水野

「なあ、八組の奈央ちゃんってめっちゃかわいいよな」
「ああ、あの子はやばい。かわいいし、しかも」
「巨乳」

 馬鹿笑い。男子高校生というのはどうしてこうも馬鹿な生きものなんだろうか。さっきまで、きのこの山とたけのこの里とどっちがうまいか、いやそれならトッポが最強だろだってあいつ最後までチョコたっぷりなんだぜ、とくだらない話に鼻の穴をおおきくしていたというのに。なにがどう転んで色事に話のないようがシフトしたのかなんて、片肘をついてききながしていた俺にわかるはずもない。

「ところでさ、お前、彼女とどうなの」
「なんだよ、そのふくみ笑い」
「やったの。やっちゃったのか」
「笑ってないで、答えろやー」

 短縮授業で昼前からのながい放課後。クラブ開始までの時間をつぶすべくあつまってきたやつらは、歪に机を寄せあい弁当をつつく。
 いつもつるんでる面子に加え、ほかのクラスのやつらもいて、非常にあつくるしい。設定温度をいじれないようにロックされている、壁に埋まったエアコンのリモコンをうらめしくみつめた。

「そういう、お前はどうなのよ。最近、静かじゃん」
「振られたんだよ、うっせーなバカ。黙っとけ」
「えー、告ったの。まじで」
「きいてねえ。だれにだよ」

 こういう話題は面倒くさい。それに、だいっきらいだ。

「水野はどうなの。なんかないの恋バナ」
「そういや、きいたことねえな」

 ほら、きた。

「ねえよ」

 嘘だろ、いえよ、と野次が飛ぶ。

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