ネタ帳 | ナノ


(DQ4‖勇ピサ)

「ピサロって、ああいうの慣れてんの?」
久しぶりの二人部屋。食事も入浴も終わって後は寝るだけ、という状態になったところでそれまで壁を凝視していたソロがくるりと振り向いた。
二人部屋が人数分取れたということは、それだけ一部屋辺りの料金が安いということであり、料金が安いということは、言ってしまえば安普請ということであり。なんというか、早い話が隣の部屋に止まっている若い男女のお盛んな声も聞こえてしまうのである。風呂から上がって部屋で寛ごうとした矢先に壁越しに甲高い悲鳴のような声が聞こえて来たときは賊でも出たのかと思ったが、今思えば賊の方がいくらかマシであった。伸してしまえば終わりなのだから。
げんなりするピサロとは対照的にソロは興味津々のようで、熱心に聞き耳を立てていた。正気を失ったピサロを倒し、世界を救った勇者と言えど、中身はただの17歳の少年である。
別に自分が不利益を被るでもないのだから、と放っておいた末の一言が冒頭のものであることを考えると、自分の選択は間違っていたのかもしれない。「お前とは生きている歳月が違う」とだけ答えると、ソロは納得したのかしていないのか微妙な表情を浮かべた。
ああいった女の声は好きではない。早々に寝てしまおうとベッドに体重をかけると、やたら大きな音が立った。どこもかしこも安普請である。

自分の側にある蝋燭の火を消して横になると、いつの間にかベッドの横に来ていたソロに多い被さられた。
「ピサロって、何歳?」
「…急に何だ」
「女と付き合ったことは?」
「ある」
「……寝たことは?」
「お前とは、生きている歳月が違う。」
ピサロの返答をどう受け取ったのか、弾かれたようにソロが顔を上げる。あからさまなその反応に思わず喉の奥で笑うと、ソロは不機嫌そうに顔をしかめた。

「昔の女に妬きでもしたか」
くつくつと笑いながら問うと、ソロは「悪いかよ」と目を反らした。不貞腐れたように自分のベッドに飛び乗ったソロに合わせるようにギシリ、とスプリングが悲鳴を上げる。乱雑に蝋燭を吹き消したソロに向かって、ピサロは口を開いた。

「安心しろ、男はお前が初めてだ。」

直後に背後から聞こえた派手な咳の音に、ピサロは暗闇の中でふ、と笑みを溢した。

(120504)

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