたか、と臨也を見遣れば恐る恐るこちらの様子を窺ってくるのだ。

「やっと黙ったな、お前」

「っ……、ごめ、なさ……」

素直に謝ってくる臨也の瞳は潤んでおり、やはり可愛い。
普段の臨也はかなり素直だ。
喧嘩ばかりだったが想いが通じ合った俺達は本当は仲睦まじい筈だった。
こうやって二人切りで昼飯を食べたり、出掛けたり、恋人同士の甘やかな時間を過ごしたい。
だがそれと同時にコイツは極度の恥ずかしがり屋で照れ屋だったのだ。
先程の悪態もコイツの照れ隠しに過ぎない。
今日はまだ良い方だ。
最悪ナイフで切り付けて来る時もある。
そう、簡単に言えばツンデレとかいう奴に近い。
世間ではそれも美味しい属性とかなんだろうが悲しい事に臨也のツンは本気で人を殺し兼ねない領域に達している。
というか俺じゃなければ死んでる。
だが数十秒前までとは今は別人のようにきゅっと俺の制服の袖を掴んでうるうるとこちらを見上げてくる臨也には怒れない、怒れる訳ない。
というよりさっきも言った通り慣れたのでたまにイラッとくる時もあるがキレる気も起きない。

「本当はね?うれ、嬉しかったんだよ?デ、デート、シズちゃんに誘われて…でもね、でもねっ、嬉しくって……つい、」

必死に弁解してこようとしているのが解るが完璧にデレにしか聞こえない。
そして俺は知っている、セルティに恋の相談を聞いてもらっており、照れ隠しに悪態を吐いた日は決まって落ち込んで泣き付いている事を。
そんな臨也が可愛くて抱きしめたくなるのだがそんな事をすれば今度こそナイフが飛んでくる事は目に見えていて……。

落ち落ち近づけもしない。


(面倒な奴好きになっちまったよなぁ)

しかしたとえ面倒だとしても本当に可愛くて仕方ない恋人なのだ。
普通の会話でさえいつ臨也の地雷(照れ隠しスイッチ)を踏むかも判らない、かといって文句も言えない、手を繋ぐ?以っての外だ。
この俺がまさか此処まで(色んな意味で)我慢強い人間になれるなんて今まで思ってもみなかった事で。
それが喜ばしいのかそうでないか全く判らないが。


きっと今度の日曜もこんな感じになるんだよなぁ、なんて俺は半泣きの臨也の頭に思わず手を置いてしまってナイフで制服を刻まれながら暢気に思った。







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