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6


探し当てた名前を友人帳から切り離し、雪野は夏目へと手渡した。

ーーーーぱんっ.



「「スミエ」」



気絶していた斑が目を覚ました。



「君へ返そう、受けてくれ」



吐き出した息と共に、夏目が咥えた紙から名前が引き離され、スミエの額へと吸い込まれた。



「ふ…ふふ」

「ーーーー…!」



無事に名前を返したと思ったが、何かおかしい。



「ふふ。これでもう恐れるものはない。お前はレイコと違って優しいね」

「!夏目…」

「せめて苦しまないようひと口で食ってやろう」

「!」



ーーーーガッ.



「ぎゃっ」



油断した夏目へと掴みかかったスミエだったが弾き飛ばされた。



「名取さん!」



夏目とスミエを引き離したのは、杖を持った名取だった。



「ちっ」



ーーーーカッ.



「!」



スミエと夏目達の間に入った斑は眩い光を放ちスミエを吹き飛ばす。



「うう……ち、逃げたか」



スミエが辺りを見渡した時、夏目達はその場から姿を消していた。



「まあいい、せっかくのご馳走だ。この館からは逃さんぞ」



その頃の夏目達は、名取を先頭に館内を走っていた。



「こっちだよ。このつきあたりの部屋へ」

「(ーーーーしまった…だまされた。妖の言葉を信じてしまった)」



走りながら夏目は自分の軽率だった行いに後悔する。妖のことはわかってきているつもりだった。なのに、自分のせいで周りの人々が危険にさらされるかもしれない。

ーーーーどうしておれは。いつの間にーーーー…。



「ーーーーおい、名取の小僧、そろそろ話せ。何を企んでいる」



駆けながら斑は前を走る名取を横目に見上げる。



「あまりなめるなよ」

「ーーーー…企む…?」



詳しく聞く前に、名取に案内された部屋に辿り着いた。テーブルも椅子も取り払われた部屋の床にはいっぱいに紙が敷かれ、墨で何か陣が描かれてある。



「…うわ、何ですこの部屋…」

「風呂の後準備しておいたんだ」



壁にはしめ縄、柱には北口と書かれた紙など、ただならぬ部屋の装いに夏目と雪野は戸惑い目を丸くする。



「ーーーーこの旅館の裏山に周りに害を成す妖がいて、最近強力な退治人が封印しかけたのだけれど、この旅館に逃げこまれてしまったらしいんだ。だから私はここへ来た」

「えっ。じゃあ!」

「妖退治が嫌いな夏目を嘘で誘ったんだな。二人に妖封じのしあげの手伝いをさせるために。夏目が来れば雪野も来るからな」

『…本当なんですか?』



怒るわけでもなく、確認するように雪野は尋ねた。



「ーーーーそうだね、ごめん。人をだますのがクセになってた。あんなに楽しんでくれるんなら、ちゃんと話してわかってもらえばよかった。ごめんな、夏目、雪野ちゃん」



ごめん。と、名取はもう一度謝罪する。



「ーーーーいいえ。おれだって、名取さんに話せていないこともあるんです」

「ーーーー…そのようだね」

『ーーーー手伝います。手伝いが必要なんですよね?』

「おれも。今回のことは、自分が甘かったんです」



そう告げた二人を名取は見つめた。



「ありがとう」



それから、部屋全体の結界で妖を封じるので、斑や柊は部屋から強制退室。それに対する斑はつまらん。と不服そうだった。




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