おまえのせいだ





旅の途中、オレ達はテントで一夜を過ごすこととなった。

所謂、野宿ってやつ。




深夜、何か違和感を感じて目を覚ませば、案の定、オレの腹の辺りにオレのものではない人の手があった。




普通に考えればそれは隣で寝ているフレンのものであって、起こしてでも振り払ってやりたい所だが、騎士団での仕事っぷりを見せ付けられてはそれをするにはどうも気が引けたので、起こさないようにオレの方にある手をそっと掴んだ。





「…………………」





ここでオレは先程とはまた別の違和感を覚える。




フレンってこんなに手小さかったっけ。




そりゃ餓鬼の頃に身長の勝負は何度もしたが、さすがに手比べはした覚えはない。




とりあえず、フレンに向けていた自分の背を逆にした。








「―――――!」






そこで見たものが信じられなくて数回瞬きした後に目をかっ開いた。


声が出る寸前でそれを抑える。


危ねえ。





「なんで居るんだよ…」





そりゃ手が小さく感じて当然だ。



何故ならオレの隣に居たのはフレンではなく、隣のテントに居るはずの名無しだったのだから。






『おじゃましてます…』





眠りの浅かった名無しは、自分を見て硬直しているオレに気付いたようだ。


オレ達は、一応周りに気を使って小声で会話をする。





「おまえ…便所に行って戻るテントでも間違えたか?」


『間違えてないよ?寝ぼけたリタに蹴飛ばされて寝れないからこっち来ただけ』



「来ただけって…おまえな、こっちは野郎ばっかなんだぞ」


『野郎っていってもユーリにフレン、カロルじゃない』








何も問題ないよ、
と完全に舐められた…いや、安心しきった笑顔に何も言えなくなる。



確かに同じテントにおっさんが居たもんなら無理矢理にでも追い出していたところだが。ありがたいことに今日はおっさんは不在。




けれど、フレンやカロルが大丈夫でもオレが居るだろうが。



こいつの危機感のなさを本当にどうにかして欲しい。






『じゃ、おやすみ』






「おい待て馬鹿寝るな」

『何よ、眠いのに』









「おまえ、オレの隣が一番危険だとか思わねえの?」







『え?ユーリの所が一番安全だと思ったから来たんだけど』








脅したつもりが予想外の返答で嬉しいような悲しいような…なんつーか、



脱力。





「…はあ」





幼馴染みはこうも面倒なのかと激しく実感した。





『え、何そのため息』



「なんでもねえよ。早く寝ろよ」






おやすみと付け加えてオレは名無しとは逆の方向に寝返った。







『ええ…さっきは寝るなって言ったくせに』






その後、小さな声でおやすみ、ユーリ、と聞こえたのでオレは静かに目を閉じた。














「(………寝れねえ)」













次の日、フレンの大絶叫で皆が目覚めたのは言うまでもない。

















(ふああ…)
(ユーリ眠いの?)
(誰かさんのせいでな)


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「男と女の幼馴染」と同時期に作ってたもの。
折角なので更新。
フレンの声で朝目覚めるとか本望。

20120514.haruka

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