02
それから数時間後。
「なんやかんや言うて、半分は終わったやん」
日和が残しとった科目は俺の得意な英語。
せやからこいつが解らん言うたとこに少しずつヒントを与えながら進めさせたら、途中で要領を得たらしく、放っといても鉛筆が動くようになった。
そんな日和の邪魔せんよう、ヘッドフォンを耳に当て雑誌を読んでたらいつの間にか時間が経っとって、さすがに疲れたらしい日和が机に突っ伏しとった。
「ま、ここらで休憩すっか」
進み具合を確かめてそう宣言すると、突っ伏した顔をこちらに向けた日和がきらきらと瞳を輝かせた。
「テキトーに飲み物見繕って来るから待っとれ」
「はーい」
間延びした返事に見送られてキッチンへ向かう。
そして冷蔵庫にあったオレンジジュースのペットボトルとグラス、それに日和が持ってきたクリーム善哉を盆に乗せ、さっさと自室に引き返した。
「って、ペットボトルのまんまかいっ!」
テーブルの上に盆を置くと、未だ机に臥したままの日和が鋭くつっこむ。
「文句あんならやらへんで」
「やっ、冗談やって冗談!」
じとっとした視線を投げれば、日和は慌てて盆からペットボトルとグラスを取り上げる。
そんな様子を見ながら、俺はクリーム善哉の蓋を開けた。
中のアイスと餡を一緒に食うと、口ん中に広がる程よい甘味。
あーやっぱ高いだけはあるわ。
そこいらのスーパーに売っとる安物とは違ってかなり美味い。
その味を堪能しながら一口、二口とスプーンを運んどると、不意に視線を感じた。
なんやねん、と顔を上げると、向かいに座っとる日和が物欲しそうな眼差しで、クリーム善哉を見つめとる。
「……そない見つめてもやらへんぞ」
「べ、別にいらへんもんっ!クリーム善哉なんて!」
「誰もコレやなんて言うてへんで?」
「う゛っ……」
ちょっとからこうてやれば、顔を赤くして即座にボロを出す日和。
ほんまおもろ。
「しゃーないな。ほれ」
からかわれてもまだちらほらと俺の手元に向けられる視線。
一応買うてきた本人やし、宿題も頑張っとったから、褒美のつもりでアイスと餡を掬って、日和の前に差し出した。
「え、」
「いらんやったら食うてまうで」
驚いた顔で固まる日和の前からスプーンを遠ざけるフリをすると、食べる食べると反論が返される。
「ほれ」
あーんと開かれた口にアイスと餡を放り込むと。
「美味いやろ?」
「……おん」
日和は茹蛸みたいな顔で小さく頷いた。
宿題とアイスクリーム((い、いい今のって……間接キス……っ!?))
((あー美味かった。やっぱあの店の善哉最高やわ))
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