リンクとトゥーンリンク


じぃと水面を見つめるのにも飽きが来たか、手持ち無沙汰なトゥーンは懐から風のタクトを取り出すと軽やかに振った。さっきまで無風だったのにも関わらずほんのりと潮の香りがする風(ここは小さな川のほとりである)が緑色の帽子を景気よく揺らした。物言わず静かに水面を見つめていたリンクは顔を上げてぱちぱちと瞬きをする。

「それ、いつも思うけど便利そうだな」

「海を移動する時すごく便利だよ。船を動かす時に風の方向を変えると進路も変わるんだ」

そう言いながらトゥーンがもう1度タクトを振ると、今度は追い風が吹く。川もそれに合わせてゆらゆらと波紋が広がっていく。

「海か……海は、ここに来て初めて見た」

「そっちには湖があるんでしょ?」

「そう、湖しかない」

でも釣りはできる。そう言ってリンクは再び釣竿に視線を向けた。ここに来てだいぶ経つが今日は調子が悪いのか一度も魚が掛かっていない。

「ぼくのハイラルの海には魚はいないから、釣りはできないんだ」

「あれだけ広いのに、もったいない」

あれほど広ければ魚釣り放題だろうに、と真面目な顔をするリンクにトゥーンはぷっ、と吹き出した。リンクにいちゃんらしいね!
リンクはむっと顔を顰めたと思うとぱっと表情を変えた。釣竿を指さす。

「リンク、引いてるぞ」

完全に釣竿の存在を忘れていたトゥーンは慌てて竿を持とうとして何も入っていないバケツをひっくり返し、リンクは心底楽しそうに、声を上げて笑った。

20170812

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