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昼休み。自販機で飲み物を買っていた雪野は、多軌の姿を見つけた。
『多軌さん』
後ろから声をかけると、驚いたように振り向いた多軌はすぐに表情を緩ませた。
「鈴木さん」
『学校で会うの初めてだね』
二人並んで、廊下を歩く。
「血筋のせいか、どうも私の描いた陣の内は妖力が高まってしまうらしくて、妖を見る素質のある人にも時々陣の内の妖が見えてしまうみたい」
ちょびひげ妖を見た老婆がその例なのだろう。
「だからちらほら出る目撃情報をたどるんだけど、とても手懸りにはならなくて。でも小さな妖が「夏目様」や「鈴木様」なら妖が見えるぞって教えてくれた。だから知っていたの」
実は、多軌は夏目や雪野を数回廊下ですれ違って見かけていると言う。
「声をかけてみたかったけれど、嘘か本当かわからないことだし、こんな…ーーーーこんなことに巻きこむのはーーーー…」
遠くを睨むように見ていた多軌は、ふわりと可愛らしく微笑み振り向いた。
「ーーーーふふ。こんなに人と話したのは久しぶりーーーーごめんね。ごめん…」
ぎゅ、と。雪野は多軌の手を握った。
『ーーーー絶対見つけよう』
微笑む雪野に、目を丸くさせていた多軌は笑顔を向けた。
「ええ」
こうして、祟りをとくため多軌との妖探しがはじまった。とは言ったものの…。
「…確かにコワイが…」
雪野がもらってきた多軌自作の、妖似顔絵を夏目は難しそうに眺める。
「参考になりそうなのは額の傷くらいか」
ムンクのような顔に幽霊のようなフォルムの体。長髪に額に横一文字の傷という似顔絵だった。
「タキは河原か」
「ああ、おれ達はこの先の池を調べるぞ」
『はあ…あと一月しかない』
項垂れる雪野や夏目と違いルンルンな斑。
「あと一月で友人帳が私のものに〜」
「短い足ではしゃぐと危ないぞ先生」
「ぎゃ」
池の飛び石をぴょんぴょんと歩いていた斑が次の瞬間池に落ちた。
「『プッ』」
間抜けな姿に思わず笑う。
『あーあ。言わんこっちゃない』
「あはは。大丈夫か先生ーーーー…」
ざわりと。胸騒ぎのような何かの気配を背中に感じた。
ーーーーぐいっ.
「『!!』」
振り向こうかと頭が働きかけた時、背後から回された大きな手に口を覆われ茂みへと、二人は引きずり込まれた。
「…む?夏目?雪野?」
淵へと捕まった斑は、異変に気付いた。
「!どこいった!?」
二人の姿はどこにもない。
「夏目!?雪野!?」
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