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「これ、猫が食べて大丈夫なのかな」
きらきらとクッキーを見上げる子猫にピカチュウは苦い顔をした。
大丈夫ですよぉ、と幸せそうにケーキを頬張っていたヨッシーが言った。
「バター未使用の健全な煮干しクッキーですから!」
煮干しクッキーなんて聞いたことないわ、とプリンは興味深そうに猫を見つめる。子猫はにゃあと鳴いて首を傾げた。
「このクッキーはゼルダ姫が作ったのかな?」
「はい。少し焦げてしまったけど…」
楽しそうに談笑をするマルスとゼルダを見て、リンクは拗ねたように頬を膨らませた。
相変わらずわかりやすいなぁとボクはくすりと笑う。ウォッチがピコピコと電子音を鳴らしながら、リンクを宥めている。彼が物を食べられないのが残念でならない。
「そういえば、ミュウツーが見当たらないな」
ファルコンが言った。そういえばそうだね、とボクは辺りを見回した。愛想の悪い連中もいるが、ミュウツー以外の全員がここに集まっていた。
「噂をすればなんとやら、だな」
サムスが扉の方を向いた。ボクも釣られて目を向けたら、そこには少し不機嫌な顔をしたミュウツーがふわふわと浮いていた。
ミュウツーはテーブルいっぱいのお菓子を二、三個超能力で浮かせて、自分の元へ運ぶ。
そのまま踵を返し、出ていこうとするものだからボクは驚いた。
「ミュウツー、待ってくれ!」
「食べ物はみんなと一緒に食べた方がおいしいよー?」
ボクとルイージの説得も聞かず、ミュウツーの歩みは止まらない。
困ったように、顔を見合わせた。
すると不思議なことに、他のメンバーではなく子猫が真っ先に動いた。ミュウツーの足元にちょろちょろとじゃれつく。ぴたり、とミュウツーはその場に留まった。
「気に入られたみたいね」
プリンがさもおかしそうに笑った。あまり表情を表にださないミュウツーが助けを求めるようにこちらを見つめるのが珍しくて、ボクもつい吹き出してしまった。
ふわり、と子猫の体が浮かび上がる。弱い念力。子猫は怯むと思いきや、逆に楽しそうにしている。
それをミュウツーは困惑した様子で見つめていた。
「実は満更でもないんでしょ、この子飼うの」
ピカチュウが含み笑いをする。ミュウツーは彼を睨みつけるも、金縛りは発動しない。つまりきっとこれは、図星。
『――まあ、悪くはない』
テレパシーでそう吐き捨て、ミュウツーは出ていってしまった。
でも、
「全員でおやつを食べられる日も、遠くはないかな」
fin.
20140222
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