予想に反して、翌日も学校は静かだった。その次の日も。
 まさの様子は、こちらは予想通りいつもと寸分もたがわなかった。これはこれでつらいが、もうこいつあいてにどうしたらいいのかわからなかった。

「なんで俺のことみんなにいわへんかったん」

 三日後、まさはしょうこりもなくまた俺の家にきた。俺はもうどうしたらいいかわからない。いや、まえからわからなかったけれど。まさがこういうやつだって知っていたけれど。
 勉強机のまわる椅子にすわり、クッションにうもれたまさにいう。おしゃべりだいすきなまさがなぜこんなに絶好のネタを放置しているのか。普通ならここで、なやんでくれているのかも、だとかなんなり思ってもいいのだろうが、まあ、それはない。自分のなかで何度目かかの確認をおえて、よし睨んでやろうと顔をあげる。思った以上に近くにあったまさのきれいな顔になさけない声がでた。
 いつのまにかクッションからおきだしていたまさは俺の目の前にたって、とびっきりの笑顔うかべて俺をみおろしていた。またでそうになった悲鳴を飲みくだす。
 まさに似合わないおおきな手が、俺の色をぬいた髪にふれる。

「あれのことばは、俺だけのものにしときたいなあて思て」

 ああ、おまえはほんま残酷なやつや。

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