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「無様だな…嘆くなら、抗え!悔やむなら、進め!」

『不幸だと嘆いているだけのアンタは、ただの豚以下よ!』





未来を捨て

夢を無くし

絶望に汚されながらも

過去を振り払い

現実に抗い

決して気高さを失わない。





「それですよ坊ちゃん、お嬢様」



時計台を見上げながらセバスチャンは笑みを浮かべる。



「私が喰らいたい魂は」



ーーーーカタカタカタカタ…ッ.



「豚…豚、豚…!?」



カメラを持つ手を震わせていたマーガレットはダリアを睨みつける。



「今豚って言ったわねぇぇぇ!!!」



その時、時計台が午前0時を報せる鐘を鳴らした。



「さて、急がなくては」

「ン?」



それと同時に手袋をはめなおすセバスチャンをグレルは横目にみる。



「あのご婦人は、0時5分に焼身自殺でしたね」

「ちょっとォどうするつもり?」

「「あの女を捕らえろ」。坊ちゃんにそう命じられましたので」



気合いを入れるセバスチャンからグレルは時計台に顔を向ける。



「もう時間がないってば」

「ファントムハイヴ家の執事たる者、これ位出来なくてどうします?」



はあ?と見ていたグレルに胸に手を当てていた手を差し出すセバスチャン。



「では行きましょうか?グレルさん」

「え!?なんでアタシ?」



驚きながらも嬉しそうなグレルからセバスチャンは時計台に顔を向ける。



「無愛想な坊ちゃんとお嬢様がモデルでは、撮影する方も物足りないでしょう。グレルさんが被写体なら、さぞ素晴らしい写真が撮れると思ったのですが」



その言葉に、グレルは空気をパステル色に染めてテンションを上げた。



「見せてあげちゃう。アタシのセクシーショット!!!」



俄然やる気のグレルは、時計台へと走り出した。



「私を豚って言った奴は、ガキも旦那も丸焼きよー!」



物陰に隠れていた二人は顔を見合わせる。



「なんだ、旦那にも言われたのか」

『本当の事じゃない』



次の瞬間また爆発が。



「『っ!』」



爆風に、階段で起こった爆発の時に入った切れ目から眼帯とチョーカーが切れて契約印が丸見えに。



「いつまで遊んでいるつもりだ…」

『子供は気が短いと何度も言ったはずよ』

「『来い!セバスチャン!!』」













「ーーーー御意、ご主人様」














「何を言ってるのかしら?」



馬鹿にしたように言っていたマーガレットは、聞こえてきた音にん?と時計台のはじまで行き下を見下ろした。



「…!」



時計台の壁を、垂直にも関わらず昇ってくる二人の男が見えた。それはセバスチャンとグレル。



「な、何よアレ!?」

「ウチの執事と」

「!」

『真っ赤な変人よ』



笑みを浮かべながら二人はマーガレットと離れた場所で隣に並ぶ。



「こーれーでーも…死神DEAHT!」



言ってポーズをキメたグレル。



「邪魔しないで!!」



グレルに向かって粉をふりかけたマーガレットはシャッターをきったのだが、グレルは燃えることなく昇ってくる。



「な、なんで!?なんで燃えないの!?」



意地になって何度もシャッターをきるが、やはり燃えることはない。その後ろからセバスチャンがさっさと登る。



『アイツ、あの死神を手駒にしてるわね』

「死神を囮にするとは…」



見下ろしていた二人は嘲るように笑った。



「『悪魔め…』」




_210/212
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