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ニャンコ先生登場!







真夏…セミの声が鳴り響く季節に、二人と一匹は出逢った。



『ハァッ…ハッ…』



森の中を少女が走っていた。ただ走っているのではなく、何かに追われているのか時折背後を気にしている。



『…あっ!』



また背後を振り返った時、少女は浮遊感に襲われたかと思うと転がるように落下した。少女が足を踏み出した先に道はなかったのだ。



『いっ…!!』



崖じゃなかっただけマシだったが、塗装されたコンクリートに勢い良く倒れ込み悶絶する。



「なんだっ!?…って鈴木?」



地面に激突した少女、鈴木雪野は声にそちらを見上げる。そこにいたのは同じ学校に通う北本篤史と西村悟だった。

二人は突然森から転がり落ちてきた雪野に驚いている。



「びっくりした〜」

「夏目に続いてお前まで出てくるなんてな」

『あっ…驚かせてごめん…貴志君どっち行ったか知ってる?』



痛みを堪え忙しなく立ち上がると、自分が出てきた森の方をちらちらと見ながら雪野は二人に尋ねる。



「夏目?だったら神社の方に行ったと…」

『ありがとう!』

「あ、オイ!……行っちゃったよ」



息を整えるヒマもなく雪野は北本が指差した方へとまた走り出した。西村が呼びかけた時には、雪野はすでに陽炎の向こうだった。



「夏目も鈴木も何してんだ?」

「さあ…?鬼ごっこでもしてんじゃないか?」



雪野の走り去る後ろ姿を見送りながら、二人は首を傾げた。

二人と別れた雪野は、ここから一番近い藪を抜けた先にある神社を目指していた。



『ッ…もっ、ヤダ…』



走りながら後ろを振り返った雪野の視線の先には、脇目も振らず追いかけてくる一人の女性の姿があった。



『ッ…』



ぞくりと季節に関わらず寒気がし、またすぐに前を向く。



『ハ、ァ…しつこっ…』



一見女性に見えるそいつは耳が長く垂れ気味で、走ってはおらず軽く浮いて滑るように雪野を追いかけていた。そいつは、普通の人間には見えない妖の一種だった。

幼い頃から##NAME1##には、妖怪やそういった類のものが見えていた。



『あっ…!!』



疲れきっていた雪野は先に見えた光景に目を見開いた。一人の少年が、雪野を追いかけていたのとは別の妖怪に木に抑えつけられていた。



『貴志君!!』

「!雪野ッ!」



その少年は雪野と同じく、幼い頃から妖怪が見えていた夏目貴志。



「雪野後ろ!!」

『きゃあっ!?』



夏目のもとへと走り寄ろうとした雪野だったが、背後から自分を追っていた妖怪に捕まってしまった。



「やっと捕まえたよミヨ」

『(!?)や、離してっ…』

《かえせ、かえせ》

「待て」



夏目を捕まえていた妖怪がしきりにかえせと言っていると、雪野を捕まえていた妖怪が待ったをかけた。



「まぁ待て。まずは、名前が呼べないよう舌を抜いてしまおう」



その言葉に妖怪は腕の力を強めて夏目を引き寄せ舌を抜こうとした。が。



「痛え」



と夏目に顔面を容赦なく蹴られてしまった呆気にとられている妖怪の隙をついて雪野も肘鉄をくらわして抜け出す。



「雪野走るぞ!」

『うんっ…』



雪野の手を夏目は引っ張るとまた走り出した。


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