01
「(しくじった…)」
木々の間をすり抜け、後方から追ってくる黒に身を包んだ男達の気配にぎりっと奥歯を噛み締める。
「(まさか見つかっちまうとはな)」
いくら今が任務ではないからと気を抜いていたからといって、並大抵の人間とは比べものにならない力を持っている男はただの忍ごときにはやられないと確信していた。
…が、その結果のこれである。
「(厄介事はごめん、とは思わねぇがこれから任務があるんでな!)」
アンタの元には戻らねぇぜと口元を歪めて印を結ぶ。
そして指を何かを弾くように動かすとその先にあった木々がいっせいに瓦礫のように積み重なり、男達を完全に飲み込んだ。
「一丁上がり」
さて、雇い主が呼んでいる。
男は瓦礫の山に振り返ることはなく、どこからか聞こえてきた己を呼ぶ声の元へ音もなく走った。
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