「で。どういうことですって?」

四月一日から救援をうけて待機していた基地から自軍を率いて飛び出した。 
四月一日は自分、濃霧林檎にとって妹のような存在。
そして、自分は四月一日にとって二人目の兄、または師のような存在。

昔から世話を焼き、子供扱いをしてきた。
それ故にか四月一日はどんなに厳しい状況であったとしても、濃霧に救援を求めることはしなかった。
それは自らの手足が吹き飛ぼうが目を抉られようが変わらなかった。

いつも、濃霧が駆けつけたときには四月一日は死にかけていた。

その四月一日が自分から応援を要求してきた。
ただ事ではない。
少なくとも、今回の四月一日の任務、『坂本大将の株を上げる』という任務を達成出来ない程度には危ないということである。

その直感は正しかった。

戦場に駆けつけたとき、四月一日の姿はなかった。
あったのは破壊された戦闘機と焼けた大地、そして頭を失い右往左往する四月一日の部隊。

すぐに月夜の指揮下の兵士を動かす許可を取り、数で圧倒し、形勢逆転してテロ部隊を鎮圧。

生き残った四月一日の部下から報告を受けた。

四月一日隊長は敵機撃墜後、消滅。

消滅、その言葉にぶっ倒れそうになった。
だが、部下からは四月一日が死んだなどという雰囲気は伝わってこなかった。

そして、冒頭に戻る。

サクサクと乾いた土の上を歩きながら二歩後ろに報告を続ける部下がいる。
彼もまた、深手を負っていたが、ナノシステムの効果で既に血は止まっているようだ。

「はっ、目撃情報によると、敵機が放った電磁のようなものが隊長に直撃し、空間に亀裂が入り、その亀裂に吸い込まれたそうです。」

「どこに、」

「捜索中ですが、携帯端末の電波が受信できません。
それだけでなく、隊長の体内のマイクロチップも反応していません。
ですが生命維持システムが作動していないところを見ますと、おそらく重症を負っていたり死亡されていたりと言うことはないようです。」

「電波の妨害されている所に監禁でもされていると?」

「いえ、我が国の位置情報確認技術は現在世界最高です。
天津神でも、関わっていない限りありえません。」

「ならばどこにいった。」

「…次元の壁の向こう側。異次元の可能性があります」

「…異世界、ということか。」

有り得ない。
なんて鼻で笑い飛ばせない。
何故ならば、濃霧の上司月夜は確認されているだけでも80年は老いることなく生きつづけ、隣国の将校、初茜は揶揄でも比喩でもなく不死身であるという事実。
これらの『有り得ない』事実が存在しているのならば異次元の存在など大した発見には至らない。

濃霧は憎らしいほど美しい蒼空を見上げて、呟いた。

「なんとしてでも四月一日の居場所を突き止めなさい。
僕が回収に行きます。」

勿論、敵将校は生かしてあるのでしょう?
吐かせなさい

という命令に二つ返事。

「…迷子になったら、そこから動いちゃいけませんよ。
四月一日。」






このサイト始まって以来、初めて月夜の存在感が無いという由々しき状況に陥っている。
今回のりんごちゃんはどうやら男前らしい。
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