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猫を拾ったんだと、リンクは嬉しさ半分、悲しさ半分といった表情で言った。
拾った、ということはすなわち捨てられた、ということに繋がるからだろう。
ボクは玄関で泥まみれになっているリンクにタオルを渡した。早くお風呂で猫洗ってあげなよと。
でもリンクはその場から動かなかった。俯いて顔に影を作る。

「もしも、みんながここで猫を飼うのを反対したら、こいつはどうなるんだろう」

「その時はその時さ。まあそうはならないと思うけどね」

軽くウィンクしてやれば、リンクは少し安堵した様子でお風呂場へ向かった。
ボクはそれを見届けて、さっきから物陰に隠れているカービィに「キミに頼み事があるんだけど」と声を掛ける。それだけで不安そうにしていた顔は、ぱぁと明るくなった。

「あの子にあげるミルクを持ってきて。飲んじゃだめだよ。あと、このことをみんなに報告しなくちゃ」

こくこく、とカービィは嬉しそうに頷きキッチンに駆けていった。彼に食べ物関係の仕事を頼むのは少し不安だが、今は確かルイージがキッチンにいるから大丈夫だろう。

ボクは広間への扉を開く。それと同時にピチューがロケットの如くボクの胸に飛び込んできた。ぐぇ、と蛙が潰れたような声を出すボクにお構いなくピチューは揺さぶってくる。

「リン兄がねこ拾ったってほんと!?」

「ほ、本当さ、だから胸倉掴むのやめて…」

一連を見ていた子供リンク――ボクはコリン、と呼んでいる――が、はぁと呆れたようにため息をついた。

「どうすんのさ、里親探すのって結構めんどくさいんだよ?」

「それに、ちゃんとあの子を育ててくれる人を探さなきゃいけないしね」

ネスが正論を言った。ナナとトランプのスピードをしていたポポがあ、と間抜けな声を出す。

「そうだよね、普通は里親探すんだよね。飼う気になってた」

「ポポったら!まだみんなに許可貰ってないのに飼えるわけないじゃない!」

そんな二人のやり取りを微笑ましく思いながら、ボクは一言も喋らずに淡々と将棋をやっているガノンドロフとクッパの方に歩み寄る。ガノンドロフはこちらをちらりと一瞥したが、すぐに碁盤に視線を戻した。

「いいんじゃないか?飼っても」

クッパはあっさりと飼うのを許可した。一方のガノンドロフは「勝手にしろ」とこちらを見ずに駒を動かす。
劣勢になったのかクッパは目を見開いて難しい顔になった。邪魔しちゃ悪い。

ありがとうとお礼を言って、ボクは早々に立ち去ることにしたの、だが、

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