baroque-queen

*いたしてるけど、いたしてないよ…
*タイトルに意味はなく…
*10年後つなひば








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「さわだつなよし、あのね…」

雲雀さんはお酒に弱かったんだろうか。

もともと話し言葉だけはおっとりとしていた人だけど、ちょっと呂律があやしい。

(それとも、ワイン飲み慣れてなかったからかな?)

仕事おわりに雲雀さんを誘ったら、意外にも普通に俺の部屋までついて来た。

日本酒しか呑まないってお兄さんから聞いてたから、(しかもほぼ1人酒らしい)「いいワインがあるんですけど」なんてありふれた俺の誘いなんて鼻で笑うかと思ったのに。

「ヒバード?今はもっとたくさん居るよ…何羽居るか数えたことないけど」

「きみ、そんな話がしたくてぼくを招いたの」

話すうちに、雲雀さんの真っ白だった目の下あたりが薄い桃色になって、俺は彼がゆっくり、ゆっくりとアルコールに支配されてゆくのを物珍しく眺めていた。

「雲雀さん、酔ってますよね」

「ん?」

誰が酔ってるって?
弱みを見せない普段なら、そう言って殺気だつとこなのに今の雲雀さんときたら、ネクタイを緩め始めてマッタリとソファに埋もれた。
なんか彼に懐いてる小鳥みたいだ。

「うん。悪くない気分だよ」

もっと頂戴。
グラスを机の向かい側からくいと押されたものの。
ますます酔っ払ったら雲雀さんはどうなるんだろ?

「んー…これ以上はやめたほうがいいかも…」

いつになくご機嫌な雲雀さんに水を差すのは気が引けるけど。

「…なに。僕に逆らうの?」

雲雀さんのグラスを無視して自分のワインを口に含んだら、誘ったのは君でしょ、とかって案の定凄まれた。

「?!」

雲雀さんが突拍子もないことくらいこの10年でわかってはいた。
わかってはいた…。


「な、なに、するんですか!」

それでもいきなりテーブルから身を乗り出して俺のくちびるに吸い付いてこられたらギョッとするのは仕方ない。

ひどくアルコールのにおいがする。

「ちょっと、」

人の制止を聞かないのはいつも通りだ。
雲雀さんは片手で俺のネクタイを引っ張り、もう片手でうなじの髪を引っ張り(ちからの加減ゼロなのは非常に非情に彼らしい)、痛い!痛いって!

ちゅう、ちゅっ、と俺の口腔内のワインを吸って。
それでも雲雀さんはまだやめない。

「こら、もう…雲雀さん…!」

テーブルの上に膝を着くなんて、行儀が悪いと言わんばかりに俺は向かい側の彼をこっちのソファに引きずり込んだ。
いきおい、雲雀さんは俺の膝に跨る形になってしまう。

「えーっと…」

なんだこれ、なんの遊びだよ俺…

「いいね…楽しくなってきたよ」

ご満悦なのは雲雀さんだった。
孤高の人だけあって浮いた噂は聞いたことなかったけど、このひとはもしかして。
もしかして男でも行けるひとなのか?

俺を見下ろして婉然と笑う表情は10年経っても変わらない。
この扇情的な姿は計算なのか、天然なのか分からない。


俺の考察も、視界いっぱいに近付いた淫蕩なその顔に魅入られたら終わりだった。

(無駄に綺麗すぎるこのひとが悪い)

両手で細い腰から、もにゅりと柔らかいお尻を思いっきり揉んだらそれが合図になった。

ベッドに場所をかえる余裕もなくお互いがお互いを貪り、ソファのうえでもつれあって。










…………やってしまった…


俄かに響きだした館内の物音や外の車の音で、朝が来たのを悟る。

目を開けるのが怖い…。

昨夜、一回終わってから雲雀さんをベッドに抱えて行って更に二回ほど楽しんでしまったけど…―――ただで済むはずがない…………

恐らく。いや、きっと。
まぶたを開ければそこに酔いも醒めた雲雀さんが地獄を見るような目で俺を…(だが実際に地獄を見るのは俺であって)

「沢田綱吉」

ほら、―――来た!


「朝ご飯の用意くらい出来ないの」

「んな!!」

俺は奇声を発してベッドから飛び起きた。

「僕は客だろう。招待したからにはもてなしなよ」

夕べのことが嘘のように、ソファで腰掛ける雲雀さんは完璧に身支度を済ませている。

(えっ、なにこの展開なにこれ)

「あのう…」
「なんだい」
「夕べのこともしかして忘れてます、」
「うん?」


「俺と雲雀さん、エッチしましたよ…ね?」


「……………」

しばし、俺たちの間に沈黙が流れた。

「………………」

「しました…よね?」

最悪、忘れてんじゃないかと(だって雲雀さんは超人だから)思ったがそれはないようだ。

雲雀さんの切れ長の眼差しが一瞬だけ戸惑うように揺れたから。

「ねぇ…」

「ハイ」

布団で正座して、雲雀さんを待つ。

「酒の勢い――なんて、僕はありふれた言い訳はしないよ」
「ハイ?」
「つまり、君のほうはどういうつもりだったか知らないけど…僕は僕で責任を取る気だ」
「ハイ…?」

雲雀さんは相変わらず高飛車な物言いで腕を組みながら、あの頃と同じように俺を見下ろしている。

細い眉もしなやかな体つきも端正な顔立ちも、俺の知ってる雲雀さんだ。

「―――えと。責任とかそういうのって、挿れた側が言う台詞じゃないですか…なんで抱かれた雲雀さんがカッコいいこと言っちゃってるんですか…?」

素直に質問したのに結果はひどかった。

「あだァッ!?」

ゴツンと脳天に落ちる雲雀さんのげんこつ。

「下品なこと言わないでくれる」

「ってか酔っ払ってたの雲雀さんだけですよ!俺素面でしたもん!」

「あれだけ呑んだくせに。嘘つき」
「腐ってもイタリア人の血が流れてるんで。雲雀さんよりは酒に強いんです」

ああ、そうだ。
たったひとつ雲雀さんがあの頃と違っているとするなら。

「そう…素面で僕にあんなことしたわけ」

雲雀さんは、もう俺(別名ダメツナ)のものにされてしまったんだ。

「責任云々以前の問題です」

「雲雀さんはもう俺から逃げられないんですよ」


ニッと笑ってみせると、雲雀さんも不敵に微笑んだ。

「元・小動物のクセに生意気だね」


10年も経ったけれど。
俺はずっとこんな日がくると心のどこかで信じていた。







「俺はあなたのことずっと好きなんですから」
「順番がおかしいでしょ」
「痛いっ!ごもっともです!」










終わり



********

オチない

酒の勢いで挑む雲雀さんと、しらふで普通にひばりさんに欲情したつなよし。






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