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3




『おはよ…』

「聞いたぜ劉閻!」

『へ?』



翌日、登校してクラスに入った途端注目を集めた殊夏は、クラスメイト達の気迫に一歩引く。



「お前も一緒にいたんだよな?ダメツナが笹川に告白したんだって!?」

『え!?』



男子生徒の言葉に、なんで知っているんだと殊夏は顔をしかめた。その時殊夏が入った入口とは逆側からツナが登校してきた。



「パンツ男のおでましだー!」

「ヘンターイ」

「電撃告白!」

「持田センパイにきいたぞーっ」

「めいっぱい拒絶されたんだってなー」

「(ばっ、ばれてる〜!!!)」



ツナが窮地に追いやられている中、殊夏は京子のもとへと小走りに駆け寄った。



『京子っ』

「殊夏…」

『な、なんで持田センパイこんなに言いふらして…』

「わかんない。私が来たときはもう…」



迷惑この上ない持田に、怒りを通り越して頭が痛い。



「持田センパイ、昨日京子がうけた侮辱をはらすため勝負するんだって」

「『え?』」



花の言葉に二人は驚愕。



「京子を泣かせた奴はゆるさん≠セって」

「そんな…持田センパイとは委員会が同じだけなんだって」

『第一泣いてないし』

「まーまーそー固いこと言わない」

「男には男の世界があるのよーっ」

「見にいこー」



半ば強引に花達に連れ出され、道場へとやってきた。同じように剣道部の奴らに無理矢理道場へと連れてこられたツナの前には、怒りを露わにした持田の姿があった。



「きやがったな変態ストーカーめ!!おまえのようなこの世のクズは、神が見逃そうがこの持田がゆるさん!!成敗してやる!!!」

「そんなあっ」



顔を青ざめるツナに、持田は竹刀の先を向ける。



「心配するな。貴様のようなドアホでもわかる簡単な勝負だ。貴様は剣道初心者。そこで10分間に一本でもオレからとれば貴様の勝ち!できなければオレの勝ちとする!賞品はもちろん、笹川京子だ!!!」

「しょ、賞品!!?」

『うわ…』

「最低の男ね」



人を賞品扱いした持田に温厚な京子も不愉快そうにムッとした。ドン引きする殊夏の隣で花も眉を寄せて蔑んだ目をしている。そして、大注目の中ツナが道場から姿を消した。



「ダメツナの奴またエスケープかよ」

『私でもこんな理不尽なのエスケープするよ…』



もう顔を上げる気力もない殊夏が投げやりに呟いた時だった。



「いざ!勝負!!!」

「なっ」

『…ツナ君?』



逃走したと思われていたツナが、またパンツ一丁で現れたが、防具も着ずに猛スピードで持田に突進。しかし、防具をつけてもそれは持田が用意したウェイト仕込みのやつだが。



「ギャハハハ裸で向かってくるとは、ブァカの極みだな!!!手かげんするとでも思ったか!!散れ!!カスが!!」



振り上げた竹刀は見事ツナの顔面に命中したが、ツナはそのまま持田に頭突きを食らわした。そのまさかの行動にその場は固まった。



「ふんっ」



倒れた持田の上にドカッと馬乗りになったツナ。



「マウントポジション!?」

「何をする気だ!!?」



先が読めないツナの行動にざわめく一同。するとツナはサッと手をあげた。



「手刀だっ。面を打つ気だ」

「うおおおっ!!」



バシィッという音…ではなく、ベリ、というそぐわない音が響いた。



「ぎゃっ」

「!!?」

『…!?』



しーん、とした空気が流れた。



「100本!!!とった――っ」



ツナの手には持田の髪がごっそりと握られていた。そのせいで持田の前頭は禿げている。そして少しの間の後、体育館内にどっと笑い声が響いた。



「考えたなツナの奴」

「確かに何を一本とるかは言ってなかったもんな」

『ツナ君…』



そうくるのかぁ…と殊夏もおもわず笑った。



「これでどーだぁ!」

「ひぃっ」



審判の生徒にむしり取った髪束を見せるが、脅えて審判は旗をあげなかった。



「ちっくしょ〜っ」



旗があがらなかった事に悔しそうに叫ぶと、両手でツナは持田の髪をブチブチとむしり始めた。



「!こ…こえーっ」

「あれ本当にツナかよ」



周りはあまりの迫力に引いたが。しばらくすると持田の頭には一本も髪の毛は残っちゃいなかった。



「全部本」

「赤!」



脅えきって顔面蒼白な審判があげたのはツナの旗。



「旗が…あがった…」



唖然と生徒達がしている中、険しい顔立ちだった表情からいつも通りのツナに戻った。



「スゲェ!!勝ちやがった!」



ワッと歓声をあげながら皆はツナへと駆け寄る。



「めちゃくちゃだけどいかしてたぜっ」

「なんて奴だ」

「なんかスカッとしちゃった」

「見直したぜ」



興奮気味にクラスの男子達に囲まれているツナは呆然としていた。



「(オレがやったの…?オレでも死ぬ気になればセンパイを倒せるんだ…)」



そしてツナは自分の周りを見渡した。



「(信じられない。オレがみんなの真ん中にいる)」

「ツナ君」



背後からの京子の声に、昨日の事を言われると身構えたツナ。



「昨日はこわくなって逃げ出してゴメンね…」

「えっ、いや……えと、あの!」



恥ずかしそうに京子が言うと、怒られると思っていたツナは咄嗟に言葉が出なかった。



「あたし、よく友達に笑う場所わかってないって言われるの」

「(冗談だと思われてるー!)」

「ツナ君ってすごいんだね。ただ者じゃないって感じ!」



満面の笑みで京子は言った。



「!(これってもしかしてあいつのおかげ…?)」



ツナはめちゃくちゃな家庭教師の姿を思い出した。



「(あいつ言うこともやることもムチャクチャだけど、あいつがいなかったらこんなことありえない)」



ちょうどその頃、リボーンは満足げに笑って並盛中を後にしていた。







『今日のツナ君スゴかったな〜』



帰宅し、洗濯物を片付けながら今日のことを思い出す殊夏。



『話しかけたかったけど、あんな人だかりじゃな…』



それに、京子と話しているのを邪魔するのもアレだし…。

畳み終えた洗濯物を抱え込んだとき、ドガンという爆発音がした。



『な、なに?!』



慌ててベランダへと飛び出した殊夏は隣の沢田家を見て驚いた。



『なんか壊れてる!!なんで!?』



えぇ…と殊夏が引きつった顔でツナの家を見ていると、頭にぽすん、と重みを感じた。ん?と殊夏は視線を向けてさらに驚いた。



『リ、リボーンくん?!』

「ちゃおっス」

『…寝間着姿もかわいーね』

「まぁな」



パラシュートを畳ながらリボーンが肩へと移動したところでハッとした。



『そーじゃなくて!なんでツナ君の家爆発して…』

「オレの眠りを妨げたからな」

『(えぇーーーー!?)』



リボーンの発言にマフィア設定が本当なんじゃないかと思えてきた殊夏は顔をひきつらせた。



「リボーン!!」

『!あ…ツナ君』



門からの声にそちらを見ると、そこにはボロボロのツナがいた。



「!劉閻さんっ」



殊夏の姿を発見したツナは最悪なところを見られたと顔を青ざめた。



「なんだツナ。家爆破させといて逃げてきたのか」

「もとはといえばお前が変なトラップ仕掛けるからだろ!!」



そ、そんなの仕掛けてたんだ…。



「ごめん劉閻さん!こいつが迷惑かけて・・・」

『ううん!全然迷惑なんか…寧ろ、リボーンくんかわいくて大好きだし、来てくれて嬉しいよ』

「(こいつ劉閻さんにまで気に入られてる!!しかもなんだその笑顔はっ)」



殊夏の肩に乗っているリボーンは勝ち誇ったように笑みを浮かべていた。



『…ツナ君、今日の事ごめんね』

「え?」

『あんな対決しちゃって…』



本当に申し訳なさそうに言う殊夏にツナは否定するように慌てて両手を振る。



「そ、そんなこと気にしてないから!ぜんっぜん気にしてないから!」

『そう?…よかった』



ほっとしたようにはにかんだ笑顔をした殊夏にツナは頬を赤らめる。



「なにボケてやがんだダメツナ」

「ガッ!!」



殊夏の肩からツナへと跳び蹴りを食らわしたリボーン。威力はスゴかったようで、塀へと激突したツナはそのまま気絶してしまった。



「じゃ、そろそろママンが帰ってくるからオレたちは帰るな」

『つ、ツナ君大丈夫?』

「これくらいなんともねぇ。じゃあな殊夏」

『あ、待って』



去ろうとしたリボーンを慌てて引き止める。



『ツナ君にありがとう≠チて伝えてて?』

「いいぞ」



ニッと笑うとリボーンはツナを引きずり始めた。



『(え、そんな風に運んじゃうの!?)』

「ただし、オレが覚えてたらだけどな」

『覚えててくれないの!?』



まさかのことに殊夏はガーンとショックをうけた。しかしすぐに去りゆく二つの影に微笑みかけ、小さくひらひらと手を振った。



『また明日ね、ツナ君』












「残念だったなツナ」



ズルズルとツナを引きずりながら、リボーンはいまだに気絶しているツナに話しかける。



「せっかく死ぬ気弾で告白したっていうのに、あいつは気づけなかったぞ」



気絶しているツナからは何の反応もないが、かまわずリボーンは話す。



「お前があの時、しっかりと指を指していたのは……」



そこまで言うと、リボーンは立ち止まり後ろを振り返った。その先には、リボーンが家へと帰るまでいるつもりであろう殊夏が、ひらひらと手を振っていた。



「…ま、お前自身も解っちゃいねーんだ。どうなるかはこれからだな、ツナ」



リボーンは手を振り返すかわりに、ズガンッと一発空に銃を撃った。










『…あれ?あの銃本物?』



リボーンの撃った銃に、背中に冷や汗がつたったのを殊夏は感じた。



next.

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