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「ウェルカム トゥー ザ スマッシュブラザーズ!イッツミー マリオ!」

お決まりのセリフだ。よくわからないと首を傾げている者も、真剣に聞いている者も、聞き流している者もいた。屋敷の開けた場所に、簡単な飾り付けが施されている。薄い紙で作られた花は今にも取れそうだし、壇に貼られた紅白の布も隙間から木箱がはみ出ている。いかにも手作り感満載だが、不思議と文句をいったり不満な顔をする者は誰もいない。黒いスーツを身に纏ったマリオは、恭しく礼をした。

「エー、みなさん。お集まりいただきありがとうございます!まだもしかしたら新たなメンバーが来るかもしれませんが、それはその時。ボク…スマッシュブラザーズのリーダー、マリオは、主となるメンバーが全員集まったことをタイヘン喜ばしく思っております。ここに、パーティの開催を宣言させていただきます!」

わあああ、と歓声が響く中、マリオはちらりとルイージを見た。これでいいのかい、とでも言いたげな苦い表情である。しかたないなあ、と肩をすくめ、親指を立てる。ぱっとマリオの表情が明るくなるのを見て、手間が掛かる兄だなあと乾いた笑みを浮かべた。

「ハーイ、それじゃあ堅苦しいのはここまで!」

ばさり、とマリオはスーツを脱ぎ捨てた。黒い布が宙を舞う。あっという間に星が施された、おろしたてのオーバーオール姿に早変わりしたマリオはピーチから帽子を受け取って、深く被る。

「改めて、ようこそスマッシュブラザーズへ!ここに来たからには、みんなボクらの兄弟さ!遠慮なんていらないよ。神でも人間でも犬でも関係ない。みんな平等に、楽に接してほしい!
でもここで暮らすに連れて、ちょっとだけルールがあるんだ。これだけは守るようにね?」

会場の空気が一部だけ張り詰めた。見なくてもわかる、新参者のグループである。マリオは笑顔を崩さずに喋り続けた。

「 その1。平等に接する。上下関係なんてもってのほかさ!その2。ひとの嫌がることは絶対にしない。当たり前だね!そして最後は……」

ここで笑顔を崩さなかったマリオが一気に真顔になった。ごくり、とどこからか唾を飲み込む音が聞こえた。リンクやピカチュウが口を押さえて震えている。どんなに恐ろしいことなんだ、と新たな戦士は不安そうに顔に影を落とす。
ゆっくりと、マリオは口を開く。

「……その3。月に一回でいいからおやつの時間は絶対に守ること!以上!カンパイ!」

ゴーン、ゴーンと3時を告げる鐘が鳴った。
新参者の乾杯がワンテンポ遅れたのは言うまでもない。

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