抑え切れぬ想い(ルサ)*ちょっとシリアス気味


今日は、ボクの部屋にサファイアが遊びに来ていた。



「ルビー…」

まただ。

「何?」
「…好き」
「うん。ボクもサファイアが好きだよ」

このやり取りを今日、何度しただろうか。

「好き」
「うん。ボクもだよ」
「好き」
「サファイア、」
「す「サファイア!!」

ボクは思わず、ガタンッと椅子から立ち上がった。
ボクのベッドに座り窓の外を虚ろに眺めていたサファイアは、少し驚いてこちらを見た。

「ねぇサファイア、さっきからおかしいよ。どうかしたの?」
「…?」
「だから、さっきからぼーっと外眺めながら、ボクのことを好きだ好きだって言ってただろ?」
「うん」
「その…好きって言ってくれるのはとても嬉しいんだけどさ、さっきみたいに言われると、気になってしょうがないんだ。何かあったの?」

ボクがそう言うと、サファイアは窓の方に顔を向け、また外を眺め始めた。

これには、流石にボクもカチンと来た。

「ちょっと、サファイア!!」

サファイアの顔を両手でつかむと、グイッとボクの方を無理矢理向かせる。

「さっきから何なわけ!?黙ってちゃ何も分からないじゃないか!!」

一瞬、視線が合った。
が、サファイアの藍色の瞳は、ボクから逃れようと目を逸らした。
「…んで…?何で目を逸らすのさ??」
怒りで訳が分からなくなりそうだった。
何故サファイアは話をボクの聞かない??
何故目を逸らす??


サファイアの顔をつかんだまま、ボクは考え続けた。


ふと、さっきまで閉じていたサファイアの口が開く。

「…げれんけん…」
「え?」
「あたしは、あんたみたいに色んな物をあげれんけん…。あたしには、言葉で気持ちを表すことしかできんけん…」
「サファイア…」
「だけど、最近不安で仕方なかと!!何も出来んあたしに、あ…あんたが…っ、愛想尽きたんじゃなかっ…て…っ!!」

最後が嗚咽混じりになりながらも、サファイアは言った。

「やけん…っ、何回も言えばあたしの気持ちばきちんとっ…つ…伝わって。ルビーが…ほかの女の子のところに行かんって…ぅっ…うわぁぁぁんっ!!」

顔をくしゃくしゃにしながらサファイアは大声で泣き始めた。
ボクは一瞬驚いたが、両手を彼女の顔から離し、代わりにそっと抱きしめた。
さっきまでの怒りは何処へやら。

サファイアが、こんなコトを考えていたなんて…。「気付いてあげれなくてごめん、サファイア…。キミがそんなコトを考えていたなんて、ボク…」

腕に力を入れて、強く抱きしめた。
尚もボクの腕の中で泣き続けるサファイアが、ふるふると首を横に振りながら、同じ様に強く抱きしめ返す。

「ぅっ…ルビーは…っ…悪くなか…っ!!」

背中に回された手が、ギュッと服を掴む。
爪が、皮膚に食い込んだ。


泣きじゃくるサファイアを抱きしめながら、ボクは言った。


「サファイア。ボクはね、キミが傍に居てくれるだけで十分幸せなんだ。それに、サファイア以外の女性には全く興味が無い」


涙でぐちゃぐちゃになったサファイアの顔が、ボクを見上げた。


「だから、無理に何かをしようとしなくてもいいんだよ」

「でも…っ!!それやったら、こ…公平じゃなかっ!!」

また、サファイアの大きな藍色の瞳に涙が滲む。
ふむ…公平か…。

「じゃあさ、フェアにする為に、何か約束事を決めない?」

「約束事…?」

鼻声で、サファイアが聞き返した。

「そう。要は、ボクに自分の気持ちを、何らかのカタチとして伝えたいって思ってるんだろう?」

「…うん」


「じゃあさ、こんなのはどう??ボクはキミに服を贈る。キミはその服を着て、ボクとデートする」
「な…っ!?」

サファイアは、真っ赤になって口をパクパクしている。

「ボクがサファイアの想いを特に感じるのは、傍に居てくれている時と、ボクが作った服を着てくれている時なんだけどなぁ…」

ボクは、ちょっと拗ねたフリをして、サファイアの様子を窺った。

「ぁと…その…」

涙が引いた代わりに恥ずかしさが込み上げてきたサファイアは、赤い顔のまま「あー…うー…」と言い続けている。

「ダメ…?」


コツンッと、額同士を合わせる。


「や…約束したら…公平になると??ちゃんと…あたしの気持ちば伝わるん??」
「うん。今でも十分伝わってるけれどね」

「ホントに…?」

「勿論」

微笑みながら、ボクは答えた。

「だから、約束してくれる?」

「分かった。約束するったぃ!」

サファイアが、微笑みながら言った。


「ルビー、」

「何?」

不意に、唇を塞がれた。

「いつもありがとうったい。大好き!!」


さっき言われ続けた時にあった違和感は、消えていた。

代わりに、純粋な幸福感がボクを満たす。

「ボクも大好きだよ、サファイア」




そうして今日も、ボク等は愛を囁き合う。











 










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