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「おっと!」

「!」



炎の中を走っていく二人を追おうとしていたセバスチャンの前に、グレルは阻むかのように降り立つ。



「セバスちゃん!アタシを抱きたいのなら、この炎を越えて「失礼します」



無情にもセバスチャンはグレルの顔面を踏みつけて越えていった。



「ああ〜〜〜…待ってセバスちゃーーーーん!!」



街は、炎に包まれつつあった。



「風上に避難させろ!急げ!」

「はっ!!」



市民を避難誘導していたランドルは、燃えるロンドンを見上げた。



「つくづく燃える町だな…」



誰に言うでもなくランドルは呟き、また避難誘導を始めるのだった。



「見つけましたよ」



また一人燃やしていた女を見つけたセバスチャンは女を追って再び路地裏に来たのだが、その足が止まった。



「あ〜ら、逃げられちゃったの?」



女の姿がない路地裏を見ながらグレルが言えば、セバスチャンは笑いながらグレルを見る。



「グレルさん、お仕事はよろしいのですか?」

「ンフ。貴方を追いかける愛の狩人…それがアタシのお仕事ヨ∨」



「それに」とグレルは目を細めた。



「狩るべき魂は一つしかないしね」

「一つ!?」



グレルの言葉にセバスチャンはどういうことかと訝しげに驚く。そんなセバスチャンにグレルは本を開いて朗読。



「マーガレット・ターナー。午前0時5分、無差別大量殺人を犯した後、自らの焼身自殺…魂の台帳によれば、アタシの回収する予定の魂はこれ一個だけ」

「この炎で亡くなった方々の分は?」

「あの女に焼かれた人間はねぇ、魂ごと焼き尽くされてしまうのよ」



その言葉に、セバスチャンは目を細めどこかを睨んでいた。

その頃、マーガレットを追いかけていたシエルとダリアは時計台広場まで来ていた。



「どこに行った…」

『!シエル』



頭上からキラキラとした粉が降ってきた。見上げた先には、時計台から粉が降る光景が。



『このままじゃ風にのって、粉は街に行き渡るわね』

「全部燃やすつもりか」



二人はうなずき会うと時計台を登り始めた。途中爆発が起こってしまったが、特にケガすることなく、二人は急いで階段を上がり始めた。



「幸せにな〜れ、幸せにな〜れ」



歌うように言いながら、マーガレットは全てのマグネシウムを時計台から外へと降り注いでいた。

ーーーーカツンッ.



「ん?」

「そこまでだ」



ジャキ、と二人はマーガレットに銃口を向ける。



「アンタ達も邪魔しに来たの!私の幸せ!」



マーガレットはタルを床に置きカメラを手にする。



「これだけのことをして、幸せになれるとでも思っているのか」

「なれるわ!あの人は、そう言ってくれたんだもの」

「?」

『あの人…?』



え?と二人が不思議そうにした時、マーガレットがカメラのシャッターをきった。



「坊ちゃん!お嬢様!」



その様子を追いついたセバスチャンとグレルが地上から見つけた。



「あの豚、いつの間にあんな所に」



確かに…明らかに体型からしても、あのマーガレットがセバスチャンが追い詰めた場所から時計台まで来るには速すぎる。

ーーーードガァンッ.



「『くっ!』」



間一髪で二人は爆発を避けていた。



「ガキなんかには分からないわよ。好きでもない男と結婚させられた、私の不幸は!」



近づいてくるマーガレットから距離をとるべく下がって行っていた二人は背に壁が当たったことに足を止める。



「私は素敵な男と、燃えるような恋がしたいの…それを邪魔する奴はみーんな燃やしてやるわ!!」



聞いていた二人は顔を見合わせると、我慢しきれなかったかのようにフッ、と笑った。



「『アハハハハハ!』」

「!?」



おかしそうに笑い出した二人をマーガレットは目を丸くして見る。




_209/212
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