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「殊夏、いったよ!」

『うんっ』



グラウンドにて体育の授業の一貫、バレーをしていた劉閻殊夏。向かってきたボールめがけ飛躍すると、相手コートへとアタックする。



「ぶっ!」

『ああっ!!』



が、それは友人、黒川花の顔面へと見事に直撃してしまった。まぁ、ポイントは加算され勝ったは勝ったのだが。







『ホントにごめんね花ちゃん!!』

「ったく。相変わらずコントロールヘタなんだから」

『ん…球技はあんまり…』



湿布を貼る花に平謝りする殊夏は苦笑い。



「でも殊夏、バトンは上手だよね。コントロールだって百発百中で、すごいよ!」



花の隣から無邪気な笑顔で言ったのは笹川京子。



『あ、ありがと』

「唯一の取り柄だからね」



京子の言葉にえへへ、と照れ笑いしていた殊夏だったが、花の言葉にずーんと肩を落とした。



「まぁでも、ダメツナよりはマシだろーね」

「ツナ君?」

『つ、ツナ君はダメツナなんかじゃないよっ』



花の言葉を必死に否定する殊夏。ダメツナとは、殊夏達と同じクラスの沢田綱吉のこと。勉強もスポーツも笑えるほどダメダメなので、周りのほとんどからそう呼ばれていた。



「そうだよ。ツナ君だっていいところ沢山あるよ」

『だよね京子!』



京子も弁解すると、仲間ができたと言わんばかりに嬉しそうに殊夏は笑った。



「…京子はともかく、あんたはそう思うだろうね」



ニヤニヤと笑いながら花が言えば、うっと顔をうっすら赤くした殊夏。



「殊夏、ツナ君が好きだもんね」

『そんなふつうに言わないでよぉ…』



さらっとにこやかに言った京子。もちろん悪気があったわけではないし、と言うかそれが恋愛の好きかどうか分かってるかも怪しい。



「まったく、あんなののどこがいーのやら」

『あんなのとか言わないで…ん…?』



ふと視線を感じた殊夏が体育館の窓を見ると、一人体育館掃除をさせられていたツナがこちらを見ており目があった。目があうとツナは焦ったようにあたふたとし始める。



『…?』



どうしたのだろうと見ていたが、やがてああ、と納得すると花の隣にいる京子を見た。



『(ツナ君…京子が好きだからなぁ…)』



常日頃京子達と一緒にいる殊夏は、ツナがしょっちゅう京子を見ていたのを気づいていた。



『(京子かわいーからなぁ…いい子だし)』



自分で言ってて悲しくなってきた殊夏は気持ちを切り替えるとまたツナの方を見た。するとツナはえ?と固まった。



『(おつかれさま)』



口だけを動かし手を振った殊夏を見て、通じたのか驚いたように目を見開いて、ぎこちなく頷いていた。



「おまたせ京子」

「持田センパイ」



そこへ殊夏と京子と同じ委員会のセンパイ、持田がやってきた。



「それじゃ、私は行くね。委員会頑張って」

「うん、ありがとう」

『また明日ね』



関係のない花はさっさと帰ってしまった。



「待たせて悪かったな。委員会へ行こう」

「は、はい」



当然のように京子の肩を抱いて歩き出す持田に二人は苦笑いだが持田は気にしておらず。そして委員会も終わり、帰り支度を始めた殊夏。



「殊夏帰ろ」

『うん』



教室を出ようとした二人だったが、背後から名前を呼ばれ立ち止まった。振り返れば、そこには持田の姿が。



「帰るのか?ならば俺も一緒に帰ろう」



当たり前のようについて来る持田に、二人はバレないように小さくため息を吐いた。

帰り道では延々と持田の剣道の武勇伝を聞かされていた京子と殊夏。流石に疲れてきたのか、相槌も曖昧になってきていた。



「で、その時俺は相手の弱点を見つけ…」

「はぁ…ごめんね、殊夏」

『気にしないで』



あまり人嫌いをしない京子だが、持田は苦手の部類に入るようで、その心中察して殊夏も同情するしかない。ぼんやりと話を右から左へ聞きつつ地面に出来た影を眺めていたが、不自然な影が出来ているのに気付き空を見上げた殊夏がギョッとした次の瞬間ーーーー。



「『!』」

「おっ、偶然発見!!」



空から降ってきた、何故かパンツ一丁のツナが持田の上に豪快に着地した。驚き京子の後ろに咄嗟に隠れて顔だけ出した殊夏は、ツナの状況が全くわからず目を白黒させた。



「おいっ!!オレとつき合ってください!」



何が何だか分からないままに突然叫んだツナへと咄嗟に出た行動は一つしかなかった。



「『キャアアアア!!』」



あまりの衝撃に二人は一目散に逃げ、住宅街まで来たときには二人は肩で息をしながら立ち止まった。



『はぁっ…な、なんだったんだろう…』

「ツナ君、冗談とかするんだね。笑っとけばよかった」

『(ええ!?違うと思うけど!?)』



悪いことしちゃった、と言っている京子に内心つっこむ殊夏。アレが冗談だとして、あまりにも体を張った冗談だ。



「明日謝んなきゃ!ね、殊夏」

『…うん、そーだね』



真面目にそう考えている京子に、何も言えず殊夏は渇いた声で笑った。



「あ、そーいえばね。さっきハガキを出しに行った時、かわいー男の子に会ったの!」

『かわいー男の子?』



にこにこと笑いながら言う京子に首を傾げる。



「うんっ。あのね、黒いスーツを着てて、頭にカメレオン乗っけてた」

『す、スーツはともかく、頭にカメレオン?』



いやスーツもどうかと思うが…一体どんな子なんだ?と謎めいていく殊夏の中の男の子像。



「それじゃ、また明日ね」

『バイバイ』



別れ道で京子と別れると家路を真っ直ぐ帰っていた殊夏だが、道の真ん中に男の子がいることに気が付き、ピタリと足を止めた。



「ちゃおっス」

『っ!!きゃーっかわいー!!』



ガバッと男の子の前にしゃがみ込む。勘極まったように叫びつつ頬をふにゃんと緩ませる。



『ぼく、どーしてカメレオン頭に乗っけてるの?』

「オレの相棒だからな」

『へぇー。かわいー相棒だねっ』



かわいーもの好きの殊夏はメロメロ状態だった。が、ふと気づく。何処かでカメレオンの単語を聞かなかったか?と。しかしなんだかどーでも良くなって考えるのをやめた。



『ぼく、お名前はなんていうの?』

「リボーンだ」

『リボーンくんかぁ。私は劉閻殊夏っていうの』

「知ってるぞ。ツナのクラスメートだろ」

『あれ?ツナ君の知り合い?もしかして弟かな』

「オレはツナの家庭教師だ」

『…へ?』



ぴしりと笑顔が固まる。



「つっても本当の仕事は、ツナをマフィアのボスにすることだがな」

『…へ、へぇー』



どう反応すればいーんだろう。最近の遊びはマニアックなものなのだろうか。



『えっと…あ、私ツナ君の家とお隣なの。一緒に帰らない?』

「いいぞ」



結局反応に困った殊夏は話を流してリボーンと一緒に帰ることにした。内心めちゃくちゃ喜んではいたが。



『へぇ、リボーンくんってイタリアにいたんだ。いーな、私も行ってみたい』

「イタリアではよく銃撃戦があるからな。日本(ココ)と違って腕が鈍らなくてすむぞ」

『ヘ、へぇ、便利だねぇ』



なんだか嘘なのか本当なのかわからなくなってきていた。テンションが下がる、と言うか緊張感が増した気がするのは気のせいか。何度か返答に困りながらもリボーンと会話をしているとあっという間に家へとついた。



『それじゃリボーンくん、今度は遊びにおいでね』

「ちゃおちゃお。お前もな」



あれ?ちっちゃな子にお前呼ばわりされた…。少しショック受けつつ、ふと気づく。リボーンの家に遊びに行くということはツナの家に遊びに行くことになる。



『…私、リボーンくんの家に行けるかな』



その日殊夏もうツナのことを忘れていた。




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