プクペラ


まだギルドが成立しておらず、ぺラップとプクリン、二匹だけで探検していた頃の話だ。当時二匹が寝床にしていたのはちいさな洞窟だった。洞窟、といっても入り口はプクリンの背丈ギリギリの大きさであったし、天井は石と石の隙間から雨漏りはするし、いまにも崩落しそうなボロボロ加減であった。
ギャンッ、と入り口で頭をぶつけてしゃがみこむプクリンは、そろそろ違うところを探したいと涙目で嘆いた。ぺラップもそれには同感だった。雨漏りのせいで持ち歩いている書物が次々とダメになっているのだ。明日にはここを出て違う拠点を探そうと決め、揃って布団に潜り込んだ。

その日はひどい嵐だった。ぺラップは天井からの雨漏りの冷たさで悲鳴をあげながら目を覚ました。はあ、とため息をついていると遠くからゴロゴロと雷鳴の音が聞こえることに気がついた。気がついてしまった。ひこうタイプの定めか、雷はどうも苦手だ。隣のプクリンが起きる気配はない。だんだんと近づいてくる雷の気配に、耳を塞いで蹲る。ガタガタと震えていると、突然洞窟全体が昼のようにパッと明るく照らされる。
あっ、と声が出た。この世の終わりのような音を立てて、雷は落ちる。パニックに陥りひどい声を出してちいさく蹲ったものだから、ぺラップは天井の石がガラガラと凄まじい音を立てて崩落しだしたことに気づくのが一歩遅れてしまった。目の前に巨大な石が近づいてくる。ぎゅっと目を瞑ると、柔らかく暖かいものに包まれた。覚えのある体温と、覚えのある声。

たあーーーーっ!!!!

その声に、いまにも命を奪いそうな岩は粉々に砕けてぱらぱらとぺラップの周りに消えた。おやかたさま、と掠れた声で呟いた後、ぺラップは静かに意識を失った。


ひどく体が重かった。水を吸った翼は持ち上げることすら億劫だし、頭はガンガンと殴られたような痛みに襲われている。いまにも眠りそうな意識を振り払ってのろのろと目を開けると、見慣れたピンク色の毛並みが見えた。大きなサファイアの瞳がぺラップを見下ろして、なにかをこらえるように滲む。

「怪我はない?」
「すこしだるいですが、怪我はないです」

そう告げると安堵したように短く息を吐くと、ぺラップの体を抱き抱えたまま歩を進める。ねぇぺラップ、いい場所を見つけたんだ。段差を登りながらプクリンは言う。やがて開けた場所に出る。高い崖があった。崖以外、何も無かった。

「……崖?」
「ここに拠点を作ったら、地下でも外が見えるでしょう?」

そうしたらほら、きっととってもすてきだ。
にこ、と笑うプクリンに呆れた顔を向けながら、ぺラップはふっ、と笑った。

「そうですね。きっとすてきです」


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