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上着を脱がせて、シャツのボタンに手を掛ける。目元に口付けて零れ落ちそうな程に溜まった涙を舐めとると、大袈裟なぐらいに体が震えた。
「ひめさまぁ……」
縋るような弱々しい声で紡がれた言葉にぎょっとしてドアを振り返る。しまった鍵かけ忘れた、と思ってももう遅い。
ベッドに押し倒された半泣きのクリフトに覆い被さるようにして跨って、しかも手はしっかりとシャツのボタンに掛けられている。言い逃れができるような状況ではなかった。

驚きで目を丸くしたアリーナは、数秒の沈黙の後にっこりと笑った。綺麗な弧を描いた口元が、逆に怖い。
「ねえソロ?クリフトに、何してるのかなあ?」
顔は笑っているのに、全身から殺気が出ている。これは、まずい。何か言わなくてはと思っても、喉が引きつって声にならない。
ひっく、とクリフトがしゃくりあげたのを聞いて、アリーナから表情が消えた。
「こんの、変態ッ!!」
地を蹴って躊躇無く拳を繰り出す。どうすることも出来ず、せめて全力でないことを祈るばかりだ。

ずしりと重い拳が脇腹に入った。
どうやら、肋の二、三本は覚悟した方がよさそうである。

スリーステップ泣き落とし





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