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不老の想い







『おはようござ…うわ!お菓子たくさん』

「塔子さんが買ってくれたんだ」

「ふふ。せっかくの合宿だからと思ってv」



大きな袋に大量のお菓子だった。



「くっ、最後のポテチが入らない…」



ウキウキと朝食の支度をする塔子の背中を盗み見て、夏目はよしと決意した。



「ここで片付けてくか!!」

「お前は気の遣い方が阿呆だな」



入らない分のポテチを味わうより片付けるメインで勢いよく食べる。



「見てないで雪野と先生も食ってくれ」

「ええい手間のかかる」

『朝からポテチ…』



ぐちぐち言いながらも雪野も斑もポテチの片付けを手伝う。



「む?合宿…?どこか行くのか」

「昨日話したぞ。友達と民宿に行ってくるから留守番頼むって。一泊二日の宿題合宿だ」



出かける夏目を見送り、部屋に戻った雪野はおや?と目を瞬かせる。



『先生ー?』



姿の見えない斑に、出かけたのか。と推測して夜。



「雪野ちゃーん、ご飯にしましょう」

『はーい』



二階からおりてダイニングへと雪野は出る。



「あら、今日はニャンコちゃんいないのね」

『え?』



探してみると、確かに斑の姿はない。



「もしかしたら貴志くんについて行ったのかもしれないわね。ニャンコちゃん、貴志くんが大好きだから」

『え!!…あ、ああ、そうかもしれませんね』



大好き。という言葉に笑いそうになりながらも雪野は頷き、微妙に口元がゆがんでいる。



『(そうか。先生のことだからついて行ったんだな…)』



なるほどと納得して、さぞ驚いただろう夏目を思い浮かべ雪野は軽く笑った。



『ーーーー人魚!?』



翌日。塔子に頼まれた買い物帰りで駅にいた夏目達。合宿先で夏目は人魚の妖に会った話を雪野にした。



「なんか反応がイキイキしてるな…」

『だって人魚って女の子の憧れというか…妖だけど』

「絵本の人魚と違って攻撃的というか、ケンカ腰だったぞ」

『え』

「人魚は極度に人間嫌いなのさ。血肉目当てに多くが狩られたから生き残りが少ないんだ」

「ーーーー…へぇ」



リードを付けられた斑はとてとてと歩きながら夏目を見上げた。



「惜しいことしたな夏目。せっかくの人魚を食うチャンスだったのに」

「はは。そんなことしたら先生、一生友人帳を手に入れられなくなっちゃうぞ」



人魚の血肉を食べた人間は不老不死になるという人魚の伝説。夏目や雪野の死後、斑は友人帳を譲り受ける約束だ。



「……」

「…あ」



笑った夏目に斑は何も言わず目だけを向けていた。その視線に気づかなかった夏目は、人混みの向こうに目を向けた。



『貴志君?』



歩き出した夏目に雪野は不思議そうにする。小走りに夏目が向かったのは、見覚えのある後ろ姿を見かけたから。



「(…えっと…)千津さん…?」

「きゃあ!?」

「!?うわぁすみませんっ!?」



ポン。と肩を軽く叩いて声をかけた夏目に、千津と呼ばれた女性は大袈裟に肩をはねさせ驚いた。その驚きっぷりに夏目までビビってしまい、雪野はそんな様子を見て内心思った。



『(なにやってんだろう)』





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