このマンションにはじめてきたときは部屋に入れてもらえなかった。二度目にきたときは玄関で抱かれた。この間きたときは女を抱いていた。今日は、男を抱いていた。


 いつもどうり、インターフォンへの返答はなかった。鍵はかかっていなかった。こんばんは、と声をかれば嬌声がかえってきた。俺にすりゃいいのに、さめた頭をこまったように笑う牧の顔がよぎった。ほんとうに、お前にできりゃどれだけいいだろうよ。靴を脱いで、リビングにあがると、前に押し倒されたソファのうえに裸の男とあのひとがいた。

「水野さん」

 男は俺に気づくとまっかにしていた頬から色をなくした。そのかわりに、かわいらしい顔に動揺の色をうかべる。

「はやかったね」

 あのひとはなにごともなかったかのように顔をあげて笑ってみせた。緩慢に男のうえから退くと、俺の方に歩いてくる。床にくしゃくしゃになって落ちていた制服を拾いあげて男に投げてやる。それと同時に、生暖かいものが首をなぞった。あのひとが後ろからのしかかってきて、俺の首に顔をうめている。太股のつけ根にあついものがあたる。

「このひとはこういうひとだ」

 それがわからないならやめておいた方がいい。ソファでこちらをじっとみていた男にいう。

「へえ、知り合いだったんだ」

 首をもたげて男をみて、へらりと笑ったそのひとの横顔がみうた。ため息さえもでなかった。
 太股や腹を弄りだしたそのひとの手に身をよじる。それに気づいた男の顔にまた朱がさした。おおきな瞳に涙をいっぱいためた男は制服を乱雑に着ると、依然リビングの入り口に立ったままの俺と背中にのしかかるそのひとの横を走りぬけていった。ドアの閉まる音がして、後輩は部屋からでていった。
 くつくつと耳元で笑う声がうるさい。耳を力いっぱい噛まれた後、足を薙ぎ払われ俺は床に崩れ落ちた。いたいと眉間に寄せた皺を覆いかぶさってきたそのひとになめられた。

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