会いにいくまぼろし(アルバス・セブルス・ポッター)
「誰だ」 「えっ、」 「そこに居る君の事を言っているのだがね。どうせ透明マントでも被っているのだろう」
何故、僕が透明マントを着ていると分かったのだろう。
深夜のひんやりとした廊下を、忍びの地図を片手に透明マントを被って探索中のこと。 廊下に飾ってあった絵の中の男の人が、突然話しかけてきた。 バリトンのその声は、何処か威圧感がある。 仕方なく、僕は透明マントを脱いだ。
「何故、僕が透明マントを被っていると分かったんですか?」 「昔、透明マントを被り夜中の校舎を彷徨いていた者を二人、我輩は見ていたのでね。さて…君の名前は…」
「アルバス・セブルス・ポッターです」
瞬間、彼の目が驚いたように見開いた。 そして、謎の舌打ち。 何か僕、変な事を言ったかな…。
「ポッターめ、要らんことをしおって…」 「あの…??」 「君の父親は、かの有名なハリー・ポッターであろう?」 「父さんを知っているんですか!?」
その男の人は僕の質問には答えずに、ハァ…、とただ大きなため息をついた。
「君の父親の事も、君の祖父の事も知っている」
「学生時代の二人は、どんな人物だったんですか??」
父さんやお爺ちゃんが、このホグワーツでどんな生活をしていたのか、気になって仕方がなかった。
「それは…、我輩が語る事ではない」 「そう、ですか…」 「ただ、」 「?」 「ただ、一つだけ言える事がある」 「何ですか?」
男の人は、僕の目をじっと見つめると、一度つぐんだ唇を再び開いた。
「君の目は、君の祖母、そして君の父親の目にそっくりだ」
あらゆる人から言われた言葉。 けれども、この男の人から言われると、何かが違う気がした。
「さぁ、早く寮に戻りたまえ。我輩は見回りの為に居る。このまま寮監を呼び出す事も可能だが…」 「戻りますっ!!」
寮監に知らされるのは、真っ平御免だ。
「あの、お話して下さってありがとうございました。また貴方とお話し出来たら嬉しいです」
僕は一礼して、透明マントを被った。
「我輩はそうとは限らんがね」 フン、としかめっ面で鼻を鳴らす男の人に、僕は思わず苦笑した。
「お休みなさい」
一言残し、早足でその場を立ち去る。
ちらりと後ろを振り返れば、男の人は絵の中でじっと何かを思い詰めているようだった。
会いにいくまぼろし (後に、その人がセブルス・スネイプだと僕は知る)
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