「.....は......は.......」
霧と雨の島、レインベール。確かそんな名前で呼ばれていたと思う。そのくらいこの島は年中雨ばかり降っていて、太陽なんかあまり見たことがない。
そんな島で、どうして大火事なんかが起きたのか、
―――いやああああぁぁぁああぁぁ!!!!!―――
――誰かッ 誰かぁぁぁぁああ!!!――
――うぁああああああああおかあさぁぁんっ!!!――
(怖い、こわい、こわい...っ)
叫び声が聞こえる。助けてともがく誰かの声、聞き覚えのある声がバチバチと音を立てる炎の向こうに幾つも消えていった。
もうもうと上る煙を吸ったのどが痛い。こけて小さな崖から落ちて真っ暗闇に放り出されても足が必死に走ろうと震える。足を止めたら死んでしまうと、頭の中でガンガン響く命令がうるさい。
はぁっ、は、は......っ げほっ
むせて土に膝をつくと口を抑えた手に赤黒い何かがこびりついていた。ぎゅっと握りしめて立ち上がろうとするけれど、足に力が入ろうとしない。炎はだんだんと静まっていって、気が付けばぽたぽたと水滴が体を濡らしていった。
雨だ。いつから降ってたんだろうか
痛みを訴える体を無視して木の下で縮こまる。暗闇の中でうっすらと見える森に最早生者の気配はない。生き物の焦げた臭いが鼻を刺して、ばらばらと降る雨が地面の赤を滲ませた。
あぁ、疲れた。
傷に小石が刺さるけど、喉を覆う痛みは治まってはくれないけれど、とにかく体がずしりと重たくなっていった。水の中みたいだとふと思う。
雨が地面をたたく音が遠くに聞こえて、それからふっと、僕は目を閉じた。
ひとり、遺されるくらいなら
今ここで僕を して
−−−−−−−−−
お題はひよこ屋様より。
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