「あれ、徐庶さんだったんですか」

「覚えていたのかい?」

「何されるか分かったもんじゃなかったので・・・」




一通り出会いについて語った徐庶は、落ち着いてきたのか忙しなかった指や手を止め、かすれたため息をついてから凛久から少し離れたところに座った。正直近づきたいのが心中だったがここまで怖がられているのでは話にならない。



「凛久に異様に懐いていたのはそれだけの理由か?」

「まぁ、そう、かな」



戸惑いがちの返答に、陳宮と法正は視線を斜め下にずらした。いつか騙されるぞ。まぁその純真さ、純真さが徐庶殿の良いところなのでは? 酷い言われようである。




「凛久殿の母君はどのような方で?」



陳宮の問に、凛久は少し頭を捻らざるを得なくなった。どのような方、正直返答に困る。凛久にとっては自分が向う見ずに突っ走って迷惑をかけまくっていたというのに我慢強く育ててくれた人という印象を持っていたのだが、刑事の人の言い分では明らかにいろいろな法律に引っかかる子育てのし方だったという。明言はしないが・・・・
まぁ、悪いのは自分だというのに、というのは長年凛久が考えてきたことである。そして凛久の謝り癖の所以。




「あ、う、と・・・・まぁ、その、たまに優しい所もあったし・・・色々いっぱいいっぱいだったんですよ・・・・あのひとも、それを気付かなかった私が悪いんです」

「まるで、まるででぃーぶい夫を持つ嫁の台詞ですなぁ」

「どこで覚えたんですか・・・」




法正殿が守をしている間は社会勉強がてらてれび、てれびなるものを。生活順応力の高い妖怪、いや、尚香ちゃん曰く元神様だったっけ、とずれたことを考えた。



「だから、徐庶さんが心配するようなことなんてないんです・・・・お母さんも、記憶の大半なくしてるそうで、何も覚えてないそうですから」



笑って見せる。腑に落ちない様子だったが小さく頷いた徐庶はもう殺気立ってはいない。とりあえず安心したと肩を撫で下ろした。





ただ一人、眉間にいつもの倍の皺を寄せ、頬杖をついて凛久を見ている法正にはいまだに心臓を鷲掴みにされていたが。










(お、おこってる・・・? なんで・・・?)

(・・・・・・・・・・)




―――――――――――――
短いですが一回切ります


prev back next