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その執事、妥協





【カンパニア号・一等旅客用通路】



両腕にシエルとダリアを抱え廊下を駆けていたセバスチャンは、前方に現れた人物を見て足を止めた。



「お前は!!」



振り向いた男にはイヤと言うほど見覚えが。



『ドルイット子爵…!?』



セバスチャンにおろしてもらいながらも、その視線はドルイットから外さない。思いもしなかった人物に三人は戸惑う。



「ん?何者だい。何故私の名を?」



ギクッ、と三人はひきつった笑顔で固まる。



「まあ、社交界で美の化身と名高い私を知らずにいる方が難しいか」



サラッ、と無駄にカッコつけて髪をかきあげたドルイットに二人は呆れる。



「恐れながら、何故貴方様がこの様な場所に?船内は動く死体もウロついております」



セバスチャンが言えば、ドルイットはふっと笑い背後の運ばれている機械を示す。



「身を危険に晒してでも、沈みゆく船に残していくわけにはいかないモノがあってね」



三人はその機械を見て視線を交わらせる。



「そもそもあの死体は私にとっては木偶人形も同然ーーーーおっと、おしゃべりが過ぎたね…では失礼」



と、去ろうとしたドルイットにすぐさまセバスチャンは言った。



「完全なる胸の炎は!」



はっとなるドルイット。



「何者にも消せやしない。我ら…」



不死鳥(フェニックス)!!

で、4人揃って(ドルイットだけ独自アレンジ)あのポーズ。



「なんだ、同志だったのか。そういえば見た顔のような「その装置!もしやあの死体の動きを止めるものでは?」

「!!」



慌ててドルイットの言葉を遮ってシエルが言えば、ドルイットは反応を示し目を細める。



「その情報、どこで手に入れた?」



変わった空気とその言葉は肯定。



「やはり…ではお前が!?」



ドルイットは答えず靴音を鳴らして踵を返す。



「知りたいならついてくるといい。君達にも見せてあげよう」



ドルイットは肩越しに三人を見ると、笑みを浮かべながら言った。



「医学による新しき暁の訪れを…ね」



三人は黙って後ろをついて行く。



「力尽くで奪いましょうか?」

『いや、私達では使い方がわからないわ』

「アイツに起動させてーーーー「ぐひひ」



ん?とこの笑い声はと装置を運んでいる一人を見てぎょっとする。



「って葬儀屋!?」

『貴方何してるの?!』

「やあ〜。逃げる途中でコレ運ぶの手伝えって言われちゃってさァ〜。そしたら伯爵とダリア嬢がまた不死鳥≠チて「『今すぐ忘れろ!!』」



「それより」とシエルは葬儀屋に耳打ちする。



「お前コレの使い方知らないか?」

「さあ〜?こんな物、なんの役に立つんだろうねェ?」










【カンパニア号・一等旅客用ラウンジ】



「慎重に頼むよ。君らの命より価値があるんだ」



装置を置く男達にドルイットは言う。



「起動するのか?」

「まだだ。まだ、キャストが足りない」

「『?』」

「キャスト?」

「あっ」



どういう意味かと思っている時、二階の廊下からリアンがこちらを見下ろしていた。



「貴様!!何故装置を!!」

「やあリアン、君を待っていたよ。今日は君の築いた帝国がポンペイのように一夜にして滅び、私の新たなる帝国が生まれる記念日だ!」

「えっ!?」

「私はこの装置の力によって…」



装置を示しながらドルイットは声高々に宣言した。



「新しい帝国を創造する!!」

「「『はぁ?』」」



シエル、ダリア、セバスチャンは三人揃って何言ってんの?と脱力。



「永遠を手にした者が背徳と退廃美によって支配する。その名も…暁(アウローラ)帝国!!」



不死鳥のポーズとっているが。



「なんかややこしいカンジっすね」



なんだありゃ、と見るロナルドだったが、グレルは構わないのかデスサイズを構える。



「フン。あんな奴アタシがすぐ真っ赤に「おっと!!」



グレルを見てドルイットは持っていたワイングラスを装置に傾けて見せた。



「この装置がどうなってもいいのかね?」

「!!ちょっ、先輩タンマ!!」



ドルイットのその行動に慌ててロナルドがグレルを止める。



「フフ…これが本当の力≠ニいうものだよ。ワイングラス一つで、私は君らに勝利することができる!!」



と、高笑いするドルイットを見てセバスチャンが無表情に一言。



「だんだんイライラしてきたんですが殺してもよろしいですか?」

『いや待ちなさい』

「気持ちはわかるが…」



その時だった。

ーーーーガシャンッ.



「『なっ!?』」



窓ガラス全てが割れたかと思うと、この船にいるの全員集合かと思うほど大量のアイツらが入り込んできた。



「ちょっ…この数は!!」



さすがに死神達も焦る。



『子爵、早く装置を!!』

「ノン!私はもう子爵ではない!」



はあ?と見る三人の前で、ドルイットはダリアに向かってウインク。



「『皇帝(カイザー)』…そう呼んでくれたら起動しよう。その駒鳥(ロビン)のように愛らしいお口でね」

「『やっぱり今すぐ殺そう』」

「お待ち下さい。お気持ちはわかりますが…」



さっきのセバスチャンそっくりに言った二人をセバスチャンは止める。





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